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第128話 The Other Side of the Wall⑪

 萩里にとって視線の先にいる相手は忘れられる存在ではなかった。

 

 大切な仲間を何人も殺され、自身も戦えなくなる程の精神的トラウマを負わされた。

 数年たった今でも悪夢となって苦しめられる存在。


 おうし座1等星のアルデバラン。


 セプテントリオンとして戦い続けていれば、いずれ出会えるかもしれないと思っていた相手がこの戦場に現れた。

 

 何故。

 いつの間に。

 どうやって。

 そんな事はどうでもよかった。


 この世で最も憎い相手が目の前に現れたのだ。

 萩里の視界には最早アルデバランしか映っていなかった。


 それは尾花も同じだった。

 自分の元パートナーを殺した忌まわしき敵。

 その敵が目の前に現れたのなら、フォーマルハウトにかかずらっている理由など無かった。




 萩里と尾花が殺意を向けている相手。

 それを知らぬ稲見はセプテントリオン側の増援が来たのだと思い込んでいた。


 萩里の猛攻から生き延びたのも束の間。

 いかにして3体の敵と戦うかを必死で模索していた。


「アルデバランッ!!」


 突然萩里が出した大声に稲見は震えあがった。


 先程までの冷静な声とは打って変わって怒りのこめられた叫び。

 それは怨嗟の悲鳴にすら聞こえた。


 あのステラ・アルマはどうやらアルデバランらしい。

 五月から聞いた話では熊谷萩里はアルデバランに仲間を殺されている。

 ならば増援ではないのだろうか。


「フォーマルハウトさん、どうしてここにアルデバランが?」

『分からん。だが稲見、もう少し距離を取った方がいいな』

「分かりました」


 フォーマルハウトの忠告を受けた稲見はゲートを使って移動。

 ドゥーベとアルデバランの姿がギリギリ視界に入る位置まで距離を取った。


「あの機体は敵の増援ではないんでしょうか?」

『その質問に答える前に君を褒めておこう。私の忠告を聞いてすぐに距離を取ったのは偉いぞ』

「え? あ、ありがとうございます?」

『その素直さと臆病さは立派な武器だ。私の性能に気持ちを引っ張られるのはいいが、自分の強みを忘れるなよ』


 フォーマルハウトに窘められて、稲見は完全に頭が冷えた。


 桔梗をさして苦もなく倒した事で調子に乗っていたのは明らかだった。

 夜明からも参謀は常に冷静でいるようにと忠告されていたのに、それを失念していた。

 

「……すいませんでした」

『分かったならいい。それよりもアルデバランだ。奴がセプテントリオン側でないのは確実だが、だからと言ってこちらの味方とは限らない。いや、仮に味方だとしても奴には近寄るな』

「味方だとしても? 危険なんですか?」

『アルデバランの固有武装は周囲を巻き込むタイプだ。下手に近づくと蒸発させられる』

「蒸発!?」

『目的が分からない以上はここでしばらく様子を見た方がいい』


 現状アルデバランに近寄る理由は無い。

 萩里がこちらを無視してアルデバランに集中しているなら割って入る必要も無い。


 それよりも稲見はこれをチャンスと捉え、元々狙っていた標的に目を向けていた。 




 トドメを刺す寸前だったフォーマルハウトを取り逃がした事など気にも留めず、心理的な視野狭窄に陥っていた萩里は今にも怨敵に飛び掛かろうとしていた。

 

 刀の柄を砕かんばかりに強く握り、アルデバランまで距離を詰めるべく脚部にアニマを集中させた。


「私が行くまで待って!」


 そこに尾花からの内部通信が入る。

 その声は萩里に正気を取り戻させた。


 復讐が頭の中を支配していた萩里は、呼び止められなければ無策で突撃していただろう。


 後方から駆けつけた尾花が隣に立ち、萩里は自分がいかに冷静さを欠いていたかを自覚した。


「大丈夫? 冷静?」

「ああ、すまない。尾花のおかげで自分を取り戻せたよ」

「OK。でも我慢しなくていいからね。私が来たからには2人でアイツをぶっ倒すよ」

「そうこなくてはな。どれだけこの時を待っていたか。みんなの仇、取らせてもらう!」


 萩里も尾花も精神状態としては最高の状態だった。


 しかし2人ともどうして突然アルデバランが現れたのか、その理由を考えようとはしない。

 更に9399世界の討伐任務も意識から抜けていた。


 アルデバランを倒す。

 その一点のみに全てが集中し、セプテントリオンとしての使命や作戦指揮などは二の次になっていた。

 



 サダルメリクがアルデバランの姿になってから、すばるは自分の感情の制御が効かなくなってきているのを感じていた。


 アルデバランの強い感情。

 それがすばるにフィードバックされていた。


 普段温厚なすばるは、目の前の敵に対して沸き続ける憎悪に流されそうだった。

 思うままに暴れたくなる感情をギリギリで抑え、何とか平静を保っていた。


「あれが、アルデバランの、目標」

『そうだ。まさかセプテントリオンになっていたとはな』

「ならば好都合、です。この姿、今まで温存させられて、来ましたからね」

『そう易々とこの姿には戻れないからな。それに自分で分かるだろう?』

「はい……これは、わたくしへの負担が、強い」

『ははは。普段の私みたいな喋り方になってるな。悪いがそのまま耐えてくれよ。すばるが私の感情に支配されると戦いが雑になる。お前はいつも通り冷静に私を操縦するんだ』

「はい。その、つもり、です」

『なあに心配するな。私の力にお前の技術が合わさればあんな連中すぐに始末できる。さっきも言ってただろ? パワーと武術のハイランダーとか何とかって』

「ハイブリッド、です。デッキにカード1枚差しのロマンは、捨てて下さい」

『思ったより余裕そうで安心した』


 アルデバランが胸の前で両腕を叩き合わせる。


 すると、背後に大きな物体がいくつも浮かび上がった。

 それはサダルメリクだったもの。

 殻を破るように脱ぎ捨てた、両腕、前後に別れた胴体、頭部、それに2枚の大盾が浮き上がり、アルデバランを守るように周りを囲った。


『ではすばる。敵を掃滅しよう』


 アルデバランが右腕を敵に向けると、浮いていたサダルメリクの破片(パーツ)が敵に向かって飛んで行った。


 2枚の大盾は言うに及ばす、サダルメリクの体はかなりの硬度を誇る。

 それを弾丸のように飛ばせば立派な武器となる。


 7つの破片は萩里と尾花を狙い突進した。


 その巨大な飛来物に対して尾花が防御壁を張る。

 銀色の膜に衝突したサダルメリクの破片は衝撃を散らされて一旦止まるが、再び動き出し何度も膜に衝突を繰り返した。

 

「プレヤデス・スタークラスターだと!?」

「あれ? これって前に戦ったステラ・カントルが作った能力じゃなかった? 何で再構成されたアルデバランが同じ能力を使ってくるの?」

「分からない。しかもこれはサダルメリクのボディパーツだ。撫子がサダルメリクを倒したという事なのか?」

「でもさっきから撫子と連絡が取れないよね?」

「理由は分からないが、今回はこのボディパーツが武器らしい」


 サダルメリクの破片は萩里と尾花を取り囲み、全方位から衝突を繰り返す。


 巨大な質量による衝突は凄まじい衝撃を与えているはずだが、メラクの銀膜はそれを物ともしていなかった。


「あの銀色の機体、完全防御タイプ、のようですね」


 自身が防御タイプの機体を操るすばるは、このまま攻撃を続けても銀膜を破る事はできないと判断した。


 アルデバランも同じ判断を下し、新たな武器を使うように指示を出す。


『ランパディアースを使う。これをアイツらの足元に突き立てろ』

「承知、しました」


 アルデバランの背中から突き出ている4つの円柱。

 その内の1つを掴み取る。

 

 円柱は細長く、先端が少し膨らんでいた。

 その膨らんだ部分から炎が吹き出ている。


 形状の近い物をイメージするならファンタジー世界の冒険者が、洞窟を探検するのに使う松明のような形だった。


 すばるはその松明を片手に、敵に向かってアルデバランを走らせた。


 メラクの張った防御壁の中で破片から身を守っていた萩里と尾花は、アルデバランが突進してくるのに気がついた。


 手には松明のような武器を持っている。

 それがどういう武器なのかを知っている2人は、全身の毛が逆立つような恐怖を感じた。


「退避する!」

「了解! 防御壁を張ったままにするから私からあまり離れないでね!」


 敵の目の前までやってきたすばるは、アルデバランが手に持つ松明を地面に突き立てた。


 松明が突き刺さった地面が一瞬で赤く染まる。


 ――次の瞬間、地面が融解した。


 松明が刺さった場所から前方に向かって放射状に地面が融解。

 道路を舗装しているアスファルトも、その下にあった土も、萩里と尾花の立っていた場所を含めた広範囲の地面がドロドロの赤い溶岩に変化した。



 ランパディアース。

 アルデバランが元々持っている固有武装。


 背中に備え付けられた4つの松明は、アニマを込める事で先端から出ている炎の温度を爆発的に上昇させる事ができる。


 瞬間的な最大温度は1600万度。

 太陽の核と同等の熱を持った炎は触れた物を跡形もなく蒸発させる。


 それは最早炎と呼べるのかは別の話だが、最大火力を出せば周囲だけではなく使用者にまで危険の及ぶ固有武装だ。 



 地面を溶岩の海に変えられ、やむなく萩里と尾花は空に退避した。


 尾花の張る防御壁がドゥーべとメラクを守り続けてはいるが、相変わらずサダルメリクの破片は銀膜に対して衝突を繰り返していた。


「このままじゃ埒があかないな。萩里、行ける?」

「無論だ」


 萩里が右手に持つ刀に加え、左手の刀も抜いて構えた。

 それを見た尾花は防御壁を解除する。

 2体を覆っていた膜が消えると同時に、尾花はメラクの脚部ブースターを使ってその場から高速離脱して行った。


 プレヤデス・スタークラスターの攻撃対象範囲には萩里だけが残り、サダルメリクの7つの破片は全て萩里に向かった。


「プレヤデス・スタークラスターは最大7つの武器を同時に操る能力。しかしその能力は以前私に破られたのを忘れたのか!」


 ドゥーべの背中の装甲が6つに割れ、折りたたまれていた部分が展開された。

 

 折りたたまれていたのはサブアーム。

 それぞれが物を掴める腕だ。


 6本のサブアームそれぞれが背中の刀を抜いた。

 8本腕で8本の刀を操る。

 これがドゥーべの固有武装だった。


「愛染明王陣!!」


 萩里はこの固有武装に6本腕の神仏の名前を付けた。

 本来の名称は別にあるのだが本人的にはこの名前が馴染むらしい。


 サダルメリクの破片がドゥーべめがけて突進すると、腕の1本がその破片を刀で受け止め力の方向をズラした。


 破片はドゥーべを外れ飛んでいき、再び突進を繰り返すが、萩里は8本の腕を使ってそれを全て捌いていた。


「例えどれだけ硬い物体だろうが私には通用しない!」


 腕が8本に増えたところでそれを操る人間は1人。

 あらゆる方向から迫ってくる破片全てに対応できるのは萩里の尋常ならざる動体視力の賜物だった。


『あいつまだあの固有武装に変な名前をつけてるのか。前の仲間からはすこぶる不評だったくせに』

「とは言え、流石セプテントリオンの、リーダーだけありますね」

『すばる!』

「分かって、います」


 すばるは破片を操作して7つの内3つを呼び戻し、その3つの破片を高さを変えて空に並べた。


 アルデバランを1つ目の破片まで跳躍させると、そこを足場にして更に次の破片まで跳躍。

 破片を即席の階段として飛行する萩里まで近づいたのだった。


「アルデバラン。貴様が何故ここにいるのかはどうでもいい。しかし私の前に現れたからには覚悟してもらうぞ!」

『ああ、憎たらしいその声。まさか月の犬になっているとは思っていなかった』

「好きに呼ぶがいい。それがお前がもう一度敗北する相手の名前だ!」


 萩里が左右の刀で斬りかかる。

 

 すばるは破片を2つ操作して自分の足場とした。

 そこで背中のランパディアースをもう1本取り出し、2本の松明を使って敵の刀を受け止める。


 さらに残った5つの破片を操作して萩里へと向けた。

 萩里も5本の腕を使って破片を受け流し、残った1本の腕で斬撃を繰り出した。


「こちらが一手多いようだな!」


 ドゥーべの8本の腕に対して、アルデバランは破片5つに2本の松明。

 差し引き刀1本分の攻撃に対応できる手が無い。


『すばる!』

「はい」


 その1本の刀に対して、すばるは蹴りを打ち込んだ。


 手が足りなければ脚を使えばいい。

 アルデバランの脚部はサダルメリクの脚部を纏ったまま。脚部装甲とすばるの見切りがあれば刀を止める事など容易かった。


 全ての攻撃を受け止めたところで、すばるは残った足で踏み切り、萩里に体当たりを仕掛けた。


「何!?」


 小型のドゥーべに大型のアルデバランが衝突する。

 ドゥーべは飛行の制御を失い、アルデバランと共に地面へと落下した。



 落下しながらすばるはランパディアースを萩里に向けてアニマを込めた。


 先端の炎の温度が上昇して色が変化する。

 

 無論、こんなところで最大温度まで上昇はさせない。

 それでもステラ・アルマを破壊するには十分な威力の炎だった。

 

『じゃあな』


 青白い炎をまとった松明がドゥーベに突き出される。


 その時、脚部ブースターによる高速移動でメラクが突進してきた。


 メラクは自身の周りに銀色の膜を張った状態でアルデバランにぶつかり、その巨体を吹き飛ばした。


「私を忘れてもらっちゃあ、困るな」


 メラクは銀幕を解除し、落下するドゥーべの体を受け止めた。


「すまない。助かった」

「いいって事よー」


 尾花は再び銀色の防御壁を展開し、コントロールを取り戻した萩里はドゥーベを飛行させた。 


「でも今がチャンスだ。このまま突っ込もう。接近したら後は任せるね」

「分かった。今度こそ奴を叩く」


 8本の刀を構えたドゥーべとメラクはアルデバランに向かって飛行した。



 メラクに吹き飛ばされたすばるは着地すると、サダルメリクの破片を呼び戻した。


 ランパディアースを背中に収納し、体の周りに破片を鎧のように纏わせる。


『すばる。あの8本腕はもう一つ固有武装を持っている。背中の腕が生えている装甲部に砲台があるんだ』

「完全な接近型に見せておいて、奥の手は、射撃ですか」

『砲台に刀を差し込む程威力が上がる。6本差し込むとルミナスの砲撃とほぼ同等だ』

「では、回避を……」

『しない』

「え?」

『あれやれ。梅雨空がやってた武器にアウローラを集中するやつ。大盾(ガニメデス)にアウローラを集中させろ』

「いえ、わたくし、それはできず……」

『プレヤデス・スタークラスターで操ってる武器は体の一部みたいなもんだ。思った通りに動くだろ? 体をアウローラ状態にできるなら今のガニメデスにもできる』

「ぶっつけ本番、ですか。厳しいですね」

『やれ。やれなきゃ死ぬ』


 アウローラを武器に集中させるのは梅雨空だけの特権だった。

 すばるも試してみたが成功した事は一度もない。

 それを初めて操縦する機体で、初めて使う能力に付与するなど無茶振りが過ぎる。



 突進してくるドゥーべの背中の装甲が開き、そこから砲身が出てきて右肩にセットされた。


 それはアルタイルの持つビーム砲のようなフォルムではなく、歴史の資料館で見るような ”大筒” をイメージした砲身だった。


 背中のサブアームが握る6本の刀が、大筒の側面に差し込まれていく。


 見た目は鎧武者。

 武器は刀。

 飛び道具は大筒。

 何ともコンセプトが一貫している。


 これで十字槍でも持っていれば完璧だ、とすばるは感じていた。

 しかし見惚れている場合では無い。

 大盾をアルデバランの正面に回し、その他の破片で体を覆った。

 

 アルデバランが守りの体制になったのを見た萩里は、大筒の照準をアルデバランに合わせた。


「前回トドメとなった攻撃を正面から防御か。面白い。やれるものならやってみるがいい!」


 ドゥーべの大筒にエネルギーがチャージされていく。

 発射可能なエネルギーがチャージされたのを見た尾花は、防御壁を解除して離脱した。


「ドゥーべが誇る最大火力の砲撃 ”貪狼(どんろう)” 食らうがいい!!」


 右肩の大筒から放たれたビームは炎のように赤く、プラズマのようなものを纏っていた。

 最大火力と謳うだけあり周囲の空気が歪む程の熱を持った砲撃だった。


 高威力。高弾速。加えて本来であれば長射程なのだろう。

 それをわざわざ接近して撃つのは少しでも威力を上げるため。

 完全にアルデバランを焼き尽くすつもりの攻撃だった。


『すばる!』

「はい!」


 アルデバランの掛け声ですばるはアウローラを盾に集中させた。


 結果だけを言えば、それは成功した。


 盾に赤色の模様が浮き上がり、まるで燃え上がっているかのように赤色のエネルギーを纏っていた。

 この盾を貫ける攻撃などありはしない。

 そう思わせる程の力強さを感じさせた。


 しかしすばるにとっての心配事は盾の強度では無く、アウローラを集中させる難しさだった。

 

 少しでも自分の体と違うものだと認識してしまえばそれでアウローラが解除されるのが分かる。

 この状態を維持するだけでも相当の負担があった。


「梅雨空さんの才能、伊達ではありませんね……」


 敵の放った高威力の赤いビームが、同じく赤いエネルギーを纏った盾にぶつかる。


 ビーム自体は盾の表面で弾かれていた。

 だが衝撃は抑えきれない。

 プレヤデス・スタークラスターだけでは支え切れず、すばるは盾を両腕で支えた。


 盾を弾かれたら一貫の終わり。

 この威力のビームを浴びたら1等星といえども一瞬で蒸発するだろう。


『いいぞ! このまま耐え切ったら反撃だ』

「なんとも、人使いが、荒いですね」


 ただでさえアルデバランから流れ込む感情に抵抗してアウローラを維持しているのに、その上反撃にまで気を回さなくてはいけない。

 すばるでなければ泣き出したくなる程の精神的ストレスだった。


『弱気になってるんじゃねーよ。さっきみたいに掛け声でも出して気合い入れな』

「はあ……分かって、いましたが、その姿になると、まるで別人、ですね」

『サダルメリクの姿はあいつの人格が強く出るからな。悪いがこっちが主人格だ』

「ああ、はやく、いつも通りのメリクを、愛でたいです」

『じゃあ早くコイツらを片付けるんだな。ほら、いくぞ?』

「承知、いたしました」


『「チェストーーーッ!!」』


 すばるとアルデバランが声を合わせて叫んだ。


 盾を支える腕に力を込めて衝撃に耐える。

 すばるの全身に凄まじい疲労感が襲い、額から流れる汗が目に入っても、なお耐え続けた。


「……ぐううっ」


 良家のお嬢様には似つかわしくない唸り声が出る。


 そんな事を気にしている余裕も無く衝撃に抗い、操縦桿を握る両手の感覚が無くなった頃、ようやく敵のビームが途切れた。


 それと同時にアウローラの維持が効かなくなり盾から赤い模様が消える。


 さらにプレヤデス・スタークラスターも一時的に解除され、サダルメリクの破片は地面に落下した。


 敵の最大火力を何とか土壇場の技で耐え切る事に成功したのだ。


 だからと言って戦いが終わったわけではない。

 それはお互いに分かっていた。


 この攻撃は本命の為の布石でしかないと。



「アルデバランッ!!」


 萩里はビームを撃ち切った後、接近して8本の腕で斬り掛かってきた。


 すばるも再びランパディアースを取り出し敵に向かって突き出した。

 

 ランパディアースの先端がドゥーべのサブアームを捉え、左側3本の腕を全て消失させた。


 そして萩里の刀は、アルデバランの左腕を斬り飛ばしていた。


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