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【完結】異世界追想譚 - 万華鏡 -  作者: 姫嶋ヤシコ
第二部

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236/290

ただ、キミの愛が欲しい -Silvio-Ⅵ【誤算】②

 *


 抱き寄せた華奢な身体に何の欲もそそられず、しかし心にもない口説き文句を吐き出す事は最早シルヴィオにとっては造作もない事だった。

 今の姿を保つ為に絶え間なく消費し続けている魔力と生命力を補う事の出来る唯一のこの営みは、同時に快楽を齎し心の隙間を埋めるには打ってつけだ。

 しかし、彼女(セシリヤ)に対する気持ちに気づいた時から、それは単なる義務へと成り下がってしまった。

 終わった後に残るものは苦痛と罪悪感のみで、今までどれだけ名も知らない、顔も覚えていない女達へ酷いことをして来たのかをまざまざと見せつけられているようだった。


 けれど、これがシルヴィオの身体に宿る"邪神"との"制約"なのだ。


 この快楽を"邪神"へ捧げ続ける代わりにシルヴィオは願いを一つだけ叶えてもらい、更に"邪神"の持つ力を得た。

 今更それを無かったことにして逃げる事は許されない。

 皮肉な事に、これが彼女(セシリヤ)を救う為に必要にな大量の魔力を補える行為だと言うのだから、現実とは残酷なものだ。

 幸福感に満たされた女の顔を冷めた瞳で見つめながら、それでも仮初の愛を囁き続ける自分の姿が滑稽だと心の中で嘲笑(わら)った。


 ……似た髪色を選んだのは失敗だったな。


 髪色を目にする度に彼女(セシリヤ)を思い出し、どうしようもない虚しさと罪悪感がシルヴィオを蝕んで行く。

 蕩けて甘えるような声も、触れる肌の温度さえも、彼女(セシリヤ)でなければ鬱陶しいだけだ。



 ……僕はただ、キミの愛が欲しいだけなのに。



 その心の呟きに「本当に欲しいものを簡単に手に入れさせる訳がない」と、シルヴィオの身体に宿る"邪神"がせせら笑う。

 心の奥底で少しずつ焼け爛れて行く本心が、いつまでもシルヴィオを責めるように鈍く疼き続けていた。




【59】


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