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第82話 まちカドで見つけた 大事な宝物④

 

「こ、ことわるんかーい!」


 即断即決。

 羊谷(ひつじたに)梅雨空(つゆぞら)の条件提示から未明子の返事まで1秒もかからなかった。


「どうして!? 私を仲間に引き入れたいんじゃないの!?」

「それはそうです。でも私がアイドルをやるのは無いかな」

「あんなに歌が上手いのにもったいないじゃない!」


 アイドルに関しては何とも言えないけど、歌が上手いという点だけは私も賛成したい。

 ステラ・アルマを眠らせてしまうほどの歌声を埋もれさせておくのはもったいない。


「まず、私の歌はあくまで女の子にモテたいと思って磨いた歌なので、良いと思ってくれる人と逆に不快感を覚える人との差が激しいんです」

「あの歌に不快感を感じる人なんていないでしょ?」

「そうでもないですよ。男性とか、そもそも私を苦手な人が聞くと気持ち悪いみたいです。中学の音楽の授業とか評価真っ二つでしたからね」


 それは驚きだった。

 どうして人によって差が出てしまうんだろう。

 嫌いな人にとっては ”女の子にモテたい”という意識が透けて聞こえてくるんだろうか? 

 未明子が大好きな私には全然分からない。


「次に、私には華が無い。ステージに立っても見てる人を楽しませるような魅力が無いんです。かわいい、美しい、もしくは面白い、そんな風に感じさせる要素が無いんです。だからお二人と一緒に並ぶと悪い目立ち方をしちゃうと思うんですよね」


 あくまで客観的な視点による分析を述べているだけで、自虐で言っているわけではなさそうだ。


 私はそんな事は無いと思うんだけどな。

 未明子は自己評価がどん底だから自分の魅力を理解できていないだけだと思う。


「だから私が入るとバランスが悪くなってしまうんです。せっかく ”露をふらせ” の良い色があるのに、私が入る事で濁った色になってしまう可能性が高いんですよ」

「思ったよりしっかり考えてくれてる……」

「なので私がやりたいとかやりたくないとかでは無くて、お二人のプラスにならないと考えてお断りさせてもらいました」

「あ、はい」


 スカウトした相手に論理的に説得されると思っていなかった羊谷梅雨空は、まさに言葉通りに振り上げた拳のやりどころに困っていた。

 

 少し未明子のステージも見てみたかった私としては残念だけど、でもそうしたらこの二人をどうやって仲間に引き込んだらいいんだろう。


「そこで提案なんですが、私の代わりに鷲羽さんに入ってもらうというのはどうでしょう?」


 なるほど。

 自分が駄目なら別の人を都合してあげればいいのね。

 確かにそれなら彼女的にも満足がいくし、こちら的にも彼女を仲間にいやいやいやいやちょっと待って!


「待って未明子!」

「え? 鷲羽って誰よ?」

「この小刻みに往復ビンタみたいなのしてる女の子ですよ」

「往復ビンタじゃないわよ! ちょっと待ってって言ってるの! 何で私がやる話になってるの!?」


 必死の抗議の言葉は全く未明子には届かなかったようで「はて?」と首をかしげられてしまった。

 どうしていきなり察しが悪くなるの?


「だってソラさんに仲間になってもらうには私じゃ駄目だし」

「未明子が駄目なのは分かったけど、それで何で私に白羽の矢が立つの!?」

「二人とのバランスを考えると一番いいかなって」

「説明を。未明子説明をしてちょうだい。私いまとてもパニックだわ」

「鷲羽さんならさっきあげた私の足りないところを全部持ってるからね」


 未明子はニコリと笑顔を浮かべる。

 ああ可愛い……って、そんな笑顔にごまかされないわよ!

 

「まず鷲羽さんには華がある。誰がどう見たって美人さんだし、黙って立ってるだけでも絵になる。動けばチョコチョコして可愛いし、普段クールにしてるかと思えば今みたいにコロコロ表情が変わって面白い」

「あ、うう……」


 いきなり大量の褒め言葉を浴びせられてしまった。

 こんなに褒められたら抗議の勢いを潰されてしまう。


「次に声がいい。喋ってる時は極力低めで大人しい声を出してるけど、歌う時は高くて女の子らしい声になるのはギャップがあって良いと思う。声に伸びもあるし、色もあって素敵だと思うよ」

「待って。私、未明子の前で歌声なんて出したことないわよ?」

「え? いつもえっちする時にたくさん出してるじゃん」

「はぁ!?」

「歌声とえっちする時に出る声はほとんど同じだよ」


 な……何を……何を突然……こんな人前で……。


 しかも……初対面の人もいるのに……。


 ああ……羊谷梅雨空とムリファインがドン引きしてる。


 稲見も顔を真っ赤にして目を反らしてる。


 すばるは……何でうんうん頷いているのかしら?


「だから鷲羽さんは二人と一緒にステージに立ってもうまく混ざれるんだよ。ううん、何ならこの二人の世界に新しい色を足してより素敵な世界が生まれるかもしれない!」


 熱弁してくれるのはとても有難いんだけど、いま私も他の人もそこを気にする余裕はないのよ未明子。


 あなたの爆弾発言でこの場はとても気まずい空気になっているの。

 どうしていきなり察しが悪くなるの?


「ソラさん。鷲羽さんの歌も聞いてあげてください。きっと納得できると思いますよ!」

「え!? あ、ああ……うん。そうね……。うん」


 更に歌えと?

 こんな空気の中で私に歌えと言うの?

 いじめ? 

 いじめかしら?

 それともそういうプレイなのかしら?

 

 何とも言えない空気が流れ、みんなが私をじっと見る。

 この耐え難い注目!


 もう私にはどうやってこの場を切り抜けたらいいか分からなかった。

 誰か、誰でもいいから助けて……。


 藁にもすがる気持ちで願いを乞うた時


「ドリンクお待たせしましたー!!」

「ひぃっ!」


 私の願いを聞き入れてやって来たのは

 7人分のドリンクをトレイに乗せた店員さんだった。






 謎の気まずい空気の中、気を使ってくれた店員さんがささっとドリンクをテーブルに並べて部屋を出て行った。


 曲もかかってないし何か大切な話でもしていると思ったのだろう。

 ごめんなさい。全然気を使ってもらうような話はしていないのです。


 うなだれている私を尻目に未明子が全員にドリンクを配っている。

 元々鋼鉄の精神の持ち主なのか、心が壊れた時にこういう観念も壊れてしまったのか。

 もしそうなら殺してやるぞフォーマルハウト。


「で、どうする? アルタイル……えーと……鷲羽さん? 歌う?」

「歌わなきゃ駄目?」

「せっかくだからあなたの歌も聞いておきたいわ」


 そりゃあ羊谷梅雨空としてはメンバー候補の実力は知っておきたいわよね。


 おかしいな。ステラ・カントル候補を探しに来ていたはずなのに、いつの間にかアイドル候補を探す話にすり変わっている気がする。

 全くもって歌う気分じゃないけど、未明子が私に期待のまなざしを向けているから逃げ場がない。


 ……いいわ。


 私も伊達に1等星のステラ・アルマを名乗っていない。

 どんな状況だろうと求められたら応えてやろうじゃない。


 歌? 戦いよりも全然得意よ。

 せっかく未明子が聞いてくれるんだもの、思いを込めて歌わせてもらうわ。

 

 手元のタブレットを素早く操作して、未明子の前に置いてあったマイクを掴み取った。


「あ、なんか聞き覚えのあるイントロ。これ何だっけ?」

「コンプリケイテッド」

「アヴリル・ラヴィーン!?」


 アイドル候補だって言ってるのに空気を読まない選曲だと思われるかもしれない。

 でももう深いことは考えずにとにかく歌った。

 私の気持ちを言葉で伝えても分かってもらえないから歌に込めて。 


 本当、何であなたはそんなに物事をややこしくしてしまうのかしら。



「……no,no,no……」


 最後のフレーズを歌い切るまで一切未明子の方は見なかった。

 どうせ洋楽なんて知らないだろうし、私が何を思ってるかなんて伝わらなくてもいい。


「……以上。ご清聴ありがとうございました」

「凄い! やっぱり鷲羽さんうまいよ! ソラさん、どうですか?」

「凄く良かった。ステラ・アルマはみんな歌うの上手ね」

「お眼鏡にかなったようで何よりだわ。私がステージに立つかは少し考えさせて欲しいけど、あなたも私達と一緒に戦ってくれるか考えて欲しいわ」

「……まあ、そういう話だったし。考えるくらいはするわよ」


 とりあえず初対面でここまで取り付けられれば上出来だ。

 それなりに犠牲にしたものはあったけど。

 主に私の恥ずかしい話とか。


「あの、すばるさん。あれも話してしまっていいですか?」

「そうですね。彼女達のメリットになる事は全て伝えましょう」

「私達のメリット?」

「はい。実は私とフェルカドはすばるさんが所有しているマンションに住ませてもらっているんです。もし仲間になってくれるならお二人もそこに住んでもらおうと思っています。東京で活動する際の拠点に便利だと思いますし」

「あなた、お(うち)がマンション持ってるの!? お金持ち!?」

「別にお金持ちではないですよ。成り行きで所有している物件ですし」


 すばるは何を笑顔で嘘ついてるのよ。

 あんな大きな家に住んでいてお金持ちじゃないとは言わせないわよ。

 それにあのマンション、家の持ち物じゃなくてあなたの持ち物じゃない。

 

「家賃も特に頂いておりませんし、お二人の助けになるなら是非活用してください」

「本当に!? それメチャクチャ助かるんだけど! それならいっそこっちに引っ越してきちゃおうかしら?」

「わぁ! それはいいですね。私も出身は長野ですし、一緒に住めるなら楽しくなりそうです」


 羊谷梅雨空にとっては願ってもない援助だろう。

 長野と東京の往復なんて移動費も馬鹿にならない。

 アイドル活動するのなら何にせよこちらに居た方が有利になる事も多い。


 嬉しそうにムリファインと引っ越しの話を始めた彼女の背後で、すばると稲見がわるーい笑顔を浮かべていた。


(よくやりました。稲見)

(いえいえ。これもすばるさんのご指導のおかげです)


 なんて会話をしているようにしか思えない邪悪な顔をした二人を見て、稲見の膝でスヤスヤと眠るフェルカドが気の毒になってしまった。 


 いいの?

 あなたのパートナー悪い女に毒され始めてるわよ、と。



 その後、羊谷梅雨空とムリファインはすばると稲見に連れられて若葉台のマンションに向かった。

 長野の帰りのバスまで時間があるので物件の下見に行くらしい。


 あんないいマンションにタダで住めると言われて断れる人はいるのだろうか。

 いい返答を貰える事を期待しつつ、私と未明子は桜ヶ丘に戻ってきた。


「あの二人、仲間になってくれるといいね」

「そうね。もし戦わない選択をしたとして、私達が負けた時にやっぱり自分も戦っておけば良かったなんて後悔しないといいけど」 

「まあ人生なんて転んで、這いずり回って、傷つかないと分からないもんね」


 未明子が何気なく口に出した言葉を聞いて驚いてしまった。

 それはさっき私が歌った曲中に出てくる歌詞の一文だ。


「……あの歌、知ってたの?」

「ううん。初めて聞いたよ。でもあれくらいの英文なんて和訳簡単じゃん」

「そ、そっか。未明子、頭いいもんね」


 一緒にいればいるほど未明子がそういう人物なのを忘れる。

 普段の彼女は知能も運動能力もうまく隠しているからだ。


 さっきだって簡単だったとは言え一回しか見ていないダンスをすぐにコピーしていた。

 あんなのは常人にはできない芸当だ。


「いい歌だよね。女性らしくて素敵な歌詞だった」

「うん。私も好き」


 でもそれが私の気持ちでもあった事には気づいていないみたいだった。


 言いたい事を歌で伝えようとしたなんて知られたら面倒な女だと思われてしまうかな。

 直接言って欲しいって言われるかな。

 

 流石にそれを聞く勇気は無かった。



 帰り道で飲み物を買って、二人で私の家に戻る。

 人前で歌うなんて慣れないことをしたせいで疲れてしまった。


 私が部屋の絨毯でへばっていると、未明子が隣に座って頭を撫でてくれた。

 

 気持ちいい。

   

 せっかくなので、さっきフェルカドが稲見にしてもらっていたように膝枕をしてもらった。


 未明子の歌で眠らされたのでフェルカドの意思ではないのかもしれない。

 でも傍から見ていて羨ましかったのだ。

 

「ねえ、そのまま歌って」

「へ?」

「約束したじゃない。帰ったら歌ってくれるって」

「そう言えばしたね。でもいいの? 寝ちゃわない?」

「いいの。今度は我慢せずに眠るから。未明子の歌を子守歌にして眠れるなんて最高の贅沢だわ」

「鷲羽さんがそうして欲しいならお安い御用だけど。何かリクエストある?」

「スカボロー・フェア」

「サイモン&ガーファンクル!? 子守歌にするような歌じゃなくない?」

「あのメロディーが好きなのよ。知ってるんだ?」

「知らないと思う曲をリクエストされたのか。スカボロー・フェアは中学三年の音楽の授業でやったよ」


 なかなか渋い選曲をする先生だったのね。

 そんなの知らないよというリアクションが返ってくると思ったのに。


 スカボロー・フェアが好きなのは本当だけど歌ってもらえるなら何でも良かった。

 この状態がすでに天国みたいな心地なのに、この上あの歌声を聞けるなんて天国を越えて宇宙に帰ってしまいそうだ。


 未明子は私の頭を撫でながら、すぅ、と息を吸い込んだ。

 そしてゆっくり歌い出す。



 私の好きな静かで落ち着いたメロディに、私の大好きな未明子の声が合わさって、例えようのない幸福感に包まれた。


 未明子の歌が始まって、おそらく数十秒後くらいには、

 私は深い幸せな眠りについていた。











 次に羊谷梅雨空とムリファインと会ったのは拠点の展望ホールだった。

 

 あれから一週間しかたっていないのにまた東京にやって来たらしい。

 しかも今回は長期滞在らしく例のマンションに大量の私物を持ち込んだみたいだ。

 流石ステージで活動するだけあって行動力が高い。


「はじめまして。羊谷梅雨空よ」

「はじめまして。ケンタウルス座2等星のムリファインです」


 二人が自己紹介をした相手は、五月、ツィー、アルフィルク、サダルメリク、管理人の五人。

 夜明は今日はお休みしていた。


「はじめまして! 九曜五月です!」

「五月のステラ・アルマ、カシオペヤ座2等星のツィーだ」

「ケフェウス座3等星のアルフィルクよ。それですばるの後に隠れてるのが、みずがめ座3等星のサダルメリクね」


 サダルメリクは羊谷梅雨空の出現によってまた人見知りモードに入っていた。

 彼女の容姿に何か思う事があったのか、すばるの後に隠れていつも以上に震えている。


「あの小さな子がサダルメリク? すばるから聞いてたけど本当に人見知りなのね」

「しばらくしたら慣れるので気にしないでください」


 すばるは三ヵ月前に稲見にも同じことを言っていた。

 その三ヵ月前には未明子にも同じことを言ったらしいので、すばるは三ヵ月ごとにあのセリフを言わされている。


「小さいと言えばそっちのステラ・アルマも小さいな。アルタイルも含めて幼稚園かここは?」

「ちょっとツィー。私を含めないでちょうだい」

「含めないでと言われても三人ともほぼ身長一緒だろ」

「メリクが142cm、アルタイルが143cm、ムリファインが144cmだそうです」

「仲良く階段になってるのね! しかもアルタイル負けてるじゃない!」


 アルフィルクがお腹を抱えてゲラゲラ笑いだした。

そりゃ長身でスタイルのいいアルフィルクからしたら、私はちんちくりんに見えるのかもしれない。

 でも未明子がかわいいって言ってくれるんだからそれでいいのよ。


「ムリはこの身長だからこそ良いのよ。一緒にステージに立った時に私とのギャップが可愛いでしょ?」

「そう言えばアイドルをやってるらしいな。アルタイルをスカウトしたと聞いたぞ?」

「最初は犬飼さんに入って欲しかったんだけどね。断られちゃったわ」

「絶対鷲羽さんの方がいいと思いますよ。ちょっと三人で並んで立ってみて下さい」


 未明子に言われるままに三人で並んでみた。

 羊谷梅雨空がセンターに立って、私とムリファインが左右を囲む。


「あら。いいじゃない。綺麗に山型になってるから見ててすっきりするわ」

「でしょ? しかも左右二人が歌唱力が高くて、センターのソラさんがダンスが得意だからバランスもいいんだ」

「確かに。動きに関してはセンターから全体を見るし、歌はスピーカーと一緒で左右にパワー振ってあった方が良く聞こえる気がするわね」

「犬飼さん凄いわね。そこまで考えてたの?」

「はい。ステージを見てる時にムリちゃんの逆サイドに同じくらいのポテンシャルの人が欲しいなと思ってたんです」

「未明子がまるでプロデューサーみたいな事を言い出したわ……」

「あ、プロデューサーはね、すばるがやってくれる事になったの」

「え?」

「実はわたくし以前からアイドルグループのプロデュースに興味がありまして立候補いたしました」


 ライブハウスで興味があると言っていたのはプロデュースの事だったらしい。

 あの時難しい顔をしてたのはどういう風に売り込むか考えていたのね。


 いや待って。

 何だか私の知らない間に話がえらく進んでいる。


「私まだアイドルやるって決めてないんだけど」

「そうだったの!? もう暁さんと衣装のコンセプトを決め始めてたのに」

「何で未明子まで無駄に行動力を発揮してるのよ!?」

「私は振付担当になったからね。衣装を決めてそれが映える動きを考えないと」


 いつの間にか未明子まで巻き込まれていた。

 いや自分から突っ込んで行ったわねこれ。

 たった一週間で外堀を埋められて、私の逃げ場はとっくに塞がれていた。


「鷲羽さんが可愛い衣装を着て歌ってるところ見たいなぁ」

「分かった。分かったわ。未明子がそこまで言ってくれるなら試しにやってみるのは(やぶさ)かではないけど、そもそも羊谷梅雨空が仲間にならないなら、アイドルやり損じゃない」

「アイドルやり損って何よ」

「美味しいところだけ持っていかれるのは困るわ。ちゃんとお互いの利益にならないと」


 何故かアイドルデビューの方に話が傾いているが、そもそも戦ってくれる仲間を増やすのが前提の話なのだ。

 羊谷梅雨空が仲間にならないのなら無駄な時間でしかない。


「そうは言っても私は何にも知らないから碌な戦力にならないわよ?」

「あら? 分からないわよ。そこにいる未明子だって何にも知らないのにすぐに立派に戦ってたからね」

「犬飼さんってベテランじゃないの? だってアルタイルのステラ・アルマなんでしょ?」

「私はこの中だと下から数えた方が早いですよ。まだ数回しか戦った事ないですし」

「そうだったのね。勝手にここのリーダーだと思ってたわ」

「リーダーは今日お休みの狭黒さんなんです」


 こと戦闘に関して言えば未明子はすでに一流の戦士と言っても過言ではないと思う。

 運動能力、状況判断、精神的なタフネス、どこを取っても軒並みレベルが高い。

 

 何より、悲しい事だけど敵にとどめを刺すのに躊躇がない。

 殺さなければ殺されるこの戦いで一番重要な要素を持っている。



「ちょうどいいじゃない。新人が入って来たんならいつものあれをやりましょう」


 突然アルフィルクが仕切り始めた。

 

「いつものあれって何?」

「あなたもやったじゃない。模擬戦よ。模擬戦!」  



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