無理矢理繋ぎ止めてしまった -Margret- Ⅱ【鳥籠】①
セシリヤが復帰してから二週間、以前と変わらずに仕事を難なくこなし、忙しなく動き回る彼女の様子をマルグレットは見つめていた。
特に怪我による後遺症もなく一安心するが、セシリヤの身体を蝕み続けている"呪い"がより一層広がっている事が気がかりだった。
最初に見つけた頃は小さなものだったのに、今は胸部全体を覆うように広がり、流石のマルグレットもその禍々しさに目を逸らしてしまったくらいだ。
セシリヤは気にしていないと笑っていたけれど、そうも言っていられない。
"呪い"が更に広がって、目につく場所に痣が出始めたらどうするのか、それが全身を覆ってしまったらどうなるのか、言いたい事も沢山あったけれど、セシリヤの笑顔を曇らせたくない一心で、ぐっと言葉を飲み込んだ。
久しく見る事のなかったその顔は、マルグレットがセシリヤに惹かれた笑顔だったからだ。
「あの、マルグレット団長……、包帯、巻きすぎでは……?」
「……え?」
遠慮がちに訴える声に我に返ると、騎士が困った顔をして患部とマルグレットの顔を交互に見やり、そう言えば怪我の手当をしている最中だった事を思い出して、慌てて包帯を解く。
お疲れですねと笑う騎士に謝罪し、初めから包帯を巻き直していれば、仕事がひと段落したらしいセシリヤが傍らに立っていて、交代を申し出た。
そう言えば、まだ昼の休憩を取っていなかったと思ったが、それならセシリヤも同じであると申し出を断ろうとしたが、次の瞬間には自分に代わって手際よく手当をしている彼女の姿が見えて溜息を吐く。
「ここは私に任せて、休憩に行って下さい」
「セシリヤ、貴女もまだ……」
「私は沢山休んでしまったので、気力も体力も有り余ってますから」
ですから気にせずどうぞと笑って促すセシリヤに押し負けて、休憩所へ向かう事にした。
マルグレットは昔から、セシリヤのあの笑顔に弱いのだ。
あの頃の彼女はいつも、その笑顔を絶やさなかった。
だから、今の彼女も大丈夫であると……、そう信じたかったのだ。
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