まだ世界が目覚める前に
虚空より現れたそれが見たのは灰色の世界であった。
「え?あれ何だこれは、どこが上で何処が視界がぼやけて」
ゴツゴツとしたた……小石の感触。
「あれ? 石?アスファルト?」
屋外? 足下は、砂っぽい。なら、ここは外なのか。少なくとも室内であるはずがない。
じゃあ、どこだ、視界は霧に覆われここが何処かもわからずひ放り出された。
「グッ!?」
足を滑らせ数メートルほど砂利と共に滑り落ち、舞い上げた砂煙に大きく咳き込む。
「何なんだ此処は。」
そうは言ってみるも状況はかわらない、僕は途方に暮れ座り込んだまま周囲を見渡す。
一寸先も見えぬ灰色の靄、不安定な足場、せめて明かりでもあればとため息をこぼす。
「「「ドドーン」」」
大地が大きく揺れ遥か遠くが明るくなった、地面が火を吹いたのだ。
「ヒィ!!」
僕は咄嗟にその場に伏せた。
どれ程時が経っただろうか、揺れが収まった頃を見計らってその場を逃げだろうと四つん這いで這うように逃げ出す。
「「バキバキバキ」」
僕は大木の下敷きになってしまった、地面も樹皮も固くもがく隙間もない、大理石の様に冷たい土と大樹に挟まれ眠りに落ちた。
次に目を覚ましたのは、龍の口の中であった。
バリバリと地面ごと倒木を食う龍の口の隙間から地面に落ち、その根の様な足から逃れるよう逃げ出した。
偉大な俺はこの世界をさ迷った、どれ程時がたったかは分からない、差異が無いが故に時間を重ねることが出来ない、ここには何もない、砕けぬ岩と朽ちぬ大樹、滅びぬ龍ばかりがあった。
「寒くはない、だが熱が無い、それに気が付いたのはこの世界に熱が生まれた時だった。」
降り注ぐ星が大地を砕き、割れた大地から熱が噴き出した。
これまでも同じことがあったが、僅かな差異も直ぐに冷める程度の物でしかなかった、それは一つの世界の終わりとなり、地に在るだけの龍が翼を持った。
この世界がまだ目を覚ましたばかりの頃、俺がこの世界に発生した時代の出来事だ。