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【完結】異世界追想譚 - 万華鏡 -  作者: 姫嶋ヤシコ
第一部

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ホントに君、何者なの? -Silvio- 【嘘】③ ※挿絵有

「アンジェロ……、魔物が何らかの理由で突然知能を持って禁忌魔術を使って来たとしたら、君はどう考える?」

「うーん……。単純に魔王の復活が近く、その影響によってより強く知能のある魔物が生まれて来るとも考えられますが……、禁忌魔術の術式なんて、並大抵の魔術師ではおいそれとは作れないと聞きますから、いくら知能を持ったとしても魔物自らがそれを作り出すのは疑問が残ります。故に、それをどこかで手助けしている人物がいるのではないかと疑いますね」

「だよね、概ね君の意見と合致する。じゃあさ、なんで手助けしてると思う?」

「わかりません。そもそもそんな人物がいたとして、魔王の封印が解けたらその人にとって何か良い事があるんでしょうか?」


 実際、魔に魅入られ狂信的にそれを崇拝する者は一定数存在している。

 例えば、そんな人物が魔王を崇拝し、何かをしでかそうとしている可能性もゼロではない。

 とは言え、通常であれば余程の悪さをしない限り放置でも構わないのだが、禁忌魔術を知っているともなると、そう言うわけには行かないだろう。

 それに、つい先日、書庫の立ち入り禁止の扉の前にあるチェーンが破壊されていたことも気にかかる。

 あれは、異界の勇者であった王が魔力を込めて作ったもので、ある条件を満たさなければ破壊することはほぼ不可能だと聞いている。(実際試したら、アンヘルにこっぴどく叱られた)

 今回の禁忌魔術の件が関係あるのかはわからないけれど、タイミング的にもあまり良い予感はしない上に、チェーンの件はこの城内で起きているのだ、内部の者にも警戒をしておいた方が良さそうだ。


挿絵(By みてみん)


「アンジェロ。話のついでって訳じゃないんだけど、僕と君だけで内密に動きたい事があるんだ」

「内密……、って、また団長の女性関係のトラブルの話だったら怒りますよ?」


 巻き込むのは勘弁して下さい、と念を押してくるアンジェロに違うと首を左右に振って否定し、


「禁忌魔術の話と関係があるかどうかはわからないけど、多分、ロガールに良くない鼠が入り込んでる」

「えぇっ!? 団長でも見逃す事あるんですか?」

「あのさぁ……、僕は全知全能じゃないんだからそう言うことだってあるよ。君、寝てる間に自分の知らないどこかから入って来た鼠に気づける?」

「いえ、それは無理です……」


 三代目勇者の魔王封印の旅に、成り行きとは言え一役買ってしまった事で噂が噂を呼び、尾ひれ背びれが色々ついた結果、こうして少しでもミスがあれば針の筵なのだからたまったものではない。

 確かに噂に違わぬ記憶力と観察眼はあるかも知れないけれど、超人では決してないのだ、人並みに眠るし隙もある。

 だからこんな地位などいらなかったのにと机に泣きつく真似をすれば、すみませんとアンジェロは素直に謝罪し、話の続きを促されて顔を上げた。


「でも、どうして気づいたんです?」

「書庫の立ち入り禁止の扉の前にあるチェーンが壊されてた」


 本当に偶然、普段は誰も立ち寄らない書庫へ軽い足取りで入って行く人物の姿を見かけ、珍しさに何となく興味本位で後をつけた先で目にした事を伝えると、アンジェロはまさかと怪訝そうな顔をする。


「あのチェーンって、壊す事はほぼ不可能って言われてますよね」

「そのはずなんだけどね。あれが施されてから年月も経過しているし、もしかすると、込められた魔力に制限があって弱まっていたのかも知れないし……、とにかく、ほぼ不可能を可能にした何か……、若しくは誰かが存在しているのは確実。ただ……、」


 何故あのチェーンを壊す事は出来たのに、その先の扉の結界を破り中へ侵入しなかったのか……。

 もしくは、侵入できない理由があったのだろうか……?


 あの状況で考えられる理由としては、チェーンを壊すのに必要な力を使い果たして撤退せざるを得なかった、チェーンを壊す事が目的で何らかをアピールしたかった、それから、予想外の第三者があの書庫へ入って来たから、だ。


 あのチェーンは王が直々に作ったもので、王が言っていた特定の条件を満たさない限り余程でなければ簡単には壊せない。

 故にそれを壊すのに必要な力を使い果たして撤退せざるを得なかったと言うのも、納得できる。


 次に、チェーンを壊す事が目的で何らかをアピールしたかったとすれば、やはり特定の条件を満たした、または満たさなくても壊せる程の力があると言う誇示だろう。

 これは、ロガール……いや、あのチェーンを作った王への挑発とも取れなくない。

 そうなって来ると、魔王の手の者の仕業なのか、はたまた王を良く思っていないまったく別の組織の者の仕業なのか見極めが難しい。


 最後に、予想外の第三者。

 それは、自分自身と、あの書庫で会った青年に他ならない。

 初めはその青年を疑って見たのだが、どうやら新参者であるのか、あの扉の結界については全く知らなかったようですぐに除外され、また、いつからチェーンが壊れていたのかを確かめる為に結界にわざとペンを投げ入れ、アンヘルがどれくらいの時間でやって来るのかこっそり隠れて様子を見ていたのだが、彼が駆けつけて来た時間はシルヴィオの予測よりもずっと早く、あの日、青年が書庫へ入る直前に壊されていたとしか考えられない。(そもそも、ずっと以前から壊れていたのなら、アンヘルがそれを放置しておくはずがないのだ)


 しかし、そうなって来ると壊した本人は一体どこへ消えてしまったのか……。


 あの書庫にあった気配は、自分を含めて二人だけだったし、こもった空気の様子から窓も開けられた形跡が見られなかった。

 それとも、どこかで何かを見落としていたのだろうか……?


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