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【完結】異世界追想譚 - 万華鏡 -  作者: 姫嶋ヤシコ
第二部

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……それでも、あなたは僕の味方でいてくれますか? -Yuki-Ⅲ 【選択】③

 この世界を救う勇者だと聞かされていたが、まさか”生贄”としてこの世界に召喚されていただなどと、誰が思うだろうか。

 けれど、冷静に考えて見ればしっくり来る事ばかりだった。

 元の世界で虐げられ蔑まれる事が日常だった優希を必要としてくれるなど、よほど切羽詰まった人でない限りいない。

 召喚された当初に会った、憔悴している王がまさにそれだった。

 勇者などと言う耳障りの良い言葉にまんまと乗せられてしまった事を皮切りに、この世界の人達が優しく親切にしてくれていたのは、本当は”生贄”と言う存在だったからなのではないだろうか。

 憐れみか同情かはわからないが、今はそうとしか考えられなくなっていた。

 故に、最初から嫌悪感を持って接して来たアルマンには、どこか安心感を持ったのではないか。

 他の人は皆、”生贄”としての役割を全うしてもらう為だけに義務で優しくしてくれていたのではないか。

 ユーリも、イヴォンネも、剣技を教えてくれた他の団長や副団長も。


 ……セシリヤさんも……?


 ふと彼女の顔を思い出して頭を振ると、感情論にふりまわされた考えを追い出した。


 ……セシリヤさんは違う。僕に、誰も教えてくれない本当の事を教えてくれた。アルマンさんと同じで……、多分、セシリヤさんは、違う。他の人だって、きっと違う。


 日記の内容を読んだせいで、疑心暗鬼になりすぎている自分に心底嫌気が差してしまう。

 他人の親切に慣れていないせいだと無理やり結論づけては否定しての繰り返しが、優希の心を疲弊させて行った。



 数日後、あまりに優希の様子がおかしいと心配したセシリヤから、気分転換に城下へ散歩に行ってはどうかと提案され、乗り気ではなかったものの、彼女の気遣いを無駄にしてはいけないと素直にそれを受け入れた。

(数人の護衛を離れた所に配置すると言う配慮までしてもらった)


 リアンを連れた優希は、気乗りしない足取りで城下を歩く。

 今はこの世界の人とあまり接したくない為にフードを深くかぶり、リアンを抱き締めながら目的地もないまま、ただひたすらに歩いた。

 あまり早く城に帰ればそれはそれで心配させてしまう為、どこかで時間をつぶさなければならい事が優希には苦痛だった。


 ……このままただ歩き回ってたら、城下を一周しちゃいそうだ。


 流石に何度もぐるぐる同じところを歩き回る訳にはいかないと悩んだ優希はふと、三代目勇者日記の内容を思い出した。



 ―――この国で古書を扱う本屋で見つけた禁書に指定されているロガールの文献が根拠だ。―――



 三代目勇者が見つけた、禁書を扱う本屋。

 もしもその本屋が今もあるのなら、自分自身の目でその内容を確かめて真偽をはかるしかないと考えた優希は、すぐ傍のベンチに腰かけていた高齢の女性に声をかけた。




 *




 両腕にリアンをしっかり抱えながら、急ぎ足で道のりを歩く。

 この道なりに行けば、先程女性が教えてくれた本屋に辿り着くはずだ。

 暫く歩いていると、目的地に近づくにつれて焼け焦げたにおいが強く鼻をつくことに気が付き、優希は思わず足を止めてきょろきょろと周囲を見渡した。

 目的地の本屋の事しか頭になかったせいで全く気が付かなかったが、周囲は煤けた家や半焼した家が立ち並んでいる。


 ……そう言えば、城下で火事があったってセシリヤさんが言ってたっけ。


 この地区の中心に本屋があると聞いてやって来たが、少し離れたこの場所でも家が焼け落ちている所を見ると、本屋が無事であるとは思えない。

 あまり期待しないようにと自分に言い聞かせながら通りを抜け、ようやく目的地が見え始めた時、今まで優希に抱かれて大人しくしていたリアンが腕から抜け出し、ものすごい勢いで駆けて行ってしまった。


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