真実の愛
「父上!いや、国王様!第一王子で王太子でもあるアデル・クライスは真実の愛を見つけました!
アリエル・フィッツバーグ公爵令嬢との婚約を破棄若しくは白紙撤回して下さい!」
王子はハリとツヤのある大声で移動中の王に直訴した。
「アデル、本当に真実の愛を見つけたのか?」
「はい!スティル伯爵家の次女アマリアとの間に見つけました!」
頬を上気させ満面の笑顔の息子に対し王は
「そうか…今夜フィッツバーグ公爵と令嬢を呼び婚約を白紙撤回させよう。後悔は無いな?」
王の顔が寂しそうなのに対し王子は満面の笑顔で
「勿論です!」
王子に気付かれ無いように王はため息をついた。
「アリエル?今いいかい?」
「なんでしょう?お父様?」
愛娘が可愛く小首をかしげる姿を見て公爵は大きく深呼吸した。
「アリエル、急だが今夜、王城にお前と呼ばれたよ。」
力なく言う父にアリエルは不思議そうに
「急ですねぇ。何かありましたか?」
と問うと
「アデル王子が真実の愛を見つけたそうだ。婚約の白紙撤回の為の登城なのだよ。」
「え!真実の愛を見つけられたのですか!」
驚愕に震える娘を抱きしめる。
「婚約の撤回はどうでも良いのですが、王子はこれから大丈夫なのでしょうか?」
「アリエルはやさしいな。
王子と御相手の令嬢は大変だろうね。
とりあえず、王に会いに行こう。
私達には何も出来ないよ。」
疲れたように公爵は愛娘の頭頂部にやさしくキスを落とした。
王と王妃と王子とアリエルと公爵、スティル伯爵と妻のアリアと娘のアマリア8人でテーブルを囲む。
王と王妃は頭を下げ
「アリエル、すまない。アデルが真実の愛を見つけてしまった。
婚約は白紙撤回とさせてくれ。」
スティル伯爵夫妻も同時に頭を下げた。
アリエルは悲しそうに
「真実の愛を見つけられたのでは仕方が御座いません。
それよりも王様、お后様、スティル伯爵ご夫妻の方が御心労が…」
公爵も
「そうですよ!皆様の方が大変なのですから…」
と今にも泣きそうな声で言葉をつくんだ。
王子とアマリアはそんな様子を不思議に思い
「父上、母上、伯爵?何で辛そうにしておられるのですか?」
王子の問いにアリエルが思い悩むように
「まさか…王子…知らないはずは無いはず…」
と小声で零したのを王子が
「アリエル?はっきり申してみよ。」
王子とアマリア以外は呆然とした。
公爵が
「失礼ながら王子はこの国で“真実の愛 ”を見つけたら、その後何があるかご存知ですか?」
と震えながら問うと王子は
「結婚するだけじゃないのか?」
とアマリアと共に不思議そうな顔をした。
その姿を見た王と王妃は俯き震え、公爵、アリエル、伯爵夫妻は驚き言葉も出なく口をハクハクとしている。
「え?」
と不思議そうにする王子にアリエルがため息を吐き
「ここは失礼ながら、私がご説明させて頂きます。」
アリエルは言う
過去に真実の愛と嘘をつかれ王女が自殺したこと
過去に真実の愛と結ばれた王子が運命の相手(刺客)に殺されたこと
貴族で真実の愛と結ばれた2人が不仲になる事が多かったこと
それにより数代前の王が
真実の愛と王家の者がいうことがあれば本当に真実の愛か試す試練を与えると決めたこと
試練の内容は
20年王家管理の辺境地で農民として端金を最初に渡したきり生活をすること
そこは痩せた土地で害獣が多く、他に住人はいないが海はある
家族からの手助けは手助けした者を打首に
王子とアマリアは手を握り合い
「真実の愛を証明してみます!」
と全員に笑顔で宣言した。
王妃と伯爵夫人はその場に泣き崩れた。
話し合いから3日後の晴れた日に王子とアマリアは清々しい笑顔で度だった。
半年後、酷い日照りで飢饉が起きた。
王子とアマリアは国内がそんなことになっていることに気付かなかった。
2人がいる土地が元々痩せているから気付かなかった。
1年、2年と過ぎて子供ができ、アマリアが体調を崩した。
まともに食事がとれなかったからだ。
王子は叫んだ
「影の者!いるのであろう!王都に戻る!アマリアを助けてくれ!」
「王子…真実の愛の証明ができないではありませんか。私は休めば大丈夫です。」
「アマリア、証明よりもアマリアのほうが大切なのだ!証明なんてクソ喰らえだ!」
ふふっとアマリアが笑うと
「王子、了解しました。今から戻りましょう。」
と影から声がした。
王都に戻った2人が目にしたのは疲れた平民たち。
1年半前の飢饉の爪痕が未だ残っていた。
王城に着くとやつれた王と王妃がいた。
自分達が気付かなかったとはいえ、王都も大変だったのだ。
医師を呼んで貰いアマリアを診てもらった。
王と王妃に照明が出来なかったことを詫びる王子に王妃は
「無事な貴方と産まれてくる子とアマリアが生きていてくれただけでも嬉しい。」
と涙を浮かべ喜んだ。
王は
「試練は本当は3年だった。1年後には迎えに行く予定だった。」
と言った。
そう、20年と言ったのは本人達を試す為。
真実の愛をいうものは大抵、半年で別れるのだという。
アマリアの体調が戻り、出産を終えたら大々的に2人の結婚式を執り行うことが決まった。
2人の結婚式は小雨の中、小さな王女を王子が抱いて行われた。
雨を残念がる者も多かったが、2人は日照りでは無いだけ良いじゃないかと笑った。
時は流れ王子が王となり、王子の子が王となり随分経ち儚くなるとき
「真実の愛というものは儚くなる頃にやっとわかるものだとわかったよ。
真実の愛とは積み重ねでできるものであったな。私は運が良かっただけだな。
アマリアありがとう。愛しておるよ。」
と笑顔で旅立たれた。
アマリアは真実の愛って難しいものねと思いながら、少女の頃から仕える1つ年上の執事の手を取りため息をついた。
最初に思ってた内容と変わってしまいました。
女性陣の名前が似たり寄ったりで申し訳ありません。