第79話 星のダイアローグ④
稲見とフェルカドが最後にとてもいい質問をしてくれた。
今回の話はここが一番大事なポイントだったのだ。
話の重要性を理解してくれたのか雑談に夢中だったサダルメリクとすばるも私に注目する。
「そうね。そろそろその話をできるくらいには説明できたわね」
「情報過多だ。ここに来るまでが長かったな……」
「最初に長くなるって言ったじゃない。ここまでの話は本来はある程度勝ちぬいた戦士だけが知る真実よ」
「あれ? 1等星も知ってるんじゃないの?」
「私達1等星は言わば抜け道なの。この無限に増えた世界の中で、たった21個の世界だけが本来とは違った形で真実を知ることができる。私達はセレーネの用意した隠しアイテムみたいな物なのよ」
月の女神の遊び心で1等星には記憶の操作が一切行われなかった。
私達だけがセレーネの企みも全て知った上でこの戦いに参加している。
そしていま話した真実を地球の子に話すかどうかも一任されているのだ。
だから、私達には選択肢を提示する事ができる。
「この真実を知ったあなた達には二つの選択肢があるわ。一つ、このままセレーネの決めたルールに則って戦いを続ける。二つ、セレーネの元に乗り込んでアイツを倒す」
それは究極の選択。
このままゲームを続けるか。
それともゲームを創った者を倒してしまうか。
「待って。管理者への挑戦権を得るって直接セレーネと戦うって事だったの? てっきりボスキャラみたいなのが用意されてるんだと思ってた」
「普通に挑戦するならそうみたいね。セレーネの用意した敵と戦って打ち破ればそれでゲームクリア。その世界は今後戦う必要はなくなるわ」
「それとセレーネを倒すのとどちらが大変なの?」
「セレーネと直接戦う場合、月に配備されている戦力と真っ向からぶつかる事になる。どう考えても直接戦う方が大変ね」
「では直接戦う事にメリット、もしくはルールに則って戦う事にデメリットがあると言う事かな?」
「デメリットと言うか、ルール通りに戦い続けても一定回数勝利するという条件はほとんど満たせないのよ」
「条件を満たせない?」
「そう。例え1等星のいる世界だろうと、勝ち進む内にメンバーが倒れて減っていったら、いずれ戦力差で潰されてしまうのよ」
1等星のステラ・アルマがいる世界は強い。
だけどその1等星しか戦える者がいなくなってしまったら?
1等星のステラ・アルマと言えど、戦闘経験豊富な下の等級のステラ・アルマを数体相手にした場合の結果はすでにこの世界のメンバーが実証している。
「なるほどね。戦えば戦うほど疲弊していき、勝ち続けるのは難しいと言う事か」
「絶対に誰もやられず、致命的な負傷もせず、毎度同じ戦力で戦えるなら話は別だけどね」
「じゃあこの戦いって初めから勝ち目の無い戦いなの?」
「いえ、そうでも無いわ。戦力が減っていくのなら増やせばいい。つまり戦いながら仲間を増やしていくのが必須行動になるのよ」
「……と言うことは、わたくし達が戦った斗垣さんの行動は正しかったのですね」
すばるが言っているのは前に聞いた秋の大四辺形の戦士達の事だろう。
特別な2等星なら他の世界よりも多くの情報を持っていた。
だからこそ、その事実に気づけたに違いない。
「そうだとしてもあんな誘われ方じゃ協力するなんて無理よ。それに自分達の世界を犠牲にしてまで他の世界と協力するなんて、やっぱり御免だわ」
アルフィルクの言い分は至極真っ当だ。
どうしたってそういう意見が出てくる。
だからフォーマルハウトの「相手を服従させる固有武装」が強力なのだ。
相手の意思に関係なく従わせられるなんて、道義を無視すれば最高の能力に違いない。
「セレーネの設定したルールに則って戦い続けるには仲間を増やさなければいけない。だがセレーネと直接戦うには月の戦力を相手にする必要がある。どちらを選んでも困難な道には変わりなしか」
「アルタイル、勝利条件の ”ある程度の回数” とはどれくらいなのですか? この世界もそれなりに勝利しています。もしかしたらそろそろ条件を満たせるのではありませんか?」
「私も正確な数字は知らないけどおそらく20〜30回前後。一つの世界がそれだけ他の世界を破壊できたなら解放しても良いという考え方なんじゃないかしら」
すばるが夜明の顔を伺う。
この世界の最初のステラ・カントルは夜明だ。
つまり夜明が戦ってきた数がこの世界の勝利数とイコールになる。
「前回のフォーマルハウト戦。稲見くん達の世界との戦いが通算して15回目の戦いだ。挑戦権にはまだ少し足りないようだね」
「15回……」
「でもうまくいけばあと5回くらいでしょ? アルタイルもいるしこのまま戦えば達成できるんじゃない?」
「どうだろうね? あくまで私の計算だが、もしフォーマルハウトが現れずにアルタイルくんが加入していなかったら、恐らく私達は稲見くん達の世界に負けていたんじゃないかと考える」
「わ、私達の世界にですか?」
「ああ。君達の一つ前の世界との戦い。アルタイルくんのおかげで圧勝したように感じたが、彼女がいなかったら負けはしないものの大きな被害を受けていただろう」
確かにあの戦い、私がいなくて鯨多未来を含めた4人だったら少しキツい戦力差だったかもしれない。
単純に等級ごとの頭数が違う。
こちらが2等星2体に対して相手は3体。3等星に至っては倍の4体だ。
勝てたとしても無傷とはいかなかったろう。
しかし未明子をその気にさせる為とは言え、よくそんな相手に二人で特攻して行ったものだ。
「そのダメージが回復しないまま稲見くん達の世界と戦ったら、余程うまく立ち回らない限りは負けていたと思う。つまりアルタイルくんの言う通り、普通に戦っていたら勝ち続けるのは難しいんだ」
「確かに私もアルタイルがいなかったらヤバいと思ったものね。でも夜明が言ってるこちらの戦力に合わせて向こうの戦力が決まるってのが正しければ、こっちの戦力が減ったら相応の相手が用意されるんじゃない?」
「その可能性は勿論ある。もしくは、一つ前の戦いのスコアによって決まるなんてのもあるかもね」
「獲得ポイントね。戦力じゃなくて戦いの評価で次の相手が決まるパターンか。それもゲームっぽいわね」
この辺りのルールは1等星にも伝わっていない。
ゲーム性を高める為にあえて秘密にしているのだろう。
あの女の事だからこの法則は何がどうなっても明かされない気がする。
「じゃあどうする? やっぱり月の女神様と戦う?」
「アルタイルくん。月の防衛力についても聞いていいかい?」
「答えられる範囲で答えるわ」
「以前はステラ・アルマ全員で月に乗り込んだと言っていたが、こんな小人数で乗り込んでも勝算はあるのかい?」
「……正直、数値だけで判断するとまず無理ね」
ここからは数字の話になるので何かに書いて説明した方が分かりやすいだろう。
展望ホールを見回すとホワイトボードがあったので、私はそれを引っ張ってきた。
「ステラ・アルマのアニマ内蔵量は直接の強さとイコールにはならないけど、一つの指針にはなるわ」
まずはホワイトボードにここにいる5体のステラ・アルマの名前を書いていく。
背が低いからホワイトボードの上の方には手が届かなかった。
仕方なく下の方に書いていると、それを見たアルフィルクが派手に吹き出した。
頭に来たのでアルフィルクの名前だけひらがなで書いてやった。
次に名前の横に数字を記載していく。
「3等星の平均内蔵アニマが15,000前後……。そして2等星のツィーが25,000として……。で、私のアニマが140,000……」
「アルタイルの内蔵アニマって14万もあるの!? フォーマルハウトより多いじゃない!」
「1等星は全員10万以上のアニマ持ちよ。さっきここに来たベガは私よりも等級が上だしアニマの量ももっと上なの」
「はぁ……そこまで差があるんなら確かに別格ね」
まあ、数字だけ見たらそう思うかもしれない。
そうなるとこの先は書き辛いんだけどな。
でも書かない事には話が先に進まない。
私は自分達の名前の右側に大きな〇を書いた。
「鷲羽さんそのマルは何? 饅頭?」
「月よ! なんで突然饅頭を書くのよ!?」
「お腹すいたのかと思って……」
私そんなに腹ペコキャラだったかしら。
突然の未明子からの誤射を受け流しながら、今度はその月の上に小さな〇を書いた。
「月には敵の襲撃を防ぐための防衛ロボットが配備されているわ」
「へぇー。そんなのいるんだ。じゃあ月面探査とか行く時はどうしてるの?」
「別に月を侵略しに行ってる訳じゃないでしょう? あくまで防衛の必要がある時だけ配備されるの」
「普段からそんなロボットがいたら流石にバレるでしょうしね。ステラ・アルマが月を攻めた時はどうしていたんですか?」
「月側が視覚とエネルギーを遮断するジャミングウォールを張ったみたいよ。地球からは絶対に観測されないようにするのと、間違っても地球に被害が及ばないようにしたみたい」
今回の戦いで開始前の境界の壁に使用されている物と同じような物だ。
私達もその壁が張られているのは分かっていたので派手に攻め込ませてもらった。
もしあの戦いが地球から見えていたとしたら大騒ぎになっていただろう。
「その防衛ロボの名前はルミナス。光輝くという意味の巨大ロボットで、ステラ・アルマの4~5倍くらいのサイズがあるわ」
「めっちゃ強そうじゃん! それが月のボスキャラ?」
「いえ、AI操縦のただの警備ロボットよ」
「強くはないのかい?」
「内蔵エネルギーをアニマに換算すると約30万ほどね」
「いや強すぎるじゃない!!」
「それは骨が折れそうだねぇ……」
「でもアルタイルちゃんも含めて全員でかかれば何とかなるくない?」
「で、そのルミナスが月に5万体……」
「「「勝てるかッ!!」」」
ホワイトボードに〇をたくさん書いていると、全員からの総ツッコミが入った。
普段大人しいツィーやすばるからもツッコミが入ったので私は目を丸くしてしまった。
「はい解散解散ー。月と戦うなんて絶対に無理でーす」
「アルフィルク待って」
「待たないわよ! 私達より遥かに強いロボットが5万体ですって!? 5体でもキツイわよ!」
「月全体を守るんだもの、それくらいの数は必要よ。それに強いとは言っていないわ。あくまでエネルギーの数値がそれくらいってだけ」
「ミラのファブリチウスが2,000くらいのエネルギーであの威力よ? 同じ威力の攻撃を100発撃ってきても、まだお釣りがくるわ!」
「計算早いわね。でもエネルギーの数値が強さじゃないってのは最初に言ったでしょ? いくら数値だけ高くてもAIが操縦するロボットなんて大して強くはないわ」
「……えーと、私には想像できないんだがアルタイルくんは前の戦いでそのルミナスをどれくらい倒したんだい?」
「私は突入部隊だったからそこまで交戦はしていないけど、道すがら100体は倒したわ」
「30万の敵を100体!? 凄くない!?」
「ごめんなさい。数字を伝えたのはミスだったわね。別の何かで例えれば良かった。……そうね、夏場にセミを100匹叩き落としたと思ってもらえれば」
「セミを叩き落としたことが無いから全然イメージが沸かん……」
私の例えに誰も納得していないようだった。
要は1体1体はそこまで脅威じゃないって伝えたかっただけなんだけどな。
「で……では、アルタイルの言う通りルミナスがそこまで強くないとして、防衛網を突破しセレーネの元まで行けたとしましょう。セレーネの戦闘能力はどれほどなんですか?」
「セレーネ自身はただの女よ。見た目はまあ人間とほとんど同じ。そこらの野良猫よりは強いかもしれない程度よ」
「わぁ。ギャップが凄いね」
「猫って生物としては結構強い部類なんだけどね……」
「では、セレーネまで辿り着ければ倒すのは容易であると」
「そうね。対面できたらもう勝ったと思っていいわ。でもあの女の事だからルミナス以外にも防衛力を控えていると思う」
「それがどの程度か分からない、という事か」
私達が月に攻め込んだのは20年以上前の話だ。
今ではどういう防衛体制になっているのかは正直分からない。
一度私達に破られている以上、あの時よりも手薄になっている事は無いはずだ。
「これが今説明できる月の防衛力よ。やり方次第だけど、突破する方法はあると思うわ」
「正面から突っ込んでいかなくても陽動とか隠密でセレーネだけを叩くって事か」
「お。私の出番? 作戦、立てちゃう?」
「サダルメリクなら何か思いつくでしょ? それにこう言うのも何だけどセレーネは絶対に実行不可能な事は嫌いなのよ」
「どういうこと?」
「何であれ必ず攻略方法を用意するの。一見無理に思えても知恵を振り絞って対策すれば何とかなるような仕掛けが好きらしいわ。戦いを終わらせる権利もそうだし、1等星にだけ記憶の操作を行わないのもそういう性格から来てるんじゃないかしら?」
「全ての真実を知る1等星がルールを無視する可能性をあえて作っているという事は、月を攻めるのにも何らかの抜け道を用意している可能性が高いと言う事ですね」
あの女、性格は最高に歪んでいるのにそういう所だけはフェアなのだ。
地球を破壊して遊ぶのだって隠そうと思えば隠せたはずだし、私達が攻め込んだ時だってもっとズルいやり方をすれば対処できた。
そういう選択をしないのは、あの女は自分をもコマにして遊んでいるのだ。
月の管理がよほど退屈だったのか、完璧な計画よりも自分が楽しめる方を選択している気がする。
結果的にステラ・アルマはあの女の思惑通りに動いてしまっているし、すべてを仕組んだ者と言われるのも納得してしまう。
「以上よ。稲見、これで質問への回答になったかしら?」
「あ、はい! ありがとうございます」
「選択肢の内容は理解したが、これは難しいねぇ……」
「どちらを選んでも茨の道であるのは明白ですね」
これでいま話せる真実はだいたい話した。
ここからは全員がどういう選択をするかだ。
難しい決断だと思う。
どちらも戦いを終わらせる事に繋がるが、どちらも何とかなる確証がない。
私個人としてのこうしたいと言う希望は勿論ある。
だけどこれは巻き込まれた地球の子の為の選択肢だ。
私は1等星のステラ・アルマとしてその選択に寄り添うだけ。
みんなしばらく考えていたが中々考えがまとまらないようだった。
その様子を見ていた稲見が、周りを気にしながらそっと手を上げた。
「はい。稲見さんどうぞ」
「何でアルタイルさんそんな先生みたいなんですか? あの、この選択って今すぐに決めなければいけないんでしょうか?」
「いえ。別にいますぐ何かが起こる訳じゃないわ。私は真実を話しただけだもの」
「で、ですよね……」
稲見の発言を受けて全員がハッとした。
みんな選択肢に囚われすぎて今すぐに何かを決断しなくてはいけないモードになっていたようだ。
こういう言い方をした私も悪いのだが、別に真実を知った上でそれを聞かなかった事にしたっていい。
その場合は今まで通りセレーネのルールに則って戦うだけだ。
稲見はみんなの様子を窺って、特に反論が無いようなので話を続けた。
「今すぐに決めなくてもいいなら、まずは仲間を集めるように動いてみるのはどうでしょうか? それで仲間が増える算段が付くようなら戦いを続ければいいし、もし難しそうなら女神様と戦うというのはどうでしょう?」
いつもなら夜明かすばるあたりが言い出しそうな事を稲見が提案した。
選択が差し迫っていないならば確かにその動きが一番効率が良い。
「おお。それはいいね。私は稲見くんの意見に賛成するよ」
「アタシもいいと思う! そっちの方が選択の幅が広がるもんね!」
「やっぱり稲見さん、ここぞと言う時の提案力が、高い」
「げぇーサダルメリクがまた人を褒めてるわ。怖い怖い」
「なんだぁ、テメェ。そのベガが考えた服、破くぞ」
「あんたが今日着てる服も同じブランドよ馬鹿」
サダルメリクの評価も納得だった。
稲見は別の世界から来た人間のせいか、他のメンバーの考えに良い意味で囚われない。
それ故に思考が柔らかく、みんなの凝り固まった考えをほぐす事ができる。
これはとても有難い能力だ。
「それなら何か仲間を増やす方法を考えないといけないな」
「稲見ちゃんみたいに別の世界から勧誘する?」
「はい。私思ったんですけどいいですか?」
「ワンコが何か吠えたがってるな。何かいいアイデアがあるのか?」
「別の世界よりも、まずはこの世界のステラ・アルマを探してみませんか?」
「なるほど! ステラ・アルマは何となく拠点の場所が分かるから、この世界にやって来たら勝手にここに集まってくると思ってたけど、まだどこかでパートナーを探してるステラ・アルマはいるかもしれないわね」
「でもさー。そのステラ・アルマをどうやって探せばいいの?」
この世界のステラ・アルマを探すのはいいアイデアだけど、五月の言う通りこちらからステラ・アルマを探す方法は無い。
街中で偶然出会えたらいいが、その偶然を期待するのも少し難しい。
こうなると稲見の世界にいた夏海のパートナーの能力が羨ましく思えてくる。
「ステラ・アルマは難しくても、ステラ・アルマが現れた時の為にステラ・カントル候補の方を探しておくとか」
「それ稲見の世界のリーダーがやってたのと同じ事でしょ? ステラ・アルマにはちゃんと自分で相手を選んで欲しいわね……あ! ごめんなさい。フェルカドと稲見の事を悪く言いたかったんじゃないの」
「いえ、気にしていませんよ。私は最高のパートナーと出会えたと思っているので」
フェルカドは稲見と顔を合わせ、二人で微笑み合った。
本当、誰かに決められたとは思えないくらいこの二人の相性はいい。
私には分からないけど稲見にとってフェルカドは偶然出会えたステラ・プリムスなんじゃないかしら。
「あ……!」
微笑み合っている二人を微笑ましく見ていると、稲見が何かに気付いたように声を上げた。
「フェルカド、そう言えばあの時の!」
「え? 何かありました……あ!」
フェルカドも何か思い出した事があるらしい。
二人はお互いに頷き合うと、稲見がまた手を上げて発言権を求めた。
「私、ステラ・カントル候補の人のアテがあります!」
話し合いは稲見からの提案で終わった。
後日、稲見の知っているステラ・アルマ候補に会いに行く事になったのだ。
日程調整などはライングループで行うとして、今日は解散となった。
色んな事実が明かされた事で、それぞれ考えたい事ができたのだろう。
いつもならこの後みんなで夕飯でもという流れになるのだが、今日は全員大人しく帰って行った。
……否、一人だけ帰らなかった。
狭黒夜明。
さっき私への質問を後回にした件で拠点に残っていた。
その夜明にお願いされて私もこの場に残る事になったのだ。
未明子と一緒に帰りたかったのが本音だけど内緒話があると言われたら仕方が無い。
「わざわざ残ってもらってすまないね」
「別に構わないけど……管理人にも聞かれたくないの?」
「セレーネさんは気を利かして奥に引っ込んでくれただけだよ。私がお願いしたわけじゃない」
「何でそこまで気が利くのにメッセージはあんなに無骨なのかしら」
「それは私も前々からお願いしてるんだけどね」
夜明はアハハと笑うと、展望ルームの窓から外を眺めた。
珍しく話を切り出すのを躊躇っているように感じた。
ならばこちらから話を振ってあげた方がいいだろう。
「他のメンバーに聞かせるほどじゃないって言うのは、相当聞きにくい質問って事なんでしょ?」
「まあ、そうだね。それを知ってしまうと余計な事を考えなくてはいけなくなる」
「……言えるまで待つわよ。未明子も帰っちゃったし別に急いでないから」
ここまで言っても夜明はあまり気が進まないようだった。
何を聞こうとしているのだろうか?
さっき話した以上に重たい話などそこまで多くはないはずだ。
「……さっきの話を聞いて……いや、今まで君の話を聞いてきて、ずっと考えていた事がある」
「なあに?」
「君は、君達は……」
「君達ステラ・アルマは、もしかして不死身なのかい?」




