No.2水の違いが分かる男
こんにちは。タルトです。
この作品に出合っていただいて、そして読もうと考えてくださってありがとうございます。
いい作品に出合えたと思ってもらえるよう頑張って書いたつもりです。楽しんでいってください。
「記憶スキルを習得しました。」
そんな無機質な音声は僕の読書はさえぎった。
「なんか今の感情殺したメーティスの声っぽいけどなぁ。さすがに違うのかなぁ。」
そんな独り言は夕日が差し込む部屋の壁に消えていく。
そして同時に冒険者カードなるものを取り出す。しっかりとスキルのところに記憶スキル(C)と書いてある。どうやら習得は滞りなくできたらしい。初めての習得スキルが記憶とは、なんとも地味だが、これからもっと派手でかっこいいものを習得すればいいだけなのだ。
ちなみにスキルを習得してからも熟練度上げのために辞書を覚えていたが、スキルがない時に比べてスキルを習得してからは格段に物覚えがいい。こんなスキルが受験期に欲しかったなあ。
「さてと。お腹すいたな。」
誰も聞いてなんかいないがついつい口に出してしまう。
さて、下の屋台まで下りてこの銀貨一枚で何か見繕ってこよう。
「果物に野菜にどれもパッとしないなぁ…。」
そうぼやきながら物色を続けていると、なぜかマク〇ナルドのようなセットが売ってある。ポテトにハンバーガーにしかも水までついている。
「一セット銀貨一枚かぁ高いなぁ。でも明日への活力だ!奮発して買っちゃおう!おっちゃん!一つくれ!」
「まいど!あんがとな!兄ちゃん!」
ほくほくである。まさか異世界でマ〇クが食べれるとは。自室に戻ってかぶりつく。
ふむふむ…。味はまあ悪くはない。ほんの少しパンがパサパサするが許せる。その分ラージサイズほどの水があるのだ、丁度いい塩梅というものであろう。
「…まっずぅうううううう!!!!!!」
これはダメだ。この水は。クッソまずい。
田舎出身の僕は水道水が湧水であり、浄水器なんてつけなくてもいつでもおいしいお水が飲めていた。福〇の水はほんの少し不味かったが浄水器をつければ全然おいしく飲めた。あの味を知っていると飲めたものではない。まあ、噂では水の硬度、例えば軟水や硬水の違いが分かるのは日本人だけらしいので、水の美味しさなんてものもあまりこの世界の人は興味ないのかもしれないが。まあ、日本人は特に水にうるさいしなあ。ちなみに、僕はい〇はすやサン〇リーの天然水など同じ硬度帯の水でも違いが分かるすごい男なのだ。
ともかく、これはダメだ。不味すぎる。例えるなら海外で飲んだ…。いや、やめておこう。流石にお腹を壊すほどではないはずだ。ちょっと変な味がするだけであって。
決めた。僕今から蒸留技術でおいしい水が毎日飲めるようにする。
今日だけはマ〇クのセットと一緒だから我慢するが、これからは我慢できない。おいしい水を飲むんだ。
うーん。食べ物の美味しさに免じて…50点!!!!!才能ナシ!!!初めての異世界飯は残念であったが、いつかこれを才能アリに…ひいては特待生に…!!!
***
「うぅううううん…!」
伸びをたっぷり5秒以上してからベットからおりる。
いい朝である。今日することはもう決めてある。冒険に出て、魔法スキルを磨きつつ、浄水器を作る第一歩を踏み出す。
そして、はたと気付く。頭がクリアすぎるのである。昨日の夜にしたことをそのまま全部覚えている。暗記したページも全部言える。
「そうか、僕今異世界にいるんだ。」
再認識である。
よほど驚くことが起こったとき人間は夢だと思うらしい。自分も例にもれず心のどこかで夢と思っていたのだろう。まあ、いくら寝て起きても元の世界には戻れないわけだが。
「そうするとむかつくなぁあのひったくり。ふざけんじゃねえよ。俺のウハウハ大学生活壊しやがって。しかも異世界転移するきっかけまで与えやがって。」
実をいうとイヤフォンのノイズキャンセリング機能をつけていて、しかも暗い夜道を警戒せず歩いていた自分にも大きく過失はあるが、そんなものはあいつを許すきっかけにはならない。
「正義の心を習得しました。」
またそんな無機質な音が僕の思考を遮る。
ん…?正義の心?なんじゃそりゃ。そう思い冒険者カードを見るとスキル欄に
記憶スキル(C)+1
正義の心(R)
と書いてある。
「え、R?レアスキルじゃんか。ラッキー。」
ちなみに記憶スキルの熟練度がほんの少し上がっているのは、覚えた後もずっと辞書とにらめっこしていたからである。
それより僕のひったくり犯許すまじという怒りが正義の心として発現したらしい。この大誤算はうれしいものだ。また、冒険者カードのスキルは、鑑定スキルでみれは詳細がわかるらしいが、残念ながら僕はまだ持っていないので、どんなスキルかはもう少しお預けらしい。
あ、ちなみに、お腹壊しました♪♪
「いらっしゃいませー。お食事ならテーブルに、各種手続きなら奥におすすみくださーい!」
そう、また俺はお食事処つき市役所へと舞い戻ってきたのだ。
っていうか、ここ、”冒険者„ギルドだろ?今のとこ市役所とレストランだ。冒険者っぽいクエストとか、仲間募集中の張り紙とか、そんなものがない。
しばらく店内を見回すと、はずれにあった。俗にいうギルドっぽい場所が。
というかはずれすぎ。名称と実態のギャップに驚いた。まあ、ギルドっぽい場所には数人しかいないし、元々の冒険者ギルド的役割からレストランと市役所という役割が肥大化したのだろうか。
ありがたいことに張り紙の隣にはしっかりクエストの受け方が載っている。どうやらその張り紙を外して市役所の受付とは別の冒険者用受付に行って受けたい旨を話せばいいらしい。
では、物色タイムだ。今手元には武器はおろか防具も戦闘用スキルもない。つまり、戦闘系はなし。ただ、一銭も持ってないからできるだけ割高のクエストを受けたいところだ。
バイト探しのタウンワ〇クを見るように、条件と待遇を見ながら初クエストに選ばれたのは…。
「すみません。このクエスト受けたいんですけど。」
「はい。えぇっと。薬草捜しのクエストですね。わかりました。では、まずは冒険者カードをお願いします。」
「はい。ありがとうございます。では、初めてということで、ここ、ビギナの町周辺の地図を渡しますね。鑑定スキルがあれば薬草捜しの効率が上がりますが…、もっていないようですので、コツを。薬草は木の根元に生えていることが多いですよ。また薬草は採る冒険者が多いので道から少し離れて探すのもコツですよ。離れすぎると危ないので気を付けてくださいね。」
「では、薬草取りのクエストを受理しました。採った薬草等はここに持ってきてくださいね。」
「はい。ありがとうございます。行ってきますね。」
僕は初の冒険者クエストということでテンションが上がり、そそくさとその場を後にした。と、その前にどうしてもツッコミを入れたいので、少し失礼して。
…市役所じゃなくて町役場なんかーい!!!!
さて、ここがどうやら薬草が生えていると噂の場所らしい。初心者には町の地図とコツをくれるなんて心優しい町じゃねえか。
っと、これか?草が生い茂る中から目当ての草だけを見つけるのはとても骨が折れるが、クエストボードに乗ってた薬草を僕は記憶スキルのおかげでその形、色にいたるまですべて記憶している。なので、割とそれが薬草かどうかを見定めるのは苦労しないのだ。
どうやら目当ての薬草っぽい。まずは一つ目。このときに鑑定スキルを欲しいため頭の中にある薬草の写真と細部までしっかり鑑定するように、見比べる。見比べる。見比べる。
「鑑定スキルを習得しました。」
無機質な音声が頭に響く。
…薬草をにらめっこした甲斐があった。ともかくこれで三つ目のスキルゲットだぜ!!
まだ時間はあるし、熟練度上げもかねていろいろな草を鑑定しながらもう少し集めるとしよう。
ちなみに今とった薬草を鑑定してみると。
《薬草》
品質:並
だけだ。結構しょっぱいな。今はたぶん品名、品質のみがわかるような熟練度なのだろう。しかし、いろいろな草が生えてる中、主観ではなく客観的な判断ができるツールというのは思った以上に便利なものなのである。
薬草・雑草・枯れ葉・リフの実・リフの木。などなど、様々なものを鑑定しながら歩き回った。
「さて、そろそろ帰ろうか。」
そう言って今摘んだばかりの薬草を袋に入れる。大体薬草は15個ぐらいの収穫である。しかも他の物を含めて鑑定しまくっていたおかげでついに鑑定スキル(C)+1になってくれた。ちなみにだが、熟練度上昇による違いは、鑑定したときに
《薬草》
品質:並
詳細:低級ポーションを作るのに必要な材料。山の麓に生えていることが多い。
という新しく詳細という項目が増えたことだ。単純に努力がこうやって目に見えるので、うれしい。頑張った甲斐があったというものだ。
「クエストの成果報告に来ました。」
「はい。薬草のクエストですね。とってきたものを見せていただいてもよろしいでしょうか。」
「どうぞ。お願いしますね。」
そういって薬草を出す。全部鑑定済みで品質は全部並。それが15個である。
「はい。ありがとうございます。あ、全部間違いなく薬草ですね。鑑定スキル持ちじゃないとなかなか難しいんですよ?いい目をお持ちですね!」
「あ、いやいや。確かに持っていなかったんですけど、もう習得しましたし、何なら熟練度も上がりましたし。」
「…え?習得なされたんですか?」
「はい。ほら、ここに。」
そういってスキル欄を指さす。
「ほんとですね。いや、スキルなんてものはなかなか習得するのに苦労するんですよ。というか数々の冒険者を見てきましたが、半日足らずで習得するなんて見たことも聞いたこともありませんよ。才能がおありなんじゃないですか?」
「では、15個の薬草買取とクエスト達成で少しだけ色を付けて…、銀貨20枚です。お疲れさまでした。」
「ありがとうございました。」
そういって今日は立ち去らずにそのまま隣のレストランへと足を向ける。
「すみませーん。この野菜とお肉セット一つお願いします。」
「承りましたー。しばしお待ちくださーい。」
「どうぞごゆっくりー。」
料理が来たようだ。今回は、厚めのお肉と野菜、そしてパンのようなものがついて銀貨一枚らしい。もちろん飲料は不味い水だぞ♪
料理を食べながら今日の振り返りをする。
鑑定スキルを習得することを言ったらえらい驚いていたな。才能有りなのかな、僕。実際はどれぐらいかかるのだろうか。僕は鑑定も記憶も正義の心とやらも結構サクサク習得できてしまったからな。
うーん。サンプル数が足りない。いやあ、同じ年齢層を集めて同じ手法でスキルを覚えようと努力してもらって覚えられた時間を測りたいなあ。関連因子は年齢?性別?ステータス?それとも別の何かなのか?うーむ。ぜひ調べたいものだ。まあ、知り合いも友達もいない僕はそんなことできないのだが。
そういえば、今ステータスの単語が出たが、他にカードには職業とレベル、スキル、ステータスが載っている。
僕の職業は冒険者。
レベルは1。
スキルは鑑定、記憶、正義の心。
ステータスは筋力、魔力、防御力、素早さ、器用さ、幸運の項目があり、僕は大体5~8だな。
…?わからない。ステータスが高いのか低いのかも分からないし、スキルが強いのかも分からない。
あ、正義の心。そんな正体不明のスキルも今なら鑑定できるのではないだろうか。
《正義の心》
品質:レア(R)
詳細:悪を許さない正義の心がスキルとして具現化したもの
効果:悪に対するダメージ微増、神聖魔法への適正微増
そういうことらしい。まあ、正義に燃える僕にふさわしいな。そう思うだろ?
まあ、よくわからないが、少なくとも悪いものではないらしい。悪というのが抽象的でわかりにくいが、神聖魔法への適正微増は使えるはず。次は神聖魔法とやらにチャレンジしてみよう。魔法剣士になってウハウハされたい。なんなら回復魔法を使ってかわいい女の子を癒したい。
明日への期待を胸にご飯を食べる。なかなかいい味である。
…いや、やっぱり水マズッ!!!!
皆様が読んだ感想を教えてくださると嬉しいです。
ダメだしや、誤字脱字などでも、教えてくださいね。
皆様の感想は全て読ませて頂き、今後に活かしたいと思います。
ここまで読んでくださった皆さん本当にありがとうございました。




