表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】異世界追想譚 - 万華鏡 -  作者: 姫嶋ヤシコ
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

174/290

キミはまた、あの時みたいに笑ってくれるのかな -Silvio-Ⅴ【齟齬】④

 ユウキは自分が生贄として召喚された事を知らず、ひたむきに魔王を倒す事を目標として毎日慣れない剣技や魔術の練習を頑張っている。

 それも、勇者であると信じて疑わない人々の為に。

 勿論、ユウキ自身も勇者であると言う責任と自覚を持っているだろう。

(彼には何の縁もない世界のはずなのに)

 それなのに、蓋を開けたら実は生贄でしたなどと言う残酷な現実が待っていたとすれば、彼はどう思うだろうか。


 保護されたはずの孤児院で生贄の一人として育てられた挙句祭壇に縛り付けられ、そこで味わった絶望感を思い出したシルヴィオは、ユウキにもそれを味わわせてしまう事を考えた後、すぐにそれらを追い払うように頭を振った。

 ここで同情などしていては、身動きが取れなくなってしまうからだ。


 一度深呼吸をして、知らぬ間に早くなっていた鼓動を落ち着かせる。

 それから複雑な感情が入り混じる頭と心を冷静にして、再び机に向かった。


 ……とりあえず、魔王についての事実は分かった。


 残りの謎は、セシリヤにかけられた呪い、消える魔物、図書室のチェーンを壊した人物、それから建国祭で魔物を手引きした人物についてだ。

 一見すると魔王に接点があるようでないようにも見えるが、アイリのノートのお陰で何となくぼんやりと形が見えて来たような気がする。


 まず、セシリヤにかけられた呪い。

 これは、恐らくこの魔王にかけられたものだと思って良いだろう。

 不老不死にする呪いなど、人知を超えた所業だ。

 それに、セシリヤの胸元にあった痣は多少変形していたが、このノートに描かれている文様の一つに良く似ている気がする。

 彼女が魔物に襲われて昏睡状態になった時、痣に触れようとしたシルヴィオの手が弾かれたのは、他の邪神の力を感じ取ったからだろう。

 恐らく、彼女の呪いは”魔王”と呼ばれる邪神を消滅させれば解けるはずだ。


 死骸が消える魔物についてはまだ詳細な調査をしていない為に何とも言えないが、今の所ロガール国内にのみ散見されていると言うことだけはわかっている。

 もう少し調査をしないと、はっきりした答えは出ないだろう。

 仮説としてあげるのならば、"魔王"がこの(ロガール)に、或いは王に個人的な恨みを抱いていて重点的に狙っていると言うのが妥当だろう。


 それから、書庫のチェーンを壊した人物についても現時点で誰であるかハッキリとはわからないままだ。

 けれど、その目的は察しがつく。

 あの扉の奥に隠されているのは、この世界の人間に知られてはいけないモノだ。

 アイリのノートを見る限り、王はあの場所に魔王についての事実を記された(もしくは近い何かが記された)書物や文献を隠しているだろう事は読み取れる。

(アイリも魔王についての事実をどこで知ったのか謎だが、調べてみた方が良いかも知れない)

 もしもそれを表に出されてしまっては、大きな混乱が起こってしまうだろう。

 王が”勇者”ではないと知った途端、手の平を返す人物が少なからず出て来るはずだ。


 下手をすれば、国が転覆し兼ねない。


 あの(お人好し)の事だ、おそらく保身の為ではなく、混乱した後に起こりうる戦争に巻き込まれた人々の為に隠さざるを得なかったのかも知れない。

 そう考えれば、王に恨みがあり魔王を崇拝する人物の線が強くなって来る。


 では、建国祭で魔物を手引きした人物はそれと同一人物なのか。

 現時点で、おそらく同一人物、もしくはその仲間と考えて良いだろう。

 魔王が復活すると言う瀬戸際の今、この国に手を出そうとする馬鹿はいない。

 何故なら、勇者が魔王を倒さねばならないのだから。

(例えこれが事実と異なったとしても、既にそう広く認識されているのだからそう易々と覆すことは難しい)

 それを邪魔するなど、魔王を崇拝し国が転覆しかねない秘密を白日の元に晒そうと書庫のチェーンを壊して侵入を試みた人物、もしくはその仲間だとしか考えられない。



 やはり、騎士団の中に裏切者がいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ