死の直前
また僕は死ぬのだろうか。城の長い廊下を歩きながら僕は考えていた。
どうして皆は僕を必要としてくれないのだろうか。前だって同じだ。僕は新しい家族と認めてもらうため、料理もしたし勉強だって頑張った。
でも、結局認めてもらえることはなかった。今回は向こうの都合で勝手に呼び出されて、努力する時間も与えられずに捨てられた。-許せない。
「ついたぞ、入れ」
そんな恨み言を考えていたら目的の場所に着いたらしい。
キィー。錆びた扉を開けて中に入ると部屋の中央に魔法陣のようなものが床に描かれているだけで、ほかには何もない質素な部屋だった。
「なぁ、お前は今からどうなると思う?」
隣にいる兵士が僕に問いかけてくる。兵士の顔を見ると、とても真剣な顔をしていた。
「……知りませんよ。処刑でもされるんですか?」
「大体そんな感じだ。お前はまだ生きたいか?」
生きたい。そう思ったことはいつからか無くなった。だから僕はこう答える。
「別に、生きたいとは思いません……」
「そうか……」
長い沈黙が続く。
「……お前は今から迷いの森という一度中に入ったら出ることができない場所に転移される。そこには、モンスターという人間よりも圧倒的な力を持ったバケモンが襲ってくる。だから、お前にこれを渡そうと思ってな」
すると、兵士はポケットから謎の赤い液体が入った小瓶を取り出し僕に手渡す。
「あの、これは?」
「毒だ。それも致死性のな。痛いのが嫌ならこれを飲め。楽に死ねる。だが、お前が生きたいと思うならこの剣と鎧を着て戦え」
そういうと兵士は身にまとっていた鎧と剣を僕に渡す。早速着てみると、少し汗臭かった。
「わかったか?」
「……分かりました」
僕にはこの人がいい人なのか悪い人なのかは分からない。だが、今まで出会った人の中ではまともな人だったと思う。
「さぁ、時間だ。陣の中央に立て」
僕は重い足取りで陣の中央に向かう。陣の中央に立つと陣が強く光りを放ち僕を包み込む。
「強く、生きろよ」
兵士がそう言ったのを最後に僕の意識は途絶えた。
せっかくなのでカクヨム様にも投稿してみようと思います。