四話目
俺はゴブリンの群れに飛び込んでいった。
この表現を訂正しよう。
正しくはこうだ。
俺はゴブリンの群れに突っ込み、3分の1を轢き殺した。
俺はなぜ表現を変えなければならなかったのか。
なぜなら、俺はさっきまでの、全ステータスが8192だった時の感覚で走り出し、飛び込んだつもりだったからだ。
今は、その512倍で、400万を超えている。
その結果、軽く走ったつもりでも、素晴らしい速度が出ていたのだった。
まぁ、要するには、ただの車かと思ってアクセル踏んだら、スポーツカーだったって話。
ゴブリンの群れの3分の1を轢き殺した。
ここまで言えば、もう俺のステータスは大変なことになっていることは分かるだろう。
確認したくないが、ステータスを確認した。
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ヨシダ・チヒロ
年齢 15
レベル 44
HP 5.1922969e+33
MP 5.1922969e+33
力 5.1922969e+33
物理攻撃耐性 5.1922969e+33
魔法攻撃耐性 5.1922969e+33
精神 5.1922969e+33
運 5.1922969e+33
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なるほど。さっきまでレベル14だったから、ゴブリンを30体殺したことになるのか。
……しっかしまぁ…eまで出てきたか。
まぁ、そんな余韻に浸る間もなく、ゴブリンは襲い掛かってきた。
このステータスの実験でもさせてもらおう。
適当にゴブリンを殴ったら、木っ端微塵に破裂した。
適当にゴブリンを上に投げたら、帰ってこなかった。
適当にゴブリンを睨みつけたら、動かなくなった。
…俺が魔法使ったら、周囲が大変なことになることは分かった。
実験をしていきながら頭に響く『レベルが上がりました』の声は無視した。
そうして、時間が過ぎて、20分後。
「ゴブリンは片付け終わったよな。ステータス。」
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ヨシダ・チヒロ
性別 男
年齢 14
レベル 64
HP 7.9571718e+87
MP 7.9571718e+87
力 7.9571718e+87
物理攻撃耐性 7.9571718e+87
魔法攻撃耐性 7.9571718e+87
精神 7.9571718e+87
運 7.9571718e+87
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ゴブリンを倒し終わって、自分が人間なのか不安になっているところで、セネガルから声をかけられた。
いつの間にか結構近づいていたらしい。
「おいおいおいおい!どうなってんだ!チヒロ、説明してくれないか?!」
…記憶喪失のせいにしておこう。
「…分からない。体が勝手に動き出して、あとはこの通りだ。…頭じゃ忘れてたんだろうが、体は覚えてたってことなんだろうよ。」
「…だが…いや、そうだな。記憶が無い奴に説明なんてできる訳ねぇか。悪い。」
「いや、いいんだ。俺が記憶をなくすようなことをしたのが悪いんだし。」
記憶喪失っていう単語がこの世界にあってよかった。
これからも記憶喪失ってことにしておこう。
「…せっかくだし、街まで送ってくよ。」
俺が内心でかなり喜んでいると、セネガルがありがたい提案をしてくれた。
「いいのか?」
「あぁ。ゴブリンの群れから救ってくれたお礼だ。」
「救ってなんかねぇよ。体が動いただけだ。」
「…まぁ、お前がどう言おうが、俺達はお前に救われたんだ。ありがとう。」
「分かったよ。じゃ、テントの中に入ってくれ。」
セネガルが指さした先には、テントがあった。
「え?移動するんだろ?」
「あぁ、お前を送るんだ。」
「どういうことだ?」
「まぁまぁ、いいから入れって。」
まぁ、悪意は感じられないし、別にいいか。
そんな軽い気持ちで、テントの中に入ったのが間違いだった。
俺がテントの中に入ると、セネガルが何やらジェスチャーでジャックとかと話している。
疑問に思っていると、テントは持ち上げられた。
「おわっ!?ちょっ!待て!」
俺の言葉も届かずに、俺は、テントごと持ち運ばれた。
外からは、楽しそうに笑う声が聞こえてくる。
……だから送るって言ったのか。
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テントに揺られて30分。慣れてくると、ハンモックみたいで意外と気持ちいい。
すると、急に止まり、テントは地面に置かれた。
「はぁ、はぁ、着いた…ぜ。」
「そんなに疲れるんだったら、途中で下ろしてくれてもよかったんだけどな。」
「いや、はぁ、お前は、はぁ、俺達を救ってくれたから…。」
「分かった分かった。いいから休め。」
「はぁ、そうさせてもらう、よ。」
セネガルだけでなく、他の3人も大分疲れているようで、地面に大の字になって寝転んでいた。
「先に、街に入ってるぞ。」
「おう。」
結構立派な石壁が築かれていて、高さは5メートル程度はあった。
その石壁の途中に門があり、そこには門番というか、衛兵というか、そんな感じの奴がいる。
「ここはデハミッシュ王国の辺境、ザッドの街だ。この街に何の用だ?」
なるほど。この国はデハミッシュ王国っていうのか。
「あぁ、冒険者になりに来た。」
「じゃあ、銀貨三枚だ。」
「銀貨三枚…あった。これでいいか?」
スーエが入れてくれた、俺のバイト代を、アイテムボックスから取り出した。
「…アイテムボックス持ちか。」
「珍しいのか?」
「あぁ。俺の知り合いには一人もいないな。」
「そんなにか。で、通っていいか?」
「あ、悪い。じゃあ頑張れよ。冒険者ギルドは、通りの3番目の角を右に曲がったところだ。」
「あぁ。気遣い感謝する。」
そう言って、俺はザッドの街に入った。
「まぁ、まずは冒険者ギルドだろうな。テンプレが無けりゃいいけど。」
俺のこの発言は、やはりというか、なんというか、フラグとして成立した。
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