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【完結】異世界追想譚 - 万華鏡 -  作者: 姫嶋ヤシコ
第一部

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驚愕、悲嘆、絶望 -Arman-Ⅱ 【亀裂】①

「一週間程団を離れるが、私の留守の間は第四騎士団を頼んだぞ」


 騎士の鎧ではなく、貴族らしい正装をしたシルベルトの優雅な所作に呆けていたアルマンは勢い良く返事をすると、シルベルトを乗せた豪華な馬車が出発するのを見送った。

 ロガール騎士団に在籍している貴族の中でもシルベルトの家はかなりの良家のようで、騎士団に入団する事を決めた時にはひと悶着あり、当主である父親から入団を許可する代わりにこうして時々貴族の社交の場へ顔を出すことを条件にされたと、シルベルト本人が不機嫌そうに話していた。

 社交の場へ出れば、嫌でも纏わりついて来る様々な感情が入り混じった視線や媚びが煩わしく、それが嫌で騎士団へ入ったのにと立腹していたが、怒っていても整った顔や優雅な所作が崩れる事はなく、更にロガール騎士団の中でも第四騎士団長と言う肩書がついて来るのだから引く手あまたでも頷ける。

 産まれた時から一般庶民だったアルマンにとってはわからない世界であるが、恵まれているようでもそれなりの悩みが出てくるのだろう。

 とにかく、今はシルベルトがいない間、副団長としての仕事をしっかりこなすまでだ。


 馬車が完全に見えなくなった所で踵を返し、兵舎に向かいながら一日のスケジュールを頭の中で整理していると、向かっていた第四騎士団兵舎の入り口でよく知る人物を見かけ声をかける。


「ようアンジェロ、第四騎士団(うち)に用か?」

「ああ、ちょうど良い所に。これ、シルベルト団長へ渡すようにって書類を預かってね」


 アンジェロが差し出した書類に目を通すと、先日第四騎士団の監視区域で発見された魔物の巣窟の掃討についての内容が記されており、近隣の村に被害が及ばない早期に処理する事も指示されていた。

 しかし、団長のシルベルトはつい先程出発してしまった所だ。


「生憎、うちの団長は今日から一週間は留守だぞ。その代理で権限は今、副団長の俺が持ってる。シルヴィオ団長は、この討伐について何て言ってたんだ?」

「シルベルト団長に任せてって言ってたけど……、いや、やっぱり一旦持ち帰って改めて指示を仰ごう」


 アルマンをちらりと見やり、どこか不安げな表情を浮かべたアンジェロが書類を取り戻そうと手を伸ばしたが、彼よりも背の高いアルマンがひらりと書類を持つ手を上げれば、それを取り返すことは難しくなる。

 学院生時代のようにアンジェロがムキになって書類を取り返しに来ると思ったアルマンだったが、その予想は外れ、呆れたような溜息を吐き出した彼は持っていた残りの書類をアルマンに押し付けると、


「君ももう副団長なんだし、バカみたいな真似はしないって信じるけど……、間違ってもシルベルト団長や他の騎士に迷惑はかけないようにね」


 そう言って、所属する兵舎へと戻って行ってしまった。


 学院生時代とは違ってどことなく落ち着いたアンジェロの姿を見て、少しだけ取り残されたような気持ちになったアルマンだったが、すぐに気持ちを切り替え押し付けられた書類に目を通し、この討伐に最適な部隊編成に頭を悩ませる。

 巣食っている魔物の強さを見る限り討伐は難しくなさそうだが、団長も不在の為にアルマンが直接向かう事は出来ない。

 故に、問題なく任務をクリアできるだろう候補者を慎重に選定しながら、ふと、サポートとして医療団の人員を編成するか否かを考え、けれど万が一が起こって巻き込まれてしまえば戦闘には向いていない彼らも無事では済まないだろうと思い直し、決定した顔ぶれに満足したところで作戦会議の為に招集をかけた。


 出発は明後日(みょうごにち)


 天気は、生憎の雨だった。





【12】



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