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第118話 The Other Side of the Wall①

 結果だけを見れば九曜さんの希望が通ったらしく、新年を迎えた1月にセプテントリオンの襲撃はなかった。

 

 だから私達はその時間をフルに利用して特訓に明け暮れた。

 格上の敵と戦うのには心許ない期間ではあったけど、何とか形になるところまでは仕上げられたと思う。


 そして1月の終わり。

 私達の世界の管理人であるセレーネさんの元へ月からのメッセージが届いた。

 

 戦闘の日程と、セプテントリオンが勝利した場合は私達の世界を消滅させるという通達だった。

 

 負けて世界が消滅するのはいつもと変わらない。

 でも今回は戦力のバランス調整が一切考慮されない。

 単体でボス役を任される敵が7人も攻めてくる、いわば勝ち目のない戦いというのが大きな違いだ。

 

 しかもこちらは狭黒さんが入院した事でアルフィルクが戦闘には参加できない。

 最終的に私、九曜さん、暁さん、双牛ちゃん、ソラさんの5人でセプテントリオンを迎え撃つ厳しい戦いとなったのだった。




「以上が ”作戦” の確認です。これまで何度も反復してきたので今更確認の必要も無いかもしれませんが念の為お伝えしました」


 オーパ秘密基地の展望ホール。


 集まったみんなの前で話すのは双牛ちゃんだ。

 狭黒さんが参加できなくなった以上、作戦立案・指揮は彼女が単独で務める。


 双牛ちゃんの表情は重かった。

 それもそうだろう。自分の采配しだいで世界が終わるかもしれないのだ。


 しかも今回は圧倒的不利をひっくり返すところから臨まなければならない。

 本来であれば逃げ出してもおかしくない程のプレッシャーを、持ち前の責任感で抑えてくれているのだろう。


 逆に他のメンバーいつも通りだった。

 すでに何度も死線を越えてきているし、死ぬ覚悟も、世界の消滅への覚悟も決まっている。

 いまさら戦いに際して肩に力が入るようなメンバーではなかった。


「最初は黒馬さん狙いでいいんだね?」

「はい。犬飼さんはまず黒馬おみなえしとの戦いに注力して下さい」

「それなりに準備はしたけど、それでも勝てるかどうか分からないよ?」

「そうなったらそれは仕方がないです。とにかく犬飼さんが1対1で戦える環境を整えるのが先決です」


 双牛ちゃんの提示した "立ち回り" はシンプルだった。

 一番戦闘力の高い私を殲滅役として残りのメンバーはサポート役に回ってもらう。

 私は最初の敵を倒したら次の敵と戦う。

 その繰り返しだ。

 

 もちろん個別での戦闘も想定してはいた。

 でも遥か格上の相手に1対1で決着をつけていくのは現実的ではない。

 それならば一点突破を繰り返していこうという方針だ。

 

 無茶な戦い方だというのは双牛ちゃんを含めて全員が承知していた。

 それでも圧倒的な戦力差をひっくり返すには、そういう戦い方しかないのも全員が納得していた。

 

「わたくし達がどれだけ時間を稼げるかがポイントですね」

「アタシの方に食いついてくれれば3体くらいはいけると思うんだけどな」

「五月さん、凄い自信ですね?」

「敵の攻撃を避け続けるだけなら全然いけるよ! そのまま戦闘エリアから離せれば儲けものだし」

「まあ時間を稼ぎながらでも倒せそうなら倒しちゃえばいいのよ」

「言うねー! ソラちゃんの方が自信あるくない?」

「ビビってもいい事ないからね。それに絶対勝てるって余裕こいてるような奴等の鼻を明かしてやりたいじゃない」

「言うは易しですが、それくらいの勢いが無いと勝ち目はありませんからね」


 暁さんも九曜さんもソラさんも気合は十分だった。

 特訓で戦い方の幅を増やせたのが自信に繋がっているみたいだ。


 特に九曜さんはこの中で一番特訓の手応えを感じていた。

 私が考えた戦法が予想外に馴染んだみたいで、訓練期間中のレベルアップは目を見張るものがあった。


 敵を複数担当するというのも自信に裏打ちされた言葉なんだろう。



「何を言っているの? 長い方が似合ってるでしょ?」

「絶対短い方が可愛いよ!」


 私達が戦闘について相談している中、何やら言い争いが聞こえてきた。


 声のした方を見ると、少し離れたところでミラと鷲羽さんが向き合って火花を散らしていた。

 傍らにはアルフィルクとサダルメリクちゃんも寄り添っている。


「未明子は短い髪の方が顔立ちがよく見えるんだよ!」

「せっかく綺麗な髪なんだから長い方がいいわよ」

「それは鷲羽さんの好みでしょ? 私は客観的に見て未明子が魅力的に見える方を言ってるんだよ」

「私だってより魅力的だと思ってるわよ」


 どうやら私の髪の長さについて揉めているようだ。


 実はミラと再会した時に一番最初に言われたのが「未明子の髪が長い」だった。

 その時は全然知らなかったんだけど、ミラはボブだった頃の私の髪型が好きだったらしい。


 切るのが面倒で伸ばしていただけなので、ミラに短くしようと言われたのを機に元の長さに戻そうと思っていたら、今度はロングヘア好きの鷲羽さんから待ったがかかった。


 それからと言うもの、ミラと鷲羽さんは私の髪の長さについて度々議論をしていた。


 さっきアルフィルクが私の髪についていた埃を取ってくれた時にまた髪が伸びたわねなんて口に出したものだから、それをキッカケに2人の心に火がついてしまったようだ。


「どうせあれだよね? 未明子の髪の長さは私との時間の証なんて思ってるんだよね?」

「別にそんなこと思ってないわよ。……いえ、その考え方はとても良いわね。ますます長い方が好きになったわ」

「あー! 余計なこと言っちゃった!」

「何でミラは自爆してるのよ」

「アルフィルク! アルフィルクだって未明子は短い方が好きでしょ?」

「そうね。私は短い方が好みかも」

「ほら! 短い派は圧倒的支持を受けております」

「圧倒的って一票だけじゃない」

「私は、未明子さんは、長い方が好き」

「よくも裏切ったねサダルメリク!」

「サダルメリクは女の子はみんな黒髪ロングが好きなだけでしょ?」

「それの、何が悪い」

「すばるさん! すぐに髪を短くして! サダルメリクを改宗させて!」

「わたくしを巻き込まないでください」


 我が事ながらこのタイミングで騒がれているのは申し訳ない気持ちで一杯だ。


 九曜さんはやり取りを微笑ましく見てるけど、ツィーさんは呆れ顔で私を睨んでいる。


 いや、私がけしかけた戦いではないですからね?


「お前らいい加減にしておけよ。稲見が真剣にやってくれてるんだぞ?」

「いえ、あれくらいワチャワチャしててくれた方が私も落ち着きます」

「それにしたって緊張感なさすぎだろう。アルフィルク、お前も夜明のそばにいなくていいのか?」

「だってお見舞いに行ったら戦いを見届けて来いって追い返されちゃったんだから仕方ないでしょ?」

「じゃあ大人しく見守ってろ。ワンコの髪型なんて今のままでいいだろ」

「え!? ツィーも長い方が好きなの!?」

「ミラ、お前もアルフィルクと一緒で戦いには参加できないんだから大人しくしてろ。アルタイルが集中できないだろ」

「つ……ツィーが私より鷲羽さんを気遣ってる? うわぁん、いつの間にかここは敵だらけだよぉ」

「何なんだミラのそのテンションは。相変わらずアニマ酔いしてるのか?」


 ツィーさんの言う通りだった。

 ミラは生き返ってからずっとテンションが高い。

 以前アニマに酔っていた時とほぼ同じ勢いだ。


 そりゃ今は一緒に暮らしてるからしょっちゅうキスもするし、えっちもする。

 私のアニマの供給量がミラのキャパシティを超えないように気を使ってるつもりでも、今までの寂しさを取り戻すようにイチャついてるから、そのせいでまた酔わせてしまっているのかもしれない。


 それは反省しなくてはなんだけど、それにしたってミラってこんな騒がしい女の子だっけ。

 テンション高い時は高いけど基本的にはおしとやかだったような……。

 鷲羽さんへの敵対心に引っ張られてるんだろうか。



「あ、ようやく管理人が来たわね」


 戦闘フィールドの準備が整ったのかセレーネさんが奥の部屋から出てきた。


 それを見るなりソラさんがセレーネさんの元に駆け寄って行く。

 

「管理人さん。この戦いに私達が勝ったら、そのまま月に攻め込むのはアリなの?」

「羊谷が恐ろしいことを言い出したな。それはワタシには判断できん。これまで討伐名目のセプテントリオンが敗北した記録が無いからだ」

「じゃあそうやって月が混乱してる内に攻め込んだら楽しそうね。セプテントリオンがいなくなったら月に戦力は無いんでしょ?」

「月には防衛力として5万体のルミナスが配備されておると説明しただろう」

「あんな人形、ムリとフェルカドさんがいれば問題ないわよ!」

「え!? ビームを跳ね返せるフェルカドはともかく、わた……ボクは自信ないよ!?」

「攻撃を返せると言っても私の能力はアニマの消費が激しいので、全ての敵と戦うのは難しいかもしれません」

「大丈夫よ。セレーネを叩くまでのルートを確保できればいいんだし。セレーネまで辿り着いたら後は楽勝なんでしょ?」

「月の女神に戦闘力が無いのは間違いないが、ワタシはどうこう言える立場ではない」

「でも私達が月の女神をぶっ飛ばしちゃったらファミリア達はどうなるのかしらね?」

「それを聞かれても分からんと答えるしかないな」

「梅雨空さん。色々気になる事はあるかと思いますが、まずはセプテントリオンとの戦いに集中しましょうか?」

「あ……はい。ごめんなさい」


 ソラさんが暴走しそうな気配を漂わせていたら、双牛ちゃんが有無を言わせない圧力で黙らせた。

 最年少なのに妙にリーダー感があるんだよな双牛ちゃんって。


 ソラさんから解放されたセレーネさんは、やれやれと軍服の襟を正していた。

 まさか部屋から出てくるなり絡まれるとは思ってなかったんだろう。


 そのままみんなの様子を見始めたので、今度は私が絡ませてもらおうと思って近づいた。


 ところが私が近づいてくる事に気づいたセレーネさんは、赤い目を大きく見開いて部屋に戻ろうとしたのだ。


「待ってください。何で逃げるんですか?」

「お前がそういう顔をしている時は決まって碌なことがない」

「失礼な。私が何をしたって言うんですか」

「ここのところお前がワタシを見る目が怖いからだ。で、何の用だ?」

「今回の戦い、もしかしたら私は死ぬかもしれません」

「全然そんな風に思っておらんくせに」

「だから死ぬ前にセレーネさんの本名が知りたいんです」

「人の話を聞け犬飼」


 ずっと気になっていたセレーネさんの本当の名前。

 暁さんは聞けば教えてくれると言っていた。

 何度か聞こうとして逃げられていたけど、このタイミングならば逃げられまい。


 セレーネさんが部屋に戻れないようにじりじりと壁に追い込んでいく。

 帽子の下に隠されている顔を知っているから何かいけない事をしている気分だ。


「お願いしますセレーネさん。あと好きな食べ物も教えてください」

「何でお願いしながら質問が増えるんだ」

「私の本名と好きな食べ物も教えるので」

「犬飼未明子だお前の本名は。好きな食べ物は良く知らんが甘い物だろ?」

「さすが私の事を良く存じていらっしゃる。で、本名と好きな食べ物は?」

「圧が強い」


 いつもなら誰かに止められそうなシチュエーションだけど、今回はそれぞれで話し込んでいるので誰かが割り込んでくる気配もない。 


 来た。今がチャンスだ頑張れ未明子。


「年貢の納め時か。まあ、すでにすばるにも話したから構わんか」

「あと何で暁さんだけ名前呼びするんですか?」

「ワタシの個体名はな……」

「話を聞いてください」


「シャケトバだ」

「……え? なんて?」

「シャケトバだ。シャケトバ・セレーネ。それがワタシの個体名だ」


 シャケ……トバ……。


 って何だっけ? 

 何かお父さんから聞いたことあるような。

 鮭のジャーキーみたいな物だっけ。


「シャケトバ・セレーネ……え、結局セレーネさんなんですか?」

「セレーネはファミリア全員が名乗る。いわゆるファミリーネームだな。シャケトバが個体名になる」

「何故シャケトバ?」

「シャケトバが好きだからだ」

「へ、へぇー。あんな可愛い顔してるのに、渋いお名前ですね」


 そう言うとセレーネさん、いや、シャケトバさんは大きなため息をつきながら帽子を脱いだ。


 帽子の下から出てくる幼い女の子。

 何なら妹のほのかと変わらないくらいなんじゃないだろうか。

 その幼女がクリクリの赤い大きな目で私を睨んだ。


「お前ピーマン好きか? ピーマンってかわいいか? かわいくないだろ? ジャガイモってかわいいか? ニンジンってかわいいか? 別にかわいくないよな? でもワタシがニンジン好きでキャロットって名前だったらかわいいって言うんだろ?」

「ああ、それは可愛いですね」

「じゃあ何でシャケトバが駄目なんだ!?」


 凄い勢いでまくしたてられてしまった。

 どうやら名前はシャケトバさんにとってデリケートな部分だったらしい。


「駄目と言うわけでは……」

「みんなそう言うんだ。他のファミリア連中もシフォンとかトルテとか好きなお菓子の名前を付けている奴が多い。私だって好きな食べ物の名前をつけているだけなのに……別に名前なんだからかわいくなくてもいいだろ!?」

「ええ……」

「容姿と名前を一致させる必要なんてない。ワタシがシャケトバ好きでシャケトバと名乗って何が悪い。何が ”かわいいんだからもっとかわいい名前にすればいいのに” だ。余計なお世話だ!」


 いやその言い分がすでに可愛い。


 なるほど。シャケトバさんが妙に甘い物を嫌っていたのにはそういう経緯があったのか。

 単純にしょっぱい物が好きなだけかもしれないけど。


「犬飼さん、やはりシャケトバさんの地雷を踏み抜きましたね」


 シャケトバさんの声に反応してやって来たのは暁さんだった。

 眉間に皺を寄せながら、やってしまいましたね……と言わんばかりの顔をしている。


「誰だって名前を侮辱されたら傷つきます。犬飼さんのことですから渋い名前とか言ったのではありませんか?」

「おっしゃる通りです。でも傷つけるつもりなんて……」

「そもそも犬飼さんはシャケトバさんに強く迫り過ぎなのです。気になる相手を知ろうとするのは悪くありませんが迫られる相手の気持ちも考えてくださいね?」

「ご、ごめんなさい」


 確かに暁さんの言う通りだ。

 私は妙にシャケトバさんの事が気になるからつい強く出てしまう。

 シャケトバさんだって女の子なんだから強引に迫られたら怖いよな。


 そう反省していると、暁さんがシャケトバさんを守るように抱きしめて頭を撫でていた。

 シャケトバさんも特に抵抗せずに、されるがままになっている。


 え。何で。羨ましい。

 この2人いつの間にそんな距離感になってたの?

 

「犬飼は今後ワタシの半径50センチ以内に近寄るの禁止な」

「50センチだと手が届いちゃいますよ」

「1メートル!」


 シャー! と猫のように威嚇される。


 帽子を被ってる時は見えないだけで、結構表情豊かな人なんだなシャケトバさん。

 今度お詫びにシャケトバを差し入れしよう。


 あ、何だかシャケトバさんって可愛い響きに思えてきた。



「さて、それでは稲見。そろそろ仕切りをお願いします」


 暁さんに名指しされた双牛ちゃんが頷いた。

 流石に騒いでいたメンバーも話をやめて双牛ちゃんに注目する。


 双牛ちゃんはみんなを見回すと、良く響く声で話し出した。


「今回、敵は私達を殲滅するのが目的です。勝つ以外に生き残る方法がありません。ここまでの準備でどの程度抗えるか分かりませんが、それでも勝つしかないんです」


 例えばこの戦いをテストに例えた時、私達に求められているのは100点満点だ。


 98点でも99点でも駄目。

 たった一問ミスがあれば私達は負ける。


 しかも100点を取って初めて勝利側に振り子が揺れる。

 満点ですら勝利を約束するものではない。


 そんな戦いに「勝つしかない」と言葉を送る双牛ちゃんの表情は暗かった。


 狭黒さんもよく言っている "作戦担当は戦いの前が一番の戦い" その意味では双牛ちゃんの戦いはすでに終了している。

 後はそれを完了させること。

 それには私達が頑張るしかない。


 ならば双牛ちゃんの不安を取り除く意味もこめてここで一発、大見得でも切ってみようかな。


 などと思っていると……

 

「だから勝ちましょう! 大丈夫です。私、この後の打ち上げのお店を予約してきました!」


 双牛ちゃんから予想だにしない言葉が放たれた。


「ツィーさんにも納得いただけるように焼肉の食べ放題です」

「マジか!!」

「はい。ちゃんと人数で予約しているので誰も死なないでくださいね!」


 私が不安を取り除くまでも無く、まさかのドヤ顔をお見舞いされてしまった。


 ああ、すでに双牛ちゃんはどっぷりと私達の仲間になっていたのだなぁ。


「打ち上げ会場で犬飼さんの髪の長さ選挙も行いますからね! 本当に誰か死なれると困りますので!」

「それ必要!?」

「必要ですッ!!」


 双牛ちゃんの謎の激励でみんな大笑いだった。


 この雰囲気が私達。


 どんな結果になろうとも、これがチーム・イーハトーブの空気だ。


「だから皆さん、()()()()()()()()()()()()()」 




 準備が整ったメンバーからシャケトバさんの用意してくれたゲートに入っていく。


 私は出発前にミラとアルフィルクのところに行った。


「じゃあミラ、アルフィルク。行ってくるね」

「うん。死なないでね未明子」

「夜明の分までお願いしたわよ」

「任せておいて!」


 最後に一度だけミラを抱きしめる。


 たっぷりとその体温を感じた後、私は鷲羽さんと一緒にゲートに入った。






 光のトンネルを抜けた先は近未来を感じさせるような街だった。

 高いビルやショッピングセンター、モノレールの駅まで見える。


 西東京の大きな街はあらかじめ調べておいたから見覚えのある場所だった。


 ここは立川駅のすぐ近くだ。


「いい場所です。手頃なビルもたくさんありますし、近くに広い公園もあります」

「今回に限ってはみんな街中の方が戦いやすいか?」

「私と鷲羽さんは広い場所の方が都合がいいので、その公園の方で戦いますね」

「じゃあアタシ達はそっちに敵がいかないように頑張ろっか」

「ムリ、ここならいけそう?」

「うん。いい立地かも。結構面白いかもしれない」

「私達も、ここなら、やり甲斐がある」

「ではみなさん、素早く変身して準備に取り掛かりましょう」

「「「ラジャー!!」」」


 ちなみにいま仕切ったのは暁さんだ。

 この場所に作戦担当の双牛ちゃんはいない。

 勿論、双牛ちゃんだけではなくフェルカドさんもいない。


 ここにいるのは私と鷲羽さん、暁さんとサダルメリクちゃん、九曜さんとツィーさん、そしてソラさんとムリちゃんだけだ。

   

 これも双牛ちゃんの作戦だった。

 こういう盤外戦術みたいなのは狭黒さんのお家芸だと思っていたのに、なかなかどうして双牛ちゃんも軍師の才能を感じさせる。

 

 私達は手早く変身と乗り込みを済ませると、それぞれ作戦を実行する為の準備を始めた。


 双牛ちゃんの考えた作戦。

 作戦と言えば聞こえはいいけど、これは双牛ちゃんの考えた悪巧みだ。


 悪巧みならお手の物。

 戦いの準備とは思えない程みんな嬉々として準備を進めた。



 私の準備が一番早く終わったので暁さんの準備を手伝った。

 その準備も完了して、他の人の準備を手伝おうとしたところで北側に見えていた境界の壁が消え始める。


 それと共に、空に7つの巨大なゲートが現れた。

 

「ソラさん、セプテントリオン来ますよ!」

「えー!? もう来たの!? せっかちな奴等ね!」


 ソラさんの準備だけ完全には終わっていないようだったが時間切れだ。

 ここからは敵にこちらの作戦を悟られないようにしなくてはいけない。


 空に現れた7つのゲートからそれぞれステラ・アルマが姿を現す。

 

 それは月の討伐隊の名に恥じぬ、荘厳な機体の集団だった。

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