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第80話 星のダイアローグ⑤


 不死身。

 言葉だけなら、どんな怪我や病気にも耐えるような体を持つと言う意味だ。

 

 でも私達ステラ・アルマは人より耐性が高いだけで怪我や病気で命を落とす。

 死の概念なら、この体でいる内は普通の人間とそれほど変わらない。


 だから夜明が言いたいのはそういう意味では無いのだろう。


「どうしてそう思ったの?」

「一番の理由は君の戦いに関する話の仕方かな。明らかに過去何度もこの戦いを経験している。少なくとも未明子くんが君の初めてのステラ・カントルではないだろう?」

「……御名答」


 別に隠しておきたい事実では無かった。

 だから言葉の使い方にも別段気を使ってはいない。

 

 私が戦いの話をする時は過去の経験から話すことが多い。

 それはつまり以前にも別の誰かと一緒に戦っていたという事だ。


 では私はそのパートナーとどうして別れてしまったのか。


「君達ステラ・アルマは、戦いに敗れて消滅してもある程度の時間で生き返れるんじゃないかい?」

「それも正解。凄いわね。人の立場から見てても分かるものなのね」

「今までもそうじゃないかと思っていたんだが、君が過去に戦った話をしてくれたのと、ステラ・アルマに記憶の操作がかかっている話を聞いて確信したよ。ステラ・アルマは消滅しても復活してまた戦い続けるんだとね」


 戦闘中に死亡した場合。

 または戦いに敗れて世界が消滅してしまった場合。

 どちらの場合であっても人の存在はそこで終わり。その先は無い。

 ただしステラ・アルマは、一定期間を経て地球に再構成される。


「私達は星の化身。この身が滅びたとしても元になる星が残っていれば何度でも蘇ることができる」

「そうだろうね。そうじゃなきゃ君は前の契約者と今も契約を続けていることになる」

「前に言わなかったかしら? 契約は解除できるのよ」

「そうだね。お互いの合意があればできると言っていたね。でも合意が必要なら、君達ステラ・アルマが首を縦に振らないだろう?」


 夜明は私の言葉を一言一句正確に覚えているのかしら。

 恐ろしく的確に言葉の裏をついてくる。


「ステラ・アルマが人間に強い執着を持っているのは君の話で理解した。そんな君達が、契約を解除しようと言われて素直に従うわけがない」

「誓って言うと私は未明子に契約を解除したいとお願いされたらすぐにそうするわよ。その後干からびるまで泣くけど」

「まあ君達が人間を愛しているのは本当だと信じているよ。それに私の勘だと、自分から契約の解除を申し出るステラ・カントルは非常に少ないんじゃないかな」


 そうなのだ。

 不思議なもので、一度契約を交わした後に人間側から離れようと言われるケースはほとんど無い。

 むしろ人間を想うがあまり、ステラ・アルマの方から契約解除を申し出たと言う話を聞くくらいだ。


 ステラ・ノヴァの契約が解除される事はステラ・ノヴァの発生以上にレアだった。


「私達が人を愛してやまないように、人も私達を愛してくれるのには感謝しかないわ」

「人間も闇が深いからね。心の底から寄り添ってくれる存在を断ち切るなんて無理なんだよ」

「そういうものなの?」

「そうさ。君達が思っている以上に私達も孤独なんだ」


 私にはそれが理解できなかった。

 人はいつだってコミュニティーを持っていて誰かと関わっている。

 生きる為に必要な物を買うのにだって誰かと関わらなければいけないのに、完全な孤独を味わう事なんてあるんだろうか。

 

「すまない。哲学的な話がしたかったわけじゃないんだ」

「別に構わないわよ」


「ステラ・アルマが消滅しても復活できるのを知っているのは1等星だけだろう? 2等星以下は復活の際に過去の戦いの記憶を消去されるんじゃないかい?」

「その通り。そうしないとステラ・アルマはどんどんこの戦いに関する知識を蓄えていく。そうなればいずれ全てのステラ・アルマが真相を知ってしまう。それはセレーネの望むところでは無いわ」

「やっぱりね。アルフィルクは自分達がいつ生まれて、いつから戦っているのか覚えていないと言っていた」


 夜明は再び窓の外を眺めた。

 ここは管理人に固定された、すでに終わってしまった世界。

 窓の外には人のいない街があるだけ。

 

 誰もいない桜ヶ丘の駅前を眺め、私の顔を見ずに夜明は話を続けた。


「記憶を弄られるなんて絶対に許せないが、戦いの記憶を引き継がないのは良かったのかもしれない。そうしないとステラ・アルマは前のパートナーをずっと想い続ける事になる」

「そうね」

「アルフィルクも以前に契約していたパートナーがいたのかもしれないね……」


 人の想いは基本的には単一だ。

 誰かを想う時、その相手にも自分だけを想って欲しいと願うのは自然な気持ちだ。


 だけど夜明は過去アルフィルクにパートナーがいたとして、その相手を妬んでいるわけでは無い。

 夜明は今のアルフィルクと一緒にいられれば過去など気にしない性格だからだ。

 

 そうではなくて、アルフィルクがその時抱いていた大切な想いが、本人の意思とは関係なく消されてしまった事に心を痛めているのだろう。


 夜明との付き合いは短いけどそれくらいは理解できる。

 

「過去の想いを探ったところで今更どうにもならない。もしアルフィルクにパートナーがいたとしても、その相手はもうどの世界にもいないのだから」

「……」

「ふふ。アルタイルくん。君は考えている事が分かりやすいって言われないかい?」

「前にあの馬鹿にも言われたわ。そんなに顔に出てるかしら?」

「まあそれなりにはね。君がいま考えている事に関しても、私はずっと疑問に思っていたんだ」

「夜明は本当に色々考えているのね」

「私だってステラ・アルマを愛しているからね。愛している相手の事はたくさん考えるよ」


 夜明は私の考えを先回りした時はいつもしたり顔を浮かべる。

 でもこの時だけは、何だか寂しそうな顔を浮かべていた。


「未明子くんは君にとって一番大切なパートナーだ。では何故この世界の犬飼未明子にこだわるんだろうね? だって未明子くんは他の世界にもいる。この世界の未明子くんがミラくんと契約を結んだなら他の世界の未明子くんの元にいけば良かったじゃないか」


 無限に増え続ける世界は全て同じ世界。

 同じ人間がいて、同じ時間が流れている。

 違うのはステラ・アルマの存在だけ。


 この世界に犬飼未明子がいれば、どの世界にも犬飼未明子がいる。


 だから私には選ぶことができたのだ。

 隣の世界の犬飼未明子だって、そのまた隣の世界の犬飼未明子だって。

 どの世界の未明子だって選べたのに私はこの世界の未明子を選んだ。


 それは何故なのか。


「……私が未明子とうまく行くのが、この世界だけだったからよ」


 こんなに世界はあるのに。

 無限と呼ぶほどに世界があるのに。

 そこに未明子はいくらでもいるのに。 


 私が一番愛している犬飼未明子が、私を受け入れてくれるのはこの世界だけだった。 


「世界は残酷ね。どの世界も同じ世界。人の考え方も同じ。起こる事件も同じ。だけどステラ・アルマの介入だけは例外なの。ステラ・アルマが関わる事象だけは、世界によって反応が変わるの」


 もし未明子がステラ・アルマでは無い人間と結ばれたなら。

 どの世界でも同じ人と、同じタイミングで結ばれるだろう。

 

 だけどステラ・アルマが関わった途端、それはその世界ごとに違った結果になるのだ。


「やはりそうだろうね」

「ベガが別の世界で自分のブランドを立ち上げたら、この世界では別の人間がそのブランドを立ち上げた事になった。当然よね。この世界にはベガはいないんだもの。ベガのいる世界だけにそのブランドが生まれてしまったら、他とは大きく違う世界になってしまうから世界がそのズレを修正したの。でもそれは規模の大きい話だけ。一人の人間とステラ・アルマではそんな修正は起こらない」

「別の世界では未明子くんとうまくいかなかったんだね」

「そうよ。私は未明子のステラ・プリムス。だけど未明子が私を受け入れてくれるかは世界によって違うの。この世界に来る前の世界では未明子は全然私に興味を持ってくれなかった。その前の世界では仲(たが)いをする程関係が悪かった。ほとんどの世界で私と未明子はうまくいかなかった」


 私は全部覚えている。

 どの世界の未明子だって私は愛していた。

 だけど未明子が私を愛してくれた事はただの一度だって無い。


「だから私は他のステラ・カントルとステラ・ノヴァの契約を結んで戦った。勿論その子達だって好きだったわ。でもどうしても勝ち続けられなかった。何度も戦う内に敗れて、お別れを繰り返して、その度に私は別の世界に再構成された」


 未明子を諦めようとした事だって何度もある。

 ステラ・ノヴァの契約を結んでくれた相手とずっと一緒に戦い続けようと何度も思った。


 だけどみんな死んだ。

 

 私と一緒に爆発に巻き込まれて

 あるいは核ごと貫かれて

 変身の解けた操縦席から落下して


 みんな死んだ。


 その記憶を引き継いで戦い続けなければいけない私は、次第に疲れてしまった。


 ステラ・アルマの使命を遂行する為に、好きな相手との別れを繰り返すのに疲れてしまった。


「どうしてこの世界の未明子くんとはうまく行くと思ったんだい?」

「前回の戦いで敗れてこの世界に再構成された時、何故か他の世界よりも未明子の存在を近くに感じたの。まあ理由を問われればそれ位しか無いのだけれど、この世界は他の世界と違うと実感があったのよ。だから私は確信を持って未明子の元に行った。そしたら……」

「ミラくんがいたと」

「そう。それでもこの世界の未明子は最初から私と仲良くしてくれたわ。それだけでも私は嬉しかった」

「ミラくんと契約をすませてしまった未明子くんでも、君にとっては特別な未明子くんだったんだね」

「だから私はこの世界から離れられなかった。一緒に戦う事はできないとしても、一緒にいられるだけでも満足だったの」


 初めて未明子が私を受け入れてくれたのがこの世界だった。

 私は舞い上がってしまった。

 同じ学校に通って、隣の席に座っていられる。

 毎日顔を合わせて、他愛もない話ができる。

 それがどれだけ幸せだったか。


 だから、鯨多未来が死んでからの未明子を見るのは本当に辛かった。

 他の世界と同じように私への興味を一切なくし、冷たい目を向けられた。

 それでもここまで深い関係になれたのは初めてだったから私はこの世界に賭ける事にした。


「犬飼未明子は数多の世界に存在する。だけど私にとっての未明子はこの世界の未明子だけなのよ」

「同じ人間でもステラ・アルマにとってその人はその世界にしかいないと言う事だね。……だからアルフィルクに過去別の世界のパートナーがいたとしても、その人はこの世界には存在しない」

「そう……だと思うわ。同じ名前の同じ顔の同じ性格の人はいるだろうけど、その人はアルフィルクのパートナーだった人では無いわ」

「やっぱりそうだよね。あーあ、それは困った困った」 


 夜明が何を困っているのか私には分かっていた。

 この話をどうしてみんなの前でしなかったのか。

 この話をするとどうして余計な事を考えなくてはいけないのか。


 だから私は彼女に対して、こう声をかける。


「アルフィルクを残して、いかないでね」


 そう言われた夜明は、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた。


「私だってそうしたいと思っているよ。でもこればっかりは私の努力でどうにかなるものじゃ無いからね」

「別の世界のあなたがこの世界のあなたと同じようにアルフィルクを受け入れてくれるか分からないわ」

「今の話を聞いて理解したよ。いやーどの世界の私でも大丈夫だと思うんだけどね。だって私だし」

「前に夜明が入院した時、未明子が信じられないくらい取り乱したの」

「そうらしいね。あの時は迷惑をかけて申し訳なかったよ」

「私だって……ううん。みんなだって、ずっと夜明と一緒にいたいと思っているはずよ」

「ありがたいねぇ。いい仲間を持てて嬉しいよ」

「だからお願い。自分の体は大事にして」


 私はそっと夜明の体に腕を回した。

 私の身長が低いせいで彼女のお腹のあたりに腕を回す事になってしまったけど、私の腕でも余りあるくらいにやせ細っていた。

 

「おやおや。いいのかい? こんな事して未明子くんにバレたら怒られるんじゃないのかい?」

「未明子が大事にしてる夜明を大事に思ってたって、未明子は絶対に怒らないわよ」

「まあハグくらいなら友達だってするからね。じゃあ私からもさせてもらおうかな」


 夜明の腕が私の頭を包み込む。

 夜明の低い体温と、静かな息遣いが、いまはまだ彼女の生を感じさせた。


 ……どうか、この命が燃え尽きませんように。

 狭黒夜明が最後まで私達と一緒にいられますように。

 

 私はそう星に願った。










 

 その日の集合は池袋駅に13時だった。


 土曜日という事もあり人が多く、集合場所を決めておいたのに中々全員が合流できなかった。

 ほぼ全員が土地勘がないのに現地集合にしたのが間違いだったのだ。

 どうせみんなそれなりに近くに住んでいるんだから、一旦拠点に集まってそこから全員で向かえば良かったのに。


 そう思っていると、言い出しっぺの稲見とフェルカドが集合場所のイケフクロウに集合時間ギリギリでやってきた。

 

「す……すいませんでした。まさか東京の電車がここまで複雑だとは……」

「まだ東京に来て三ヵ月だもんね。仕方ないよ」

「気にする事はありませんよ稲見。ここで偉そうにしている犬飼さんも、集合時間には間に合っていますが思いっきり電車を乗り間違えていますので」

「たはー。鷲羽さんが30分前に着くように設定してくれて助かりました」


 前回の遅刻を踏まえて、今回は集合時間よりも大分早く到着するように時間設定しておいたのが功を成した。

 私も未明子も池袋なんて滅多に来ないので新宿の乗り換えで反対方向の山手線に乗ってしまったのだ。


 渋谷駅で間違いに気づいて慌てて折り返し、何とか集合時間には間に合った。

 ここで遅れていたら今度こそすばるに折檻を食らっていただろう。


「長野だと電車は20分に1本くらいしか来ないのに、東京は電車が出て一息ついた頃には次の電車が来るんですね。びっくりしちゃいました」

「山手線は最速で2分40秒後に次の電車がくるみたいですよ」

「はぇー。カップラーメンにお湯を入れても出来上がる前に来ちゃうんですね」

「ホームでカップラーメンにお湯を注いでたら不審者扱いで捕まるんじゃないかしら……」


 今日集まったのは私と未明子、それにすばると稲見にフェルカドの5人。

 参加予定だったサダルメリクは夜更かしして起きれずにお休み。

 他のメンバーは都合がつかずに不参加となった。 


 目的は稲見とフェルカドが言っていたステラ・カントル候補に会う事だ。


「夏海の指示でステラ・カントル候補のスカウトもしていたんです。今から会いに行く人もその候補だったんですが、私が声をかける前に犬飼さん達との戦いが決まってしまったので後回しになっていたんです」


 勿論、この世界ではなく稲見達が元いた世界の話だ。

 だが世界が変わろうとも人は変わらない。

 稲見達の世界で候補者だったなら、こちらの世界でも候補者である事に変わりはない。


「でも双牛ちゃんって長野在住だったんだよね? その候補者に会いにわざわざ東京まで来るくるつもりだったの?」

「いえ、その方も長野在住ですよ。今日は東京に出てきているんです」

「どうして稲見はそのステラ・カントル候補が今日東京にいるって把握してるの? まさか……」

「違います! そういうのじゃありません。理由はすぐに分かりますよ。あ、ほらここです」


 稲見に連れられてやってきたのは大通りから一本奥に入った路地にある白い壁の建物だった。

 入口が分厚いドアになっていて周囲の飲食店からは少し浮いた作りになっている。


「お店とお店に挟まれてるこの建物よね。何かのアトリエ?」

「いえ。ここはライブハウスです」

「ライブハウス? ライブハウスってもっと大きいんじゃないの?」

「大きいライブハウスも勿論ありますけど、これくらいの規模のライブハウスも結構あるんですよ。長野にもいくつかありました」

「そ、双牛ちゃんライブハウスとか行くんだ。大人だなぁ」

「夏海がライブハウスでバイトしてたのでその手伝いで何度か行ったくらいです。自分では流石に行きませんよ!」

「そのステラ・カントル候補がこのライブハウスで働いているの?」

「さっき稲見は、その候補者が今日東京に出てきていると言っていましたね。と言うことは……」

「はい。その人は今日のライブの出演者です」



 ライブハウスで働いた経験がある稲見の案内で入場の支払いを済ますと、ステージのあるフロアに入った。


 ライブハウスなんて煙草の匂いが充満していてちょっと危険なイメージを持っていたけど、ここは全面禁煙みたいで、働いているスタッフも話しやすそうな明るい雰囲気だった。


 稲見とフェルカドは勿論のこと、物怖じしないすばるは堂々としていたが、未明子だけは慣れない場所に来たせいで借りてきた猫のようになっていた。

 ちょっと可愛いわね。



「まだ始まるまで時間があるのかしら? お客さんが私達しかいない気がするのだけど」


 フロアを見渡しても私達以外にはスタッフしか見当たらない。


 ライブってもっと人がギュウギュウ詰めになって誰が最前になるかを争い合っていると思っていた。

 今のところそんな雰囲気は全くない。


「今日出演する人達はそこまで知名度があるわけでは無いですからね。特に今日は対バンですし、最初の方に出番があると客入りはこんなものですよ」


 稲見がスタッフに聞こえないようにこそっと教えてくれた。


「双牛ちゃん、対バンとは?」

「複数の出演者がいて、その出演者が交代で出演するイベント形式です。目的の人は今日一番最初の出番なんです。さっき入口でもらったフライヤーに名前が載ってたかな」

「双牛ちゃん、フライヤーとは?」

「簡単に言うとチラシのことです。活動している人達の情報が分かるんですよ。ほら、この”(つゆ)をふらせ”ってグループの人達がそうですよ」

「露をふらせって変わったグループ名だね。何で動詞なの?」

「な、何でかは分からないですね……そういうのが流行ってるんじゃないかと……」

「未明子、稲見を質問攻めしないであげて」


 未明子は落ち着かないので誰かと話していたいのだ。

 稲見は質問されたら律儀に答えてくれるから、体のいい話し相手として質問地獄に付き合わされてしまうところだった。

 

「ライブなんて初めてだからどうしたらいいか分からないよぉ。始まったら踊ってればいい?」

「いやあなたのライブじゃないから。大人しく見てなさい」 

「鷲羽さんと暁さんはライブに参加した事はあるの?」

「私はもっと大きな場所には行ったけど、この規模は初めてね」

「わたくしも初めてですが少し興味のある世界なので楽しみです」

 

 すばるは確かにワクワクした顔をしていた。

 興味があるってどういう事なのかしら。

 すばるの得意分野であるゲームとは程遠い世界だと思うのだけど。


 それともいつか自分もやってみたいと思っているのだろうか。

 確かにすばるの顔立ちだったらステージ映えしそうだわ。


 

 そんな事を考えていると、観客側の照明が消えた。

 いよいよステージが始まるようだ。


 真っ暗なフロアの中、出演者がステージに出てくる気配がする。


 ステージサイドに置かれたスピーカーから曲が流れ、ステージの照明が照らされると、そこには二人の女の子の姿があった。


 フリフリの衣装。

 きらびやかなメイク。

 かわいらしいポーズ。

 

 マイクを片手に、客席を指さしながらとびっきりの可愛い声。


「みんなー! お待たせー!!」




 ……あ。


 なるほど。


 そっち系のステージなのね。



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