49 私のせい?
……おかしいな。
なぜか、迷ってしまった。
エルシアの言うとおりに廊下を曲がったはずなのに。
どう歩いても、元の客室にたどり着かない。
まさか、エルシアが私にうそを……?
「ちがうちがう」
私の後ろを歩くとりが言った。
「フィリマが道を間違えただけだぞ」
「ちょっと。勝手に人の心読まないで」
「最初の角を曲がったのが、そもそもおかしいんだ」
とりは、やれやれと手羽を振る。
「エルシアは二つ目の角って言ったじゃないか。それなのに、フィリマは最初の角を曲がったんだ」
「えー、そうだっけ……」
エルシア、そんなこと言ったかなあ。
「あんまり堂々と曲がるから、こっちに何かあるのかと思ってぼくらも止めそこねちゃったよねー」
とねこ。
「いや、だって間違ったと思ってないし……」
「正解は二つ目の角だったんだから、間違ってるだろ」
「そうだそうだ」
えー。
「いや、そんなことをいくら言っても水掛け論でしょ」
私ととりと、どちらが正しいのかはもう永久に分からない。
だって、エルシアが何て言ったのか再現できるわけじゃないしね。
「とにかく、大事なのはこれからどうリカバリーするかでしょ」
「フィリマにしては正しいことを言う」
とりがふこりと頷く。意外と素直だから、やっぱり本当は自分が間違ってると思ってるのかも。
「ちょうど前から誰か来るから、あの人に聞いてみようじゃないか」
とりが手羽を上げて、廊下の先を指す。
確かに、男の人がひとり、こっちに向かって歩いてくる。
助かった。
「あのー、すみません」
知らない人に声をかけるのが苦手な私だけど、今はそんなことを言ってる場合じゃない。
「ちょっとお伺いしたいんですが」
「……はい?」
その人は、暗かった。
なんというか、表情がすごく暗い。
「私たち、九号客室っていうところに行きたいんですけど、お屋敷が広いものだから迷ってしまって」
「広いせいじゃないだろ」
「ねー」
とりとねこがひそひそ言っている。あー、うるさい。
「ああ……そうですか」
男の人は暗い顔で頷いた。
「こちらです……案内しましょう」
よかった。
「ありがとうございます!」
私は、男の人について歩き出した。後ろからとりとねこもふこふことついてくる。
男の人の後ろ姿に、何となく見覚えがあって。
「……あのー、どこかでお会いしましたっけ」
「え……私とですか……?」
男の人は振り向きもしないで言う。
「さあ……どうでしょう……」
うーん。どこかで会った気もするんだけどなあ。
男の人はそれ以上何も言わずに、すたすたと歩く。
私も何となく話すこともないので、黙ってついていく。
とりとねこはその後ろから、「きーん! Bダッシュ!」「Aでジャンプ!」とか言って飛んだり跳ねたりしながらついてくる。
うるさいなあ。
そして。
「……ここです」
前を歩く男の人が、廊下の角を曲がった。
それに続いて私も曲がると……
男の人が、消えていた。




