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【完結】異世界追想譚 - 万華鏡 -  作者: 姫嶋ヤシコ
第二部

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全ての元凶 -???-【因縁】⑧

「確か……、お前の弟とやらも犠牲になっていたな、セシリヤ・ウォートリー。お前の血縁者が、お前の弟を殺したも同然だ! 誰のせいでもない……、恨むならお前に流れるウォートリーの血を恨むんだな!」

「それ以上、彼女を侮辱するな!」


 堪えきれずにディーノが剣を抜き攻撃を仕掛けるが、マティはその刃を剣で受け止めた。

 ディーノの右目には、先程とは打って変わって燃え盛る怒りの炎が揺らめいている。


「ディーノ……。お前も、騎士団なんかに入らなければ左目を失う事もなかったのに。どうせなら、その右目も潰してやろうか? そうすれば騎士を引退せざるを得なくなる。こんなバカげた生活からも解放されて、自由になれるぞ」

「俺は、俺の選んだ人生を後悔しない! この左目も、俺が選んだ人生の結果だ! お前にどうこう言われる筋合いはない!」


 鍔迫り合いの後間合いをとる為に後退したディーノへ、マティはすかさず拘束の魔術を放つ。

 しかしディーノもそれを予測していたのか、剣で魔力の鎖を振り払うと跳躍する。

 同時に振り払われた魔力の鎖も彼の後を追うように執拗に伸びて行く。

 ディーノが着地しようとしている場所は、マティの背後だ。

 魔力の鎖の追跡を混乱させる為なのだろうが、残念ながらディーノが着地しようとしている地点にはマティの作った"魔物"が待機している。

 ディーノには先程のやりとりの間に魔物を認識できなくなるよう暗示をかけた為、魔物の姿は見えていない。

 間抜けにもそこに着地した瞬間、ディーノの身体は無惨にも食いちぎられるだろう。

 一応頭は使ったようだが、目に見えていないものに対してまでは頭が回らなかったようだと、笑いをかみ殺すのに一苦労だ。

 マティは魔力の鎖の追跡を消し、自分の背後に着地するディーノを見ないまま溜息を吐き出す。

 その直後に上がった悲鳴はマティが思っていたものよりも随分と奇怪なもので、思わず振り返れば、そこには魔物に剣を突き立て止めを刺したディーノが立っていた。


「こんな安い罠に引っかかると思われてたんなら、俺も随分と舐められたもんだな……。左目は失ったが、その分他の器官が左目の代わりに発達してんだよ! ジョエル団長には敵わないけどな!」


 黒い霧を払いながら耳を指差したディーノは、すぐに体勢を整えマティに斬りかかって来る。

 すぐに剣を薙ぎ払って距離を取ったが、まさかディーノにそんな特技があるとは知らなかったマティは舌打ちした。

 小細工が通用しない以上、ディーノは確実にマティ自身が潰さなければならない。

 騎士学院を主席で卒業したと言うだけあって、ディーノの実力は長い間傭兵をやっていたレナードも認める程だ。

 故に、直接対決となると少々厄介である。

 無駄な魔力と体力を使う事は避けたかったが、見えないものを耳で聞きわけてしまうと言うのなら致し方ないだろう。


「残った右目も、その耳も、俺が全部潰してやるよ、ディーノ!」


 マティが指を弾くと黒い霧が次第に集まり魔物の姿に変わって行き、六体の大きな狼のような魔物がディーノを取り囲んだ。

 次いでマティが魔物に指示を出すと、ディーノへ向かって一斉に襲い掛かって行く。

 襲い掛かって来る魔物の攻撃を避けるように跳躍したディーノは、一体目の魔物の頭に目がけて剣を突き刺し、そのまま魔物の頭を蹴って反動をつけると、二体目の魔物の首を斬り落とした。

 重力に従い地面に着地した所で三体目の前足がディーノを蹴り飛ばそうとするが、素早く防御魔術でそれを防ぐと前足を斬り落とす。

 直後、四体目の攻撃がディーノの背後に迫るが、寸前で鋭い刃のようなものでズタズタに引き裂かれた魔物は元の黒い霧へと戻って行った。

 マティが振り返れば、セシリヤが魔術でディーノを補助しているのが見える。


「ディーノ副団長っ、上から来ます!」

「邪魔をするな! セシリヤ・ウォートリー!」


 大人しく見ていろと言う意味も含めセシリヤに向けて炎の矢を放つと、彼女はそれを避けずに防御魔術で防いで見せた。

(そこを動けばアンジェロに被害が行く事を考えての行動だったのだろう)

 血縁に優秀な魔術師がいただけあって、セシリヤの腕前はかなりの物だ。

 人知れず関心を寄せていれば、五体目の魔物を斬り捨てたディーノがこちらの様子を気にして声を上げた。


「マティ! お前の相手は俺だ!」

「それに水を差したのはあの女の方だろう?」


 冷静に反論したマティに剣を向けようとするディーノだったが、それを止めるように六体目の魔物が立ちはだかる。

 すぐに標的を六体目の魔物に切り替えたディーノはそれをうまく斬り捨てたが、セシリヤに気を取られていたせいで背後から迫って来る魔物の気配に気づくのが遅れ、鋭い爪の攻撃を食らって壁に叩きつけられた。

 攻撃を仕掛けたのは先程ディーノが前足を斬り落とした魔物だったが、その前足は元通りに再生していた。


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― 新着の感想 ―
[一言] ディーノでも邪神の契約者には敵わないのか...!
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