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全て先輩の思い通り  作者: 白月綱文
6/13

1-5

その日から土日を挟んでの月曜日。休日を2日挟んで心身ともに休むことができ、金曜日よりもゆったりとした足取りで学校へと向かう。

ただ今日からは平常授業が始まるので気を引き締めても行きたい。

校門についた僕は玄関で靴を履き替えて教室へと向かう。

そこまではほんのり浮かんでいた不安を裏切るように何も無かった。そう、教室に入るまでは。

引き戸を開いて自分の出席番号の席へと座る。背負っていたリュックも机の横に置いて、本でも読もうと思った時に、恐らく度々目に入ってはいたもののはっきりと認識していなかった2人の存在に気が付いた。

すなわち、何故か仲良さそうに話をしている妹さんと聡太郎の2人に。

聡太郎に至ってはいつもギリギリの時間に来るはずだし妹さんと聡太郎に接点はなかったと思うから僕は凄く混乱した。

聡太郎はまず女性関係に置いてグイグイ行くタイプじゃない。クラスに打ち解けて中心の方にいるような人ではあるけどちゃんとそういうのは弁えてるはずだ。

まだ性別の垣根が低かった小学生とかの頃ならまだしも、仲良く女子と話しているなんてことはまず有り得ない。

となると、自然に浮かぶ説は1つだろう。

妹さんが、颯太郎に猛アタックしたに違いない。

聡太郎は同性の僕から見てもモテるタイプだと思う、結構イケメンな部類に入ると思うし身長も高い方で何より気遣いが上手い。

姫野さんの妹さんなら好きな相手にグイグイ来てもおかしくないと思うし何より僕の現状が目の前の光景よりも有り得ない以上否定することは出来そうになかった。

ただそんな事を導き出したからと言って楽しそうに会話をしている2人の間に入る必要も無いからこのままにしておこうと思う。

第一、妹さんには少し嫌われていると思うし。

とりあえずさっき出し損ねた本をリュックから取り出そうとチャックに手をかけたところで声がかかる。

もちろん僕にわざわざ話しかけるような人はクラスには一人しかいないため声の主は聡太郎だ。

「おはよう、樹。」

「…おはよう、聡太郎。」

急に話しかけられたのもあるしさっき驚いたばっかりで思わず変な目で睨みつけてしまった。

そもそもとして、なんで話しかけてきたんだよ。

「とりあえず報告があるんだが、俺、姫野先輩がお前にアタックするのを協力することになったわ。」

「⋯⋯⋯⋯⋯え?」

そのままの意味だと姫野さんが僕にOKしてもらいやすいように情報提供したりとかするって事に聞こえるんだけど…。いつの間に聡太郎を仲間に引き入れたんだろう。

そういえば、金曜日に用事があるって言ってたよな。姫野先輩に呼び出されてたのか、あれ。

「そういうことだから、よろしく。」

「まあとりあえず、わかったよ。」


それから何も無く帰りのSHRを迎えて、担任の先生の連絡に耳を傾ける。

どうやら、明日から部活動の仮入部が始まるらしかった。

放課後を迎えて聡太郎によると今日は待ってるとのことなので僕は一人で校門へと向かった。

桜の木の下で、記憶の通りに待っている姫野さんを見ると久しぶりに会えたという嬉しさで舞い上がりそうになる。

はやる気持ちを抑えながら、まだ僕のことに気付いていない彼女に声をかけた。

「帰りましょうか、姫野さん。」

どうやら完全に気を抜いてたらしく、肩が急にはね上がる。

それを見て、少し可愛く思いながら少し取り繕うように声を出す姫野さんを苦笑い気味に迎えた。

「や、やあ。まるまる四日ぶりだね須永君…。とりあえず、帰ろうか。」

その言葉を合図に2人で一緒の帰り道を歩き始める。胸の高鳴りと下手なところは見せたくないなんて緊張感が、はっきり恋をしてるんだと相変わらず僕に訴えかけてくる。

街路樹から射し込む日差しも、春の気温だって何処か現実味がなくて、軽く気持ちを落ち着かせてから僕は口を開いた。

「朝、妹さんと聡太郎が話してたのを見たんですけど、いつの間に知り合ったんですか?」

「ああ…あれかい?金曜日にちょっと話し合ってね。だから金曜日は校門に居なかったんだよ。」

「あ、やっぱりそうなんですね。」

時間的には確かにありえそうなのはそのタイミングぐらいだったけれどそうだったんだ動くのが早い。

「ところで、明日から部活動の仮入部期間だね。君はどの部活に行くつもりだい?」

「あ、そういえばそうですね。中学生の頃は文芸部だったのでとりあえずは文芸部に行くと思います。」

この学校の仮入部期間は四日あって仮入部の説明があった月曜日の次の日の火曜日から金曜日までで、来週の月曜日に部活動入部届を希望部活の部室まで出すことになる。

中学校の時と比べても少し早いのでその分慎重に考えてみたい。恐らく辞めることなんめないだろうから3年間同じ部活動を続けるだろうし。

「そうなんだね。すぐ浮かんでくるような部活動は大体はあるよ。文化部だったら写真部が1番人気だけど君が言った文芸部だったり吹奏楽部とか新聞部もあったりするね。あんまり興味無いかもだけど運動部ならサッカー部に野球部とか陸上部が人気かな。」

どうやら文化部も運動部も結構数が多いみたいだ。クラスの数も多いし部活動も活発なのかもしれない。

「へぇ、姫野さんはなんの部活に所属してるんですか?」

「私は生徒会に入ってるから部活動には入らなくていいんだよ?」

姫野さん生徒会に入ってるんだ、確かに誰かの前に率先して立てるような人に思える。

「じゃあ部活には入ってないんですね。というか、姫野さんって上級生だったんですね。驚きましたよ、同じ学年だと思ってたので。」

「言ってなかったね。私は君より一つ年上の先輩だよ。」

「·······姫野先輩って、呼んでいいですか?」

「うん、好きに呼んでもらって構わないよ。」

ちょうどそんなところで駅に着く。それからは他愛のない話をして帰った。


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