三話目
「おーい!ちょっと入れてくれないか?」
大体テントから10メートル程度まで近づいたので、話しかける。
「誰だ!」
「だから、知らない人に槍を向けるんじゃない!」
金髪の男が、俺に槍を向けて、それを青い髪の女に拳骨されながら止められていた。
というか、テントの中に連れていかれていた。
金髪の方は背が180程度で、青い髪の方は背が170程度だった。
そうとう仲がいいんだろう。
とか思ってると、茶髪で背が170位の男が話しかけてきた。
剣を背負っているあたり、剣士なんだろうか。
「悪い。あいつは人見知りでな。まぁ、テントは貸すが……こんな場所で一人なんて、何かあったのか?」
……どうする。こんな質問は想定してなかったぞ。馬鹿正直に異世界から来たとか言っても、頭おかしい奴って思われるかもしれないし。というか思われるだろ。
…とりあえず、記憶喪失とかでごまかしてみるか。
「……なぜだか、記憶が無いんだよ。気付いたらこの草原にいて、ステータスを見て分かったことは、俺はヨシダ・チヒロっていう男、っていうことだけだ。」
「…それは…大変だったな。」
セーフ。…よかった。ここで怪しまれたらどうしようも無かった。
「まぁ、自己紹介でもしよう。入ってくれ。」
俺が内心で安堵していると、茶髪の男はそう言ってテントの中に入って行く。俺も、続いてテントの中に入った。
まぁ、テントはテントだという事だろう。風が防げる以外は、あまり外と変わりなかった。
俺が入口から一番遠いところに座り、そこから輪になるように座った。
「俺はセネガル。冒険者ランクはCだ。このパーティーのリーダーもやっている。まぁ、街までは連れてってやるよ。」
茶髪の男が、最初に自己紹介を始めた。
セネガル…どっかの国だったけっか?
まぁいいか。今度は金髪の男だ。
「俺はジャック。セネガルと同じで、冒険者ランクはCだ。」
で、青い髪の女。さっきは見えなかったが、弓を持っている。
「私はランネル。冒険者ランクはCだわ。」
今度は、ずっとテントの中にいたであろう緑の髪をした女。魔法使いなのだろうか、木の杖を持っている。【神眼】で見れば分かるんだろうが、必要な時以外は使わないようにしておこうと思う。
「私はノルン。冒険者ランクはC。」
じゃあ俺の番か。
「俺はヨシダ・チヒロだ。セネガルには言ったが、記憶喪失で、記憶が無い。色々と教えてくれると助かる。」
俺のその言葉に、沈黙が走る。
まぁ、いきなりやって来た人間が記憶喪失だったら普通こうなるよな。
沈黙が数秒走り、俺が何か話題を提供しようかと思ったと同時に、外から足音が聞こえてきた。
かなり数が多い。
「…なんだ?」
セネガルもそれに気づいたらしく、テントの外へ出た。
「なっ!?おい!お前ら、逃げるぞ!」
セネガルは、この世の終わりかのような表情をしながら叫んだ。
「何があった?!」
ジャックは、セネガルが慌てる姿を初めて見たかのように焦り始めていた。
「ゴブリンの群れだ!ざっと数えても100匹はいるぞ!」
「「「なんだって!?」」」
「そんな驚いてねぇで、早くテントを出ろ!」
ゴブリンってあのゴブリンか?異世界でおなじみのあれ?
冷静な頭で、ゴブリンについて考えながらも、促されるままにテントから出た。
「『身体強化』!」
ノルンが、魔法を掛けた。…逃げるのに身体強化まで使うのか?
そう思って、ゴブリンに【神眼】を使って、ステータスを確認してみた。
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ゴブリン
魔物
レベル 1
HP 103
MP 32
力 107
物理攻撃耐性 23
魔法攻撃耐性 22
精神 24
運 34
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大して強くないじゃないか。
…あぁ、数が多いから逃げてるのか。
「おいチヒロ!何ぼさっとしてる!早く逃げろ!」
セネガルが、かなり焦って叫んでいる。
身体強化は流石というべきか、この数秒で4人は俺から20メートルは離れていた。
「大丈夫だ!俺のステータスなら、問題ない!」
「でも!」
ちょっと無視しとこう。
HPが100程度だったら、ここから石を投げても倒せるんじゃないか?
という軽い思いで、丁度足元にあった石を投げてみる。
すると、ヒュンッ!と鋭い音を出して飛んで行った。
数秒後、頭の中には機械的な音声が響いた。
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
貫通したのかよ。しかしまぁ、本当に石を投げるだけで倒せるとは思わなかったな。
魔物だから、8倍上がるんだっけ?
えっと、3回上がったから…8192×8×8×8…いくつだ?
……大人しくステータス見よう。
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ヨシダ チヒロ
性別 男
年齢 15
レベル 14
HP 4194304
MP 4194304
力 4194304
物理攻撃耐性 4194304
魔法攻撃耐性 4194304
精神 4194304
運 4194304
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…これなら何の問題もないだろうな。
俺は、ゴブリンの群れに走って飛び込んでいった。
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