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魔女フィリマ、新天地でスローライフを目指す(※相棒はとりとねこのぬいぐるみ)。  作者: やまだのぼる


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48 そして異変は起きた。

「いやー、まさかお客様だったとは」

 ゴファンさんは首の後ろに手を当てて、がっはっはと豪快に笑った。

「手伝ってもらって、まことに申し訳ない」

「いえいえ、いいんです」

 と私。

「こちらこそ、お忙しいところをうちのとりとねこがお邪魔してしまってすみませんでした」

「なんのなんの。手が足りずに困ってるところに急に現れたふたりは、天からの使いに見えたよ!」

 それは言い過ぎでは。

 ほら、とりとねこが厳かに両手を広げてる。あれはきっと天の使いのポーズだ。

 すぐ調子に乗るんだから。

「でもまあ、ふたりが見つかってよかったですね」

 とエルシア。

「まさかこんなところにいるとは思いませんでしたけど」

「迷惑かけちゃってごめんなさい」

「いえいえ、いいんですよ。それよりも食事なんですけど……」

 あ、そういえばお客さんの食事が終わってないとかって言ってたよね。あれって完全に私のことだよね。とっくに冷めちゃっただろうけど、仕方ない。

「部屋に戻って急いで食べるよ」

「いやいや、何をおっしゃる」

 ゴファンさんが私の言葉を遮った。

「ちょうど今、まかないができたところだよ。お礼にぜひ食べていってくれないか」

「いいんですか?」

「もちろん。余った食事は夜食にでもしてもらえれば」

「いいの? エルシア」

 一応、エルシアにも確認。

「フィリマさんがよろしければ」

 と頷いてくれたので、私はお言葉に甘えてまかないをいただくことにした。

 すっかり厨房が楽しくなったらしいとりとねこは、コック帽をかぶったまま向こうで夕食の仕込みをしている。

「これも切るー」

「こっちも切るー」

 うーん。家でもこれくらい働いてくれたらいいのに。

 ゴファンさんが出してくれたまかないの熱々のパスタは、ものすごくおいしかった。

「お、おいしいー!」

「ははは。そうだろう、そうだろう」

 ゴファンさんは満足そう。

 これ、すごくおいしい。よく、実はまかないが一番おいしいなんて噂があるけど、あれって本当だったんだ。

 たちまち平らげてしまった。

「……あれ?」

 食べ終えたお皿を洗い場に持っていったら、そこにきれいなボウルが積んである。

 さっきねこがしまってたやつの気がする。

「ねこくん、ここにボウルが出てるよ」

「ふにゃ?」

 とりと一緒に野菜をふここんこんと切っていたねこがこっちを振り向く。

「えー。ぼく、ちゃんとしまったよー」

「そうだよねえ。誰かがまた出したのかな」

「せっかくしまったのにねえ」

「そうだねえ」

「そ、それです!」

「わあ」

 エルシアが急に大きな声を出したので、私もびっくりして大きな声を出してしまった。

「どうしたの、エルシア」

「それです。そのボウルみたいな。そういうことが起きるんです」

「ええ?」

「しまったと思ったら、また出ていたみたいな。そういうことが」

「ああ、そうか。最近よくこういうことが起きるんだよなあ」

 ゴファンさんも難しい顔で頷く。

「皿の位置がちょっと変わってたり、鍋の向きが逆になってたり。別に大した実害はないんだが、気味は悪いよなあ」

「はい」

 とエルシア。ちょっと顔が青い。

 そういえば、そうか。私の呼ばれた理由ってそれでした。

「ねこくん、何かおかしなことなかった?」

「なーい」

 うん。聞くだけ無駄だよね。

 とりとねこはまだ楽しそうに野菜を切っている。

 私はボウルに手を近づけた。

 魔力感知。

 ……このボウルからは、何の魔力も感じない。何の変哲もないボウルだ。

 ボウルの置かれた台や、皿をしまう棚の魔力も感知しようとしたけれど、やっぱり何も感じなかった。

「うーん……」

 このボウルがここに出されるときに何か悪意ある魔法が使われていたら、気づいたと思う。皿洗いの一番ハードだった時間帯はちょっと自信ないけど。

 まあ、そのときはこのボウル、出てなかったし。

「ごめんなさい、エルシア。とりあえずこれだけだとまだ分からないわ」

「そうですか……」

 エルシアはやっぱり少し不安そう。

「また何かおかしなことがあったら教えてね」

「はい」

 私も、本来の仕事を思い出した。ここで油を売ってる場合じゃない。

「それじゃあ、いったん部屋に戻ろうかな。とりさーん、ねこくーん、帰るよー」

「えー」

「もうー?」

 ふたりは不満そう。

「夕食の準備にまた来ていいー?」

「来たい来たーい」

「それはちょっと……厨房のお手伝いに来たわけじゃないから」

「ちぇー」

 ぶうぶう言うとりとねこを摘まみ上げて、ゴファンさんにごちそうさまでしたと言って私たちは厨房の外に出た。

「またこいよー」

 とゴファンさんは見送ってくれた。

「じゃあ私も、これで」

 とエルシア。

「仕事が途中のままで来てしまったので」

「あ、そうだよね。ごめんね」

「いえ。フィリマさんのお部屋は、この廊下をまっすぐ行って二つ目の角を右に曲がって次の角を左に曲がった三つ目の扉ですから」

「はーい」

 私はエルシアと別れて歩き出した。

 えーと、最初の角を左に……


「……あれ?」




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