七話目
前回終了時のチヒロのステータスは
7.9571718e+87×8の10乗です。
つまり、8.5439481e+96になります。
また、スキルに変化はありません。
チヒロが出て行ったギルドマスター室での話
「…行ったかな?」
「行きましたよ。」
「いやー、なんていうか。こう、信じられないよね。色々と。」
マセルは、さっきと違って間延びした声ではなく、真面目な声で喋っていた。
ファミレは、もう慣れているようだ。
「…いい加減、冒険者の前で猫被るの辞めたほうがいいんじゃないですか?」
「何をいまさら。私は猫の獣人なんだよ?猫を被って当然じゃないか。」
首を横に振りながら、マセルはそう言って、ファミレは呆れかえった。
「…あぁもう、開き直らないでください。」
「ファミレちゃんは堅いなぁ。どうせチヒロ君のこと心配だったんだろ?わざわざ扉の前で、待ってたりして。受付の仕事はどうしたんだい?」
そのマセルの発言に、耳を真っ赤に染める。
「なっ!?…そこはいいんです!……どうして、今ここで冒険者カードのランクBに上げたんですか?あれって、それ専用のマジックアイテム必要なんじゃないですか?」
「ちっちっちー、私はギルドマスターだよ?そんなのできて当然じゃないか。…で?チヒロ君のことどう思ってるんだい?」
マセルは、身を乗り出してファミレの顔に近づく。
「…そっ、その前に!どうして王金貨10枚も、ポンと渡しっちゃたんですか!あれってギルドの運営代なんですよ!?」
ファミレは後ずさりながらもマセルの口撃から逃れようとする。
「ダイジョーブダイジョーブ。どうせチヒロ君が凄いことしてくれるから、その時に本部から色々と貰えるって。」
「その勘が当たるから、ギルドマスターなんてやってるんでしょうね。…私なんて一生受付よ。」
「チヒロ君に貰ってもらえば?」
「だから!なんでさっきからチヒロ君が出てくるんですか!」
「そんなこと言って~、顔も耳まで真っ赤だよ?まるで、チヒロ君の髪みたいに~。」
「だーかーらー!なんでチヒロ君が出てくるんですか!」
「そりゃあ、期待のルーキーだからねぇ。他に何かあるのかい?」
「…何も…ありませんけど。」
「若いっていいねぇ~。」
「それってエルフである私のセリフじゃないですか?」
「気にしなーい気にしなーい。さて、チヒロ君をどうする?多分領主さまはすぐに手を出しにくるよ?」
マセルは、おふざけはこれでお終いといったように、真面目な表情になって話し出した。
「いきなり本題に入るの辞めてくれませんかね。というか、なんで私だけなんですか?」
「あぁ、チヒロ君の専属受付になってもらうからね。だって、冒険者たちがうるさいんだもん。ファミレちゃんを下さい!ってのが。なんで本人に言わずにギルドマスターの私に言うのやら…。話が逸れたけど、どうする?」
「…もう、あぁ。ギルマスの判断に任せます。」
「分かった。というか、逆にもうチヒロ君が領主さまに何かしそうだよね。」
「領主様が、チヒロ君に手を出したらの話ですけどね。」
「じゃ、お疲れ様。私は本部へ、チヒロ君のことを報告しなきゃだから。」
「分かりました。では、失礼します。」
ファミレは一礼して、ギルドマスターの部屋を出て行った。
「…領主さまになんの報告も行ってなかったら、何の問題もないんだけどなぁ…。多分、報告済みなんだろうなぁ……明日辺りにでも、ここにやって来る気がする。」
マセルは、一人でそう呟いた。
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宴が終わった酒場
「…まさか王金貨2枚も持ってかれるとは思わなかったな。さて、セセラギ、だっけか?そこに泊めさせてもらおう。」
俺は、酒に酔いつぶれて机に突っ伏している冒険者達を見ながら、そう言って、酒場を出た。
辺りは結構明るくなりかけていた。
因みに、俺は酒はほとんど飲んでいない。
一応、体は15歳だからな。
空気が美味い。
こう思うってことは、酒場の中は相当酒臭かったんだろうな。
えっと、ギルドを右に曲がってすぐだったな。
大きな看板で、「セセラギ」と異世界語で書いてある。
なんで日本語でもないのに読めるんだ?……あ、この体ってスーエが創ったんだもんな。そりゃあこの世界仕様にできてるか。
「セセラギ」とアーチ状に書かれたドアを開ける。
「いらっしゃいませ!お食事ですか?お泊まりですか?」
オレンジの髪でゆるいカールがかかっている、背が俺と同じくらいの女の子が、箒を持ちながら接客してくれた。
看板娘なんだろうな。
「泊まりだ。あとで食事も貰おう。」
「何泊ですか?」
「あー、これで泊まれるだけ泊めてくれ。」
そう言って、王金貨を1枚渡した。
「えっ!?お客さん!本当にこれでいいんですか!?」
「…あぁ。正直こうでもしないと使いきれないからな。」
「ありがとうございます!では、お部屋にご案内しますね!」
「こら!今何時だと思ってるの!静かになさい!」
奥からお母さんらしき人が出てきた。
随分と恰幅が良い。ベテランなのだろう。
「だって、今回のお客さん、王金貨1枚分泊まってくれるんだよ!」
「へっ!?金貨じゃなくてかい!?」
「ほら、見てこれ!」
お母さん…女将さんか。
女将さんの眼の色が変わる。
「ありがとうございます!一番いい部屋にお連れ致しますね。」
「あぁ。今日は今までずっと起きてたから、寝かせてくれると助かる。」
「分かりました。…ここがお部屋になります。」
「ありがとう。それじゃあ、俺が起きてきたら飯を頼む。」
「分かりました。」
俺は部屋の中のベッドにダイブしてそのまま、眠った。
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