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魔女フィリマ、新天地でスローライフを目指す(※相棒はとりとねこのぬいぐるみ)。  作者: やまだのぼる


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23/68

23 街に歴史あり。

 長い坂道を登り切って丘の上に出ると、それまで視界を遮っていた丈の高い草から解放されて、一気に展望が広がった。

「わあ」

 思わず歓声を上げる。すぐそこに、スレンダーポットの街がある。

 丘の上からは、街が一望できた。

「ここ、すごくいいところですね」

「そうだろう」

 アランさんは笑顔で頷く。

「この丘に登れば街が全部見える。すごくいいところではあるんだけど」

 アランさんが含みのある言い方をする。彼の言わんとすることは私にも分かった。

「はい。街にとっての弱点にもなり得る場所ということですね」

「うん。そういうこと」

「どういうこと」

 アランさんの肩の上でねこが首をひねる。

「いい眺めだと、弱点になるの?」

「いい質問だね、ねこくん」

 アランさんはねこの頭をふこふこと撫でる。ねこは嬉しそう。

「じゃあ、ねこくんがゴブリンになったとして。ゴブリンの気持ちを考えてみようか」

「ぼくがゴブリン」

 ねこはちょっと考えて、それからアランさんの肩からぴこりと飛び降りた。

 前傾姿勢でよたよたと地面を歩き始める。

「うぼー」

 うーん、それはゾンビじゃないかな。

「じゃあ、ねこくんは森から現れたゴブリンだ」

 アランさんはねこゾンビについては特に指摘せず、説明を追加する。

「これからスレンダーポットに侵入して、略奪をしようとしている」

「いっぱい略奪するごぶー」

 ゴブリンなので語尾にごぶをつけることにしたらしい。動きはねこゾンビのままだけど。

「スレンダーポットに行くごぶー」

「ねこゴブリンには仲間がたくさんいるよ」

 とアランさん。

「たくさんのゴブリンで、数に任せて街を襲うんだ」

「みんなー。スレンダーポットに行きたいかー」

 ねこが腕を突き上げると、向こうでとりとドスンさんが「ごぶー」と同調してくれる。パッスンさんも無言ながら、小さく腕を上げてくれた。付き合いのいい人たちだ。

「でも、スレンダーポットの街には、それなりの高さの防壁がある」

 とアランさん。

「そのせいで街の中に人間の軍隊がいるかどうか分からない。略奪はしたいけど、軍隊と戦うのは嫌だ。それくらいのことは、ゴブリンでも考えるのさ」

「略奪したいけど、壁がじゃまで中が見えないごぶー」

「街の中が覗きたいとしたら、ゴブリンはどうする?」

「高いところから覗いてみるごぶー」

 ねこはよたよたと丘の一番高いところまで歩いていく。

「あっ!」

 そこで、ねこはぴこりと腕を上げた。

「ここからなら街に軍隊がいるのかどうか見えちゃうよ! そうか、それでこの丘に登るのか!」

「そういうこと」

 アランさんが手を差し出すと、ねこゾンビ(ねこゴブリン)をやめて駆け寄ってきたねこはその上をちんちろりんと駆け上がる。

「じゃあ、この丘を魔物の自由にさせるっていうのは、街にとっては危険なことなんだね」

「そのとおり。ねこくんは賢いね」

 アランさんに褒められてねこは嬉しそう。

「この丘は街の守備にとって重要な場所なんだ。それで、以前はここに警備兵の詰め所を作っていたらしいんだけどね」

 そんな建物は見当たらない。

「なくなっちゃったの?」

 とねこ。

「……これですか?」

 私は自分の足元の、草に覆われた地面から覗く大きな石を指差した。

 こんなところにあるには不自然な、明らかに人の手で運ばれたと思しき石だった。

「うん、それが詰所の礎石の一つだろうね」

 アランさんは頷く。

「昔、この街が魔物の群れに襲われた時に、詰め所は破壊されてしまったそうなんだ」

「魔物に襲われたんですか」

「もうずっと昔の話だよ」

 アランさんは、自分の背中にすばやく隠れたねこを安心させるように言った。

「それから、再建はされてないらしいんだ。小さな街で、毎日詰められる兵隊がそんなにいるわけでもないしね。無人の詰め所なんて、占領されたら逆に危険だから」

「なるほど……」

 街に歴史あり。

 のどかに見えるスレンダーポットの街にだって、かつては血なまぐさい歴史もあったんだ。

「それで僕たち冒険者が、こうしてこまめに巡回しているってわけさ」

「それじゃあ、ぼくたちは今、大事な仕事をしてるんだね!」

 俄然張り切るねこ。

「そういうこと」

 アランさんが言ったとき。

「おーい、アラン」

 のんびりとした声でアランさんを呼んだのはとりだ。

 とりはちょっと離れたところで、ドスンさんの肩に乗って辺りを見回していた。

「なんだい、とりさん」

「今日、ぼくらはゴブリン対策に来てるんだよな」

「そうだよ?」

「そうか……」

 とりはドスンさんの肩でふこりと身体を揺らす。

「そうかそうか。それなら仕方ないか」

「どうしたんだい、とりさん。何か言いたいことがあるのなら、言ってくれ」

「そうだよ、途中で変な風にやめないで」

 私も言ったけど、とりは気乗りしなそうに首をかしげた。

「いや、でもぼくらはゴブリン対策に来ているからなあ」

「何か面白いものでも見つけたの?」

 またとり帝国でも作ろうとしているのだろうか。

「いや、そうじゃなくてだな」

 とりはまだちょっとためらっている。

「うーん。ぼくらはゴブリン対策中だしなあ」

「なによぅ。とりさんらしくない。言いなさいよ」

「なら言うが」

 とりは手羽を上げて、私たちの背後を指した。

「向こうから、ガイコツみたいな魔物が来るぞ」

「えっ!?」

 私たちはいっせいに振り返った。




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パッスンさん、斥候じゃなかったの???
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