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魔女フィリマ、新天地でスローライフを目指す(※相棒はとりとねこのぬいぐるみ)。  作者: やまだのぼる@アルマーク4巻9/25発売!


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22 すっかり馴染みました(私以外)。

 

 突然、がさりと脇の茂みが動いた。

「はっ! ゴブリン!」

 私の肩に乗っていたとりが、みょいんと身体を伸ばして叫ぶ。

「いや。あれはウサギだ」

 アランさんが、走り去っていく茶色いもふもふを指差して言った。

「ぼくらに驚いたんだろう」

「なんだ、ウサギか」

 ほっとしたらしく、楕円形になっていたとりの身体がしゅるしゅると元に戻る。都合のいい身体だなあ。

「びっくりしたねえ」

 音がした瞬間にいち早く私のローブの袖の中に隠れていたねこが顔を出した。

「ぼく、絶対ゴブリンだと思ったー」

「ははは」

 アランさんは快活に笑う。

「ゴブリンは不潔でとにかく臭いからね。近くにいれば臭いで分かるから大丈夫」

「そっかー、においかー」

 ねこはくんくんと鼻を動かす。

「しないねー。森のにおいだけ」

 最後尾のパッスンさんがそれに頷く。

「ああ。ここにはいない」

 さすが狩人だけあって、森のことには詳しそう。油断なく弓を構えてるし。

「そうだ、においといえば」

 とりがふこりと手羽を上げる。

「ドスン、ぼくの匂いを嗅いでくれ」

「は? ちょっと、何言ってるのよ」

 私の言葉に構わず、とりは重戦士のドスンさんにふここここ、と駆け寄っていく。

 ドスンさんは無言でとりを摘まみあげると、言われるままにくんくんと匂いを嗅いだ。

「どう?」

「……いい匂いが、する」

 ぼそりと喋るドスンさん。声、初めて聞いた。

「うむうむ、そうだろうとも」

 自分の匂いをかがせて、えらそうなとり。摘ままれた間抜けな体勢のままでふこりと胸を張る。

「なにせ魔女フィリマ特製の洗濯石で洗ってもらっているからな。ほのかに香るブラッディオレンジが爽やかだろう」

 ドスンさんは「う」と「お」の中間くらいの声で頷いた。

「この仕事が終わったら、ドスンもフィリマから売ってもらうといい。ぼくと同じ香りになるぞ」

「……ああ」

 宣伝ありがとう。でも、気まずいから今はやめてもらっていいかな。

「疲れたらぼくの匂いを嗅ぐといい。ストレス解消に持ってこいだぞ」

「……ああ」

 ドスンさんは、ああ見えて実はぬいぐるみが好きなのかもしれない。

 だって、いつの間にかとりはドスンさんの肩に乗ってるし、ドスンさん本人もそれを邪魔にするわけでもなく、まんざらでもない感じ。

「魔物が出てきて危なくなったら、にゅるんってここにもぐりこもう」

 とりはドスンさんのごっつい鎧の隙間をぺしぺしと叩く。

 やめなさいって。っていうか、そんなところに入ったらぺちゃんこになっちゃうと思うけど。

「よし、みんなストップ」

 歩きながら地図を見ていたアランさんが、周囲の地形を確認して、足を止めた。

「とりあえず、この道はここまでだ。ここで曲がって、次は向こうの丘に登る」

 そう言って、彼方に見える丘を指差す。

「あそこからなら、周りがよく見えそうだね」

 とねこ。

「よーし、ぼくが一番にゴブリン見付けるぞ!」

 すごいやる気。いないに越したことはないけど。

「ああ、頼むよ」

 アランさんはあくまで優しい。紳士的だなあ。

「ぼく、アランさんの肩から見よっと」

 ねこも私の袖を飛び出して、ちんちろりんとアランさんの肩に登る。

 私たちはぞろぞろと丘に向かって歩いていく。

 私は今のところ全然馴染んでないけど、とりとねこはすっかり馴染んでしまった。




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― 新着の感想 ―
ドスンさん、唖かと思っててゴメン! きっと洗濯石の常連さんになってくれるに違いない。
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