第四話 苦悩
さぁ・・・着替えるにしてもどうすりゃいいんだよ。
鏡の前で立ったまま考え込んでいた。
とりあえず脱ごう。
寝間着のTシャツを脱いで鏡で自分の姿を写す。自分の体のはずなのに心臓がバクバクいっている。
女の裸を見るのは初めてじゃない。ましてや自分の体のはずなのに。
「落ち着けよ・・・俺・・・」
まるで自分の体じゃないような。自分の胸に手を当てる。
「胸ってこんなに柔らかいのか・・・」
ゆっくりと揉んでみる。
「んっ・・・なん・・・!?」
今まで感じた事のない感覚が体に走る。
「これが女の感覚なのか!?」
冷静になれ!!こんな事をしてる場合じゃない。
自分の体じゃないような・・・自分の体??
自分の体かどうかを証明出来るものを思い出した。生まれた頃から俺には腰に小さな痣があるのを思い出した。
鏡に背を向けて自分を写し振り向く。
「痣は・・・ある・・・」
じゃあ俺は俺なのか・・・
少しの安心と絶望が同時に訪れた。
とにかく早く着替えよう。
自分のタンスから一番小さな服を取り出して着た。
「やっぱブカブカかぁ・・・仕方ない。」
次は下か。やっぱり何故か緊急する。
考えても仕方ない。
勢いよく下を脱いだ。
白い細身の脚。やっぱり男のアレはない。
その時朝からトイレに行ってないので尿意が限界だった。
「トイレ!!トイレ」
ガチャっと部屋を飛び出しトイレに駆け込む。
いつものように立ってトイレをしていると・・・!?
「ちょっ!?下ビチャビチャじゃん!!」
男と女の体の違いに悩まされた瞬間だった。
トイレを済ませてトイレの床を拭き手を洗い部屋に戻る。
「女の体ってめんどくさ!!」
ブツブツいいながらジーンズをはいた。
やはりブカブカだった。ベルトを限界までしめてとても女の子とは思えない変な格好だ。
「真矢早く来いよぉ・・・」
どうすればいいんだよ。リビングに降りてテレビを見ながら悩んでいた。
「俺は一生このままなのか!?俺は・・・俺はぁ〜!!??」
悩んで悩んでいつの間にか夕方だった。
ピンポーン!!
はっ!?誰か来た!?
玄関に行きのぞき穴を覗くと真矢が立っていた。学校の時はうっとうしい存在だったけど、今は神にも愛おしくも思えた。