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【完結】異世界追想譚 - 万華鏡 -  作者: 姫嶋ヤシコ
第二部

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世界に、激震が走った -All- 【終結】⑤

挿絵(By みてみん)


 つい先日、騎士団の再編成が発表された。

 新体制となった騎士団は今、それぞれの日常が始まっている。

 第一騎士団長のレオンが引退した為、新たな団長として第三騎士団からジョエルが就任する事になった。

 そしてジョエルが移動したことによって、第三騎士団の団長にはディーノが就任した。

 学院生時代からの先輩の昇進にアルマンも喜んだが、ディーノには気がかりな事があるようで、あまり嬉しそうには見えなかった。

 ディーノの気がかりと言うのは、今現在アルマンの目の前で倒れているアンジェロの事だ。

 アンジェロの目の下には以前よりも濃いクマが出来ており、疲労もピークに達していたのか第四騎士団に書類を届けに来た直後、応接用のソファに倒れ込んでそのまま眠ってしまったのだ。(一応呼吸も安定している為、極度の疲労だろうとそのままにしてあるのだが)


 アンジェロの所属する第二騎士団は、団長のシルヴィオの行方が分からないまま再編成が行われ、アンジェロが団長に就任する事になっていた。

 けれど、アンジェロがシルヴィオの帰還を信じていると頑なにそれを拒否し、それに根負けした王が"団長代理"として彼を任命したのだ。

 シルヴィオがいつ戻って来ても良いように、団長と言う役職は空席にして。

 それ以降、シルヴィオの捜索を続けつつ、アンジェロは一層仕事に打ち込んでいる。

 見ている方が痛々しいと、眉を顰める程に。


「もったいねぇな……。待ってないで団長に就いちまえばよかったのに」


 いつまで待っても戻って来る気配のないシルヴィオの事など放って置いても、誰も文句は言わないだろう。

 けれど、アンジェロは度重なる説得にも首を縦に振らなかった。

 気弱そうに見えて意外と頑固なアンジェロに、アルマンも渋々引き下がったのだが、日に日にやつれて行く姿を目にするとどうにも居た堪れないのだ。

 少し寒いのか身体を縮めて眠るアンジェロに、何か掛けてやれるものがないかと周囲を探していれば、不意に扉をノックする音が聞こえて小さめに返事をする。

 執務室に入って来たのは、クレアだった。


「クレア、どうした? お前が第四騎士団(ここ)に来るなんて珍しいな」

「アンジェロに用があって第二騎士団の執務室に行ったんだけど、第四騎士団(ここ)に行ったって聞いたから、来てみたの」


 そう言って、ソファで眠っているアンジェロに視線を定めたクレアは、心配そうに眉を顰めた。


「……やっぱり無理してるんだね、アンジェロ。クマもひどいし、顔色も良くないみたい」

「シルヴィオ団長が戻って来た時の為に団長の座を空席にして、馬鹿みてぇに仕事も兼任してこなしてるからな。ここまでクソ真面目だと、いつかハゲちまうぞ……」


 アルマンの発言に小さく笑ったクレアは、アンジェロの眠るソファに浅く腰掛けると、自分の着ていた制服の上着をそっと彼に掛けた。

 小さな上着の為身体の殆どはみ出ているのだが、クレアがそうしてくれたという事実は、長年彼女に想いを寄せているアンジェロにとって大きな進歩ではないだろうか。

 学院生時代からじれったいアンジェロを間近で見ていたアルマンは、どこかほっとしたような溜息を吐き出すと、空気を読んで執務室を出る事にした。


「クレア。シルベルト団長も会議でしばらく席を外すって言ってたから、執務室とアンジェロの事、頼むな」

「え……っ、アルマンは何処へ行くの?」

「剣の稽古。ここ暫くは執務に追われて、身体も動かせてなかったからな」


 困惑しているクレアの表情には気づかないふりをして背を向けたアルマンは、そのまま執務室を出てまっすぐ鍛錬場へ向かった。

 途中、クレアとアンジェロを探す二人の部下には、「第四騎士団の執務室には誰もいない」と答えて。

 目が覚めた時に焦るアンジェロと困惑気味に笑うクレアを想像して笑ったアルマンは、後でどうなったか必ず二人に問いただしてやろうと心に決めると、久しぶりの鍛錬場に足を踏み入れたのだった。



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