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第33話 甘く香る愛のバレットで⑥

 桝形菊ますがたきくと名乗った敵と戦闘を始めてからすでに10分ほど経過していた。

 敵が建物の影を利用してこちらに砲撃を繰り返す。

 撃っては隠れ、撃っては隠れ、消極的な戦い方を続けていた。

 

 私は自身のステラ・アルマ専用のセンサーで敵の大体の位置は掴めている。

 敵の砲撃が止むタイミングを見計らって何発か撃ち込んでみたが外れてしまった。

 いくら位置が分かると言っても、動き回る相手を正確に撃ち抜くのは簡単ではないのだ。


 だから砲撃が当たるように色々と工夫する訳なのだが、それにしても敵はさっきから動き回って適当に撃つ以上の事をしてこない。

 建物の影から建物の影に移動して、まるで移動している理由付けのために砲撃を繰り出しているようだ。


「移動しながら罠を張ってるって感じでもないね」

『あの子の攻撃も狙いが甘いし、何が目的なのかな?』


 こちらの攻撃が当たらないように敵の攻撃もこちらに当たらない。

 こちらを狙ってはいるが正確性は全く無く、少し動くだけで避けられてしまう。

 固有武装だと思っていたバズーカは、何一つ特殊な攻撃はせずに単純な砲撃だけを繰り返しているだけだった。

 戦闘が始まってからずっとこの調子で、まるで戦略性の無いテニスプレーヤーが無駄なラリーを続けているみたいに時間だけが浪費されていく。


 ならば戦い方を変えてみるしかない。


 私は砲撃の合間に敵に向かって突っ込んだ。

 この距離なら敵の次の砲撃を回避できればかなり距離を詰められる筈だ。

 相手に近づいて近距離射撃モードで隠れ場所ごと撃ち抜くつもりだった。


 接近に反応した敵が動き回るのをやめてこちらに狙いをつける。

 ようやく敵の殺意のようなものを感じた。

 次は絶対に当ててくる。ならこの一発は絶対に回避する!



「ありがとう近寄ってくれて。ようやくコイツの本領発揮だわ」


 すると敵は構えていたバズーカを左肩にジョイントした。


 肩のパーツにバズーカがガッチリと装着されて、バズーカと言うよりもショルダーキャノンのような見た目になった。

 更にそのバズーカの砲身から長尺の刃のような物が飛び出してきたのだった。

 

「ええっ!? なにそれ!?」


 突拍子もない変形に驚いていると、装着されたバズーカの後部からバーニアの火花が勢い良く飛び散り始めた。

 その状態で敵がフッ、と軽くジャンプする。

 すると次の瞬間、恐ろしい勢いでこちらに突進してきたのだ。

 

「コイツ、実はこんな見た目で近接武器なのよ!」

「飛び道具じゃなかったの!?」


 何かギミックがあるとは思っていたが、まさかそういう使い方をするモノだとは予想もしなかった。

 いわゆる衝角攻撃ラムアタックと言うやつだろうか。

 走るこちらとの相対速度もあって、あっという間に敵が目の前に迫ってくる。


 だがこちらは元々回避するつもりだったのだ。

 すぐさま右足に力を込めて真横に飛ぶ。


 ギリギリすぐ横を敵が通り抜けて行き、何とか回避する事ができた。


 通り過ぎて行った敵は砲身後部から出ていたバーニアを止めると、

 ズサザザ! と音を立てながら勢いを殺して、地面に着地した。



「飛び道具よ。私自身がだけどね」


 危なすぎる。

 バズーカの弾が飛んでくると思ったのにまさか本体が飛んで来るなんて。


 敵はこちらを振り返ると、また自分自身を発射する為の体勢を取った。


「バズーカの固有武装だと思ってたよ」

「あら? バズーカの固有武装よ? 私のバズーカは空も飛べるだけ」


 確かに飛んでいたがそんなに行儀の良い飛び方では無かった気がする。

 飛ぶと言うより銃にくっついて吹っ飛ばされていたと言う方が正しい。


「みんな遠距離からチマチマ削るだけの武器だと思うのよね。だから近寄ってきた相手にカウンターを喰らわせてやるのが私の戦い方」


 危うくその通りになる所だった。

 固有武装は見た目からは予想出来ない攻撃をすると教えられていなかったら、まともに喰らっていたかもしれない。

 でもタネが割れれば何てことはない。

 要は突進武装だ。


「でも真っ直ぐ飛んでくるだけなら簡単に撃ち落としちゃうよ!」

「面白い。そう言うならやってごらんなさいな!」


 敵が再びバーニアを噴かして突進を仕掛けてくる。


 私は敵に狙いをつけるとファブリチウスの引き金を引いた。

 砲身から赤いビームが放たれて、敵に一直線に向かって行く。

 

 すると敵はファブリチウスのビームに当たる直前、角度を90度変えて上空に飛び上がった。

 ビームは目標を失って遠くのビルに着弾して爆発を起こす。


 あんな急角度で回避できるのか!

 結構なGがかかるのに操縦席の中は大丈夫なのだろうか。


 こちらの疑問が解消される前に、敵はすぐさま角度を変えて再びこちらに突進してきた。

 ここまで距離が詰まるとこちらの砲撃は間に合わない。

 

 仕方なく突っ込んでくる敵を大きく回避する。

 敵はまた闘牛士にかわされた牛のようにすごい勢いで通り過ぎていった。 


 敵が着地し、素早くこちらに向き直る。



 さっきまでと同じようにお互い攻撃が当たらない状況だが、比べものにならない緊張感が漂っていた。

 お互いに相手の攻撃を喰らえば一撃で倒される。


 相手に串刺しにされるのが先か、相手が黒コゲになるのが先か。

 一瞬の判断ミスで勝敗が分かれる。


「ふん。そんな真っ直ぐ飛ぶだけのビームには当たらないわよ!」


 確かにファブリチウスの砲撃は直線だ。

 軸を外せば回避は難しくは無い。

 だからと言って一発避けただけで勝ち誇られても困る。

 こっちだって自慢の固有武装だ。


「ミラ、ファブリチウスの出力を少し上げてもらえる?」

『分かった。でも反動が大きくなるよ?』

「大丈夫。次の攻撃は反動が大きい方が助かるんだ」


 敵の突進速度は中々だが、目で追えない程では無い。

 相手が動いてからでもこちらの次の手は間に合う筈だ。



「次は当たるまで止まらないから。覚悟してね」

「よしきた!」

「よしきた! じゃ無いわよ! 緊張感の無い奴ね。言っとくけど当たったらタダじゃ済まないんだから!」

「それはお互い様だよ。撃たれても恨まないでね!」

「むっかつく奴!」


 言うや否や、三度目の突進を仕掛けて来る。 

 

 私はファブリチウスの砲身を敵かららすと、上空めがけて発射した。

 そのまま空を横一文字に掃射する。

 ミラが言った通り出力を上げたので反動が強い。

 だがその反動を活かして、空を射撃しながら後方に移動した。


「はぁ!? どこ狙ってるのよ!?」

「どこって……ビルだよ」

「え?」


 敵が頭上を見上げる頃には、すでにビルの瓦礫、いや瓦礫と言うには大きすぎるビルの破片が敵に向かって落下していた。


 ファブリチウスの砲撃は敵を狙ったものでは無い。

 真横にあるビルを狙って撃った。

 建物の上階をスライスするように砲撃で削り取って落下させたのだ。

 

「嘘でしょ!?」


 気づいた所で最早避けられるタイミングでは無く、敵はなす術もなく落下してきた瓦礫群に押しつぶされた。

 瓦礫が地面に落下すると、大きな音と共に瓦礫の破片が周囲に飛び散る。 

 それによって起こった白煙が辺りを覆い隠したので、煙に巻かれないように更に後方に下がった。



 普通の敵ならこれで倒せるかもしれないが、相手は特別な2等星。

 ダメージを与えられたかも怪しい。

 確実に倒すにはやはりファブリチウスで撃ち抜くのが正解だ。


 精神を集中させて敵の位置を探ると、瓦礫の中から反応を感じる。


 いま砲撃を加えても瓦礫が邪魔をして効果が薄い。

 撃つなら敵が飛び出てきた瞬間だ。

 あそこから一足飛びに突進してくる可能性を考慮して十分に距離を取ってはいるが油断はできない。

 コンマ1秒で反応できるようにファブリチウスを構えて待つ。



 10秒……20秒……張り詰めた空気の中、汗が頬を伝っていった。

 警戒を持続させるのはそれだけで体力を消費する。



 50秒……1分……。



 ……ん?

 焦らすにしても流石に長すぎないか?



『あれ? もしかして倒しちゃった?』

「流石にこれで終わりって事は無いと思うけど……」


 反応は変わらず瓦礫の中だった。

 だが、その反応を探る内に少し気になる事があった。


 この敵の反応が薄い気がしたのだ。

 薄いと言うのは言葉通りの意味で、かたまりとしての密度が薄い気がする。

 この敵は他のステラ・アルマよりも存在感が弱い。

 さっきまでは目視していたせいで気づかなかったが、姿が見えなくなった事によってそう感じたのだ。


 それを狭黒さんに報告すべきか迷っていると、瓦礫の中の敵が動き始めた。

 固有武装による突進を警戒するが、敵はフラフラと瓦礫の中から這い出てきただけだった。



 見た感じ大きなダメージを負っているようだ。

 右半身を中心にただでさえ薄い装甲が完全に破壊されていて、本体にも大きなダメージが入っているように見える。 

 特に右腕、あれもう潰れてないかな?

 肩にジョイントした固有武装こそ壊れていないものの、敵の姿はすでに満身創痍だった。


「なかなか大胆な作戦じゃない。ちょっとビックリしたわ」

「いや、ちょっとビックリってレベルじゃないでしょ!? めっちゃダメージ受けてるじゃん!」 

「マルカブを舐めないでもらえるかしら。こんなのどうって事ないわよ」


 やせ我慢にも程がある。

 こんなボロボロの体でどうって事ないなら、敵の真の能力はその我慢強さだ。

 もしミラが同じダメージを受けていたら撤退を検討したいレベルだと言うのに。


 いや、そうだとしてもだ……。



 私はセレーネさんが開いてくれたゲートに向かって喋りかけた。


「狭黒さん、戦闘中にすいません!」


 とりあえず私の中の結論を伝えなくてはいけない。


「あの、言いにくいんですけど……この敵、弱くないですか?」


 ここまで戦った上での感想だった。


 何と言うか、戦い方が雑なのだ。

 遠距離からの発展性の無い攻撃で接近戦を促しカウンターで突進を決める。

 それだけ聞くと悪くない戦術の気はするが、その割には動き一つ一つにキレがない。

 もしそれがこの敵の必勝パターンだとするなら、そもそも最初の突進を避けられる筈がないのだ。

 不足の事態への対応の悪さも弱いという印象を後押ししていた。


《未明子くん。ちょうど私も同じ事を思っていたよ。私の敵も総合的な判断をすると弱いと表現せざるを得ない》

「わざと弱いフリをしている印象もありません。普通に戦ってるのに結果が伴わないと言うか……特別な2等星どころか、3等星くらいの機体性能のように感じます」

《ふむ。他に何か気づいた事はあるかね?》

「さっき連絡しようと思ったんですが、私のセンサーで感知できるステラ・アルマとしての反応が薄い気がします」

《反応が薄い?》

「間違いなくそこにいるんですけど、存在がおぼろげと言うか、あやふやと言うか。他のステラ・アルマはもっと確固とした存在感があるのに、あの敵は中身の無い表面だけみたいな……うまく言い表せないんですけど」

《なるほどね……。すばるくん。いま会話はできるかい?》

《はい。お二人の話は聞いておりました》

《そちらの敵はどうだい?》

《わたくしの戦っている敵は相応の強さを持っていると思います。戦況的には互角、いえ、やや不利かもしれません》


 暁さんが不利!?

 サダルメリクちゃんの鉄壁にプラスして、本人まで戦い慣れしている暁さんが不利を口にするって言う事は、向こうの相手は本当に強いみたいだ。

 3等星の敵がその強さを持っているのに、2等星の敵が揃って弱いなんて事があるんだろうか?


《そうか分かった。では五月くんの方はどうだい?》


 ……。

 ……。


 五月さんからの反応が無い。

 通信ができないくらい離れてしまったのだろうか。

 いや、今回はゲートを使って通信しているから距離なんてどれだけ離れても関係ない。

 反応が無いという事は、何かジャミング的なものを受けているんだろうか。


 それともまさか……?

 嫌な予感がよぎる。


《……ごめん。ちょっと手が離せなくて応答できなかった》


 そう思った直後に九曜さんからの通信が入った。

 ただ、少し声の調子がおかしい気がする。


「良かった! そっちは大丈夫ですか?」

《あー……ははは。本当にごめんなんだけど》



《……負けるかも》

 


 絶望的なその言葉に、私は思わず固まった。

 

 九曜さんの声に自信が全く感じられなかったのが言葉の意味を裏付けていた。

 焦燥とは違う諦めの混じった声だ。

 向こうは劣勢どころでは無くすでに決着がつきそうな局面に入っているのか?

 私の心はざわつき始め、冷静さを失いつつあった。


「そんな!? あの人そんなに強いんですか!?」

《強いね。悔しいけど言うだけあるわ》

「私、すぐに援護に行きます!!」


 居ても立ってもいられなくなり、九曜さんが戦っている方に向かって走り出した。


《待ちたまえ未明子くん! いま君が行っても敵を連れていくだけで余計不利になる!》

 

 突如、耳をつんざくような狭黒さんの大きな声が操縦席に響く。

 私はその声に驚いて思わず立ち止まった。


 と同時に急速に頭が冷えて、狭黒さんの言った通りだった事に気付く。


《五月くん。操縦に無理のない程度に何があったか話してくれ》

《うん。伝えられる内に伝えるね》


 伝えられる内になんて、そんな言い方しないで欲しい。

 まるで遺言みたいだ。

 目の前の敵を警戒しなくてはいけないのに、つい九曜さんの言葉の方に集中してしまう。


《まず敵の武器は今のトコロあの大きな剣だけ。他の武器は一切使ってない。あんな大きな剣なのに、ツィーのスピードに付いてこられるくらいに素早い。それから威力もありえないくらい高い。ナヴィで防御しても衝撃を逃すだけで刃が折れちゃう。もう6本折られた》


 淡々とした説明を聞けば聞くほど冗談であって欲しいと願いたくなる。

 ツィーさんのスピードで叶わないなら、私達は誰もスピードで叶わない。

 2等星の固有武装が破壊されるなら、おそらく私達の武器や装甲も全て破壊される。

 

《装甲も固すぎて歯が立たない。相手は回避せずにこちらの攻撃を全部受けてるのに、未だにヒビすら入ってない》


 そうなると戦い始めてからここまで相手に与えたダメージはゼロ。

 そして相手のリソースは何一つ削れていない。

 自分が戦っている訳でもないのに絶望感が襲う。


《逆にこっちは直撃を受けてなくてもボロボロで、逃げ回るのがやっとなんだよね》

《……わかった、ありがとう》


 声に出して事実確認をしながら九曜さんの声が更に沈んでいった。

 これ以上自分が置かれている状況を認めると心が折れてしまうかもしれない。

 狭黒さんがいま話を止めたのは、私と同じ事を感じたからだろう。


 しかし同じ2等星でここまで差があるものなのか?

 九曜さんとツィーさんが強い事は十分に分かっている。

 その二人が何もできないほど差があるなんて、何かがおかしい。

 

《これまでの経緯と、いま五月くんの話を聞いて一つの仮説を立てた。それを証明する為にも五月くんにもう一頑張ひとがんばりだけしてもらいたい》


 いま死ぬ思いをして頑張っている人に更に頑張れなんて言うのは辛い。

 でもその場に私達がいない以上は九曜さんに頑張ってもらうしかないのだ。


《オッケー。できる事はやるよ》

《そんなに難しい事ではないよ。いつだったかツィーくんに装備させた ”アレ” を使って欲しいんだ》

《アレって……すばるちゃんが初めて戦う時に買ったやつのこと?》

《そうそう。あの時にいつか使える日がくるかもしれないと言って作ったやつだよ》

《それはいいけど、多分この敵にはそんなに効果ないよ?》

《いや、私の仮説が正しければ逆転の一手になるはずだ》


 狭黒さんの逆転の一手と言う言葉がとても頼もしく聞こえた。

 それが通用すれば五月さんの状況が好転するかもしれない。

 そう思うと冷えきっていた体温が急激に戻ってくる。

 

《未明子くん。いまから五月くんがちょっとした攻撃をする。その瞬間、君の敵の動きが止まる筈なのでファブリチウスで撃ち抜いてくれ》

「え? なんで私の敵が止まるんですか?」

《説明している間に五月くんがやられるかもしれないから、私を信じて構えてくれないか?》


 九曜さんが敵に何かの攻撃をすると、私の敵の動きが止まる?

 関連性がまるで分からなかったが、リーダーがそう言うなら従うまでだ。



 こちらの敵は次第に回復してきたのか、フラフラしながらもまた突進の構えを始めた。

 同じ敵に同じ戦術が通用するとは思えない。

 今度は確実に別の突進をしてくるだろう。

 だが、本当に動きが止まるというなら撃ち抜くのは簡単だ。


《五月くん、例の武器を使用する前にカウントダウンしてくれ。それに合わせて私と未明子くんも攻撃を開始する》

《オッケー。攻撃を避ける事を優先するけど、なるべく接近して使うね》


 離れた場所で別々の敵と戦っているのに、三人で息を合わせて攻撃を仕掛ける。

 九曜さんがやられてしまわないかの不安はあるが何だか心強い。


《じゃあ行くね! ……5!》


 九曜さんのカウントダウンが始まると同時に敵がバーニアを噴かして突進してきた。

 さっきよりも突進スピードが遅いのは、こちらのビル落としを警戒しているのだろうか。

 こちらは敵の攻撃の回避は考えずにファブリチウスを撃つ事だけを考える。


「あらぁ? もう逃げなくていいのかしら!?」


 やっぱりおかしい。

 しばらく動けなくなる程の攻撃を受けたのに敵の声に余裕がある。

 どう考えたって優位ではないんだから普通はもう少し声に焦りが出る筈だ。

 

 狭黒さんの立てた仮説がどういうものか、少し分かった気がした。


「今度は逃げるつもりは無いですよ! 真っ向勝負です!」

「それなら撃ってきなさいよ! 今度こそあんたを貫かせてもらうわ!」



《……ゼロ!》


 敵の攻撃がもう少しでこちらに届く、と言うところで九曜さんの掛け声が聞こえた。

 声しか聞こえないので、向こうで何が起こったのかは分からない。

 だが……


「……キィッ!!」


 敵の、悲鳴のような耳障りの悪い声が響く。

 その声が響くと共に、突進してきた敵が本当に目の前で停止した。


 私はその瞬間を逃さず、停止した敵にファブリチウスを発射した。

 ファブリチウスの赤いビームが敵めがけて一直線に飛ぶ。


 ピクリとも動かない敵がそのビームに飲み込まれる。


 完全に捉えた。

 敵はビームの勢いそのままに背後にあるビルに叩きつけられ、ビルごと大爆発を起こした。

 


 周りの建物を巻き込んでビルが崩れる中、私は敵の反応が消滅したのを感じたのだった。



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