六話目
「おい!俺が一体何をしたって言うんだ!?」
「俺達は、ただ寝てたドラゴンを殺しただけで!」
「死体を放置したことの何がいけねぇんだよ!」
殺して死体置いてったとか、「お前らもこうするからな」って言ってるようなもんだろ。
これ気付けない辺りが、ランクBどまりの原因なんだろうな。…むしろこれでよくランクBまで上がったな。
もう無視して行くか。
「セネガル、俺が行く。案内してくれ。」
「分かった。」
ギルドの方では、なんか受付があたふたしてるけど関係ない。
酒場では、色々な冒険者達がちゃんとジョッキを空にしてから出て行く。
…残したら罰金でもあるのだろうか。
そんなことを思いながら、セネガルを追いかけた。
…スピードの調節が大変だった。
そうしてやってきたは、先程の門。
そこには、もう大勢の冒険者が集まっていた。
その冒険者たちは、上を見上げている。
つられて俺も見ると、そこにはもう既に緑色のドラゴンが10匹いた。
ドラゴンの大きさが分からないから、距離感が掴めないが、大体50メートルよりは上だと思う。
…これは勘だが、ジャンプしたら届く気がする。
「物は試しって言うしな。」
俺は、そこそこ力を込めてジャンプする。
結果から言おう。
届いた。というか超えた。
その状況で、横を向くとドラゴンがいた。
やはり地面から見ていたのは大分小さかったようで、翼を合わせると20メートルを超えている。
「お、やるか?」
ドラゴンが、俺を見るなり頭から突っ込んできた。
あれか、さっきガルドンに絡まれたからか。ガルドンに着いた血の匂いが俺にも、うっすらついていて、その血に反応しているんだろうか。
ドラゴンが大きく口を開ける。
俺を食おうとしているのか、ブレスを吐こうとしているのか分からない。
俺に遠距離の攻撃手段はまだないので、唾を吐いてみた。
ドラゴンの頭に向かって。
『レベルが上がりました』
その声が頭に響く。
え?俺、唾でドラゴン倒したの?
その疑問に答えるかのように、ドラゴンは羽を力なく下ろし、目を閉じる。
困惑していると、ジャンプの滞空時間も終わり、地面が近づいてくる。
俺は地面に落ちるのはいいが、ドラゴンが落ちたら大変ことになりそうなので、アイテムボックスにしまった。
そして着地する。
冒険者達を見ると、俺の方をじっと見ていた。
…なんか言えってか?
「ドラゴンの死体は、アイテムボックスに入れてある。…そうだ、誰か槍をくれないか?返せないかもしれないが。」
すると、不思議なことに皆無言のままなのだが、槍が20本程度集まった。
「ありがとう。後で酒でも何でもおごらせてもらうよ。」
そう言って、槍をアイテムボックスしまってジャンプする。
比喩抜きで「あっ」と言う間にドラゴンと同じ高さまで到達する。
「喰らえ!」
アイテムボックスから適当に一本、槍を取り出してドラゴンに投げつける。
槍はドラゴンを貫通して、どこまでも飛んで行った。
『レベルが上がりました』
「あと一匹いくか。おら!」
『レベルが上がりました』
槍で貫いたドラゴンは、ちょっと遠かったがアイテムボックスには無事しまえた。
この作業を繰り返して、空からドラゴンはいなくなった。
ドラゴンを全て槍で貫いた後に着地した時、すさまじい歓声に包まれた。
泣いてたり、抱き合ってたり、笑い合ったりしている。
「まずはギルドに帰ってからだな。」
俺は、喜びに溢れている冒険者たちをおいて、先にギルドに向かった。
…ガルドンは今頃何をしているんだろうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
冒険者ギルドの扉を開ける。
すると、さっきの美人な受付が出迎えてくれた。
「お待ちしていました!お話は聞いています!奥までどうぞ!」
すごいニコニコした顔で近づいて言うもんだから、何も突っ込めずに奥に行くしかなかった。
ギルドの奥の階段を上って、なんか豪華なドアの前に行くと、受付さんはノックして、
「ギルマス、入りますよ。」
こう言った、
「どーぞー。」
気の抜けて。間延びしている女性の声だった。
おそらくギルドマスターと呼ばれたであろう、気の抜けた女性はソファーに座っていた。
彼女は茶髪で、猫耳がついている。猫の獣人なんだろう。
背は、恐らく俺と同じくらいだろう。
部屋の中に入って、俺は向かい合うようにソファーに座る。…なぜ受付さんは俺の隣に座る?
「おー、君がチヒロ君かー。今回はありがとねー。私はギルドマスターのマセルって言うんだー。」
「あぁ、俺もまさかドラゴンが倒せるとは思わなかったよ。」
「…あっさり倒したって聞いたけどー?」
やはり猫なだけあって、目を細めると怖い。
「…そういえば、受付さんの名前を聞いて無いんだが。」
「ッチ。」
「え?私の名前ですか?…えっと、ファミレです。…ギルマス、何故舌打ちを?」
「何でもないよー。」
あぁ…女って怖い。
「さぁてー。今回のー、ドラゴン10匹倒した証拠を見せてくれるかいー?」
「あぁ、アイテムボックスに入ってるから。広い場所じゃないと見せられない。」
「はー。そっかー、アイテムボックスかー。じゃあ、先に報酬だけ渡しとくねー。」
…今回のその金ってどこから出てくるんだ?誰も依頼してないんだから、何の金もないはず。
「はいこれー、王金貨10枚ー。」
どこからか、煌びやかで、手のひらよりも少し小さい大きさの金貨を10枚取り出して、俺に渡してきた。
この人もアイテムボックス持ってるんだろうか。
「…すまない。王金貨って、金貨何枚分だ?」
「えっとねー、100枚分だねー。」
「…そうか。」
「あとー、冒険者ランクBまで昇格だねー。冒険者カード貸してー。」
「…あぁ。」
面倒くさそうにしながら、こちらに手を伸ばす。
冒険者カードを渡すと、何やら人差し指でスラスラ何かを書いたかと思えば、冒険者カードが黒になった。
その手際に、ファミレも驚いていた。
「はいー終了ー。指名依頼入った時は断んないでねー。じゃー。」
「え?もうちょっとなんかあるんじゃないのか?」
「多分それはー、領主様から言われるだろうからねー。…そろそろ酒場が騒がしいからー、主役が治めてきてねー。」
「そうかい。」
俺はそう残して、部屋を出た。
…うわ、酒場うるっせぇ。
このあと、酒場で冒険者全員分の酒をおごった。
王金貨2枚が消えてなくなった。
誤字脱字等があれば報告お願いします。