1-1
告白をされた次の日の木曜日の朝。ホームルーム前の何も無い時間を使って、昨日の事をぼんやりと考えていた。
思い浮かぶのは彼女の綺麗な容姿と告白の返事を延期する約束。彼女か言った惚れさせるという言葉。
その言葉の通りなら、何かしらのアプローチを仕掛けてくるということになる。
期間が決まってる訳では無いけれど一日や二日ってことは恐らくない、もしかしたら一週間以上は彼女から攻められる可能性もあった。
はあ、どうしてOKしてしまったのだろうか。惚れているとは言え僕は彼女と付き合ってしまいたくない。
つまり、そうなると間違いなくあの場での最前はあの提案を断ることだった。
ただ、そんな行動が最善だったとはいてあの時僕が取れたのがOKするって言う選択肢しか無かった訳なんだけど。惚れた側の弱みっていうのはこういう事を言うのかもしれない…。
もしかしたら、彼女も惚れているんだろうから似たような状況なのかもしれない。あの時初対面なのに告白してしまったことを後悔しているとか。
「樹、おはよう。」
そんな半分以上はこれから先の苦労を諦めた気持ちで考えていたら声がかけられた。
話しかけてきたのは中学校からの知り合いである加藤聡太郎。二年生の時に同じクラスになってそれから一緒に居ることが多くなった高校も同じの腐れ縁だ。
少し短めの整えられた茶髪でつり目のイケメンで身長も高く、人と馴染むのが得意でもある。
「おはよう、聡太郎。」
挨拶を返すと何故か少し不思議そうな、それでいて変なものでも見ているような瞳で見つめられた。
「珍しいな、樹が悩んでることなんて。恋でもしたのか?」
きっと、いや、間違いなく。冗談のつもりで言ったんだろう。ただ、その発言は僕の不意を付くには十分で、つい言葉を詰まらしてしまう。
僕は急いで取り繕って声を上げた。
「いや、なんでもないよ…」
そう誤魔化しては見たけど取り繕えなかったみたいで「それ、嘘だろ」と言われてしまい僕は大人しく白状せざるおえなかった。
「まあ、うん…、昨日。告白されたんだよ。それで、悩んでて…。」
「え?…は?」
この発言は流石に聡太郎も予想外だったらしく驚きの声を上げる。結構大きな声が出てしまったためクラスの人達が聡太郎に視線を向けている。
僕は恥ずかしい気持ちを誤魔化しながら何も無かったように装って小声で喋る。
「まあ、とりあえずそういう事が昨日あったんだ。これ以上なにか聞きたいならここじゃ誰かに聞かれるかもしれないから別の場所で話すよ。」
「そうか…じゃあ放課後だな。」
「そうだね、放課後に。」
そう言ったところでちょうど朝のSHRの時間を告げるチャイムが鳴りだした。