プロローグ
男は突然の痛みで目が覚めた。
男の腕から血が滴っている。よく見れば服はボロボロ、シャツにいたっては赤い染みまでできてしまっている。また、暗めの茶髪にも血がかかっている。
ーー”自分が何者なのか”'なぜこんな状態なのか”
疑問は尽きないがそれらに1つ1つ向き合っている余裕はなかった。
なぜなら、美少女が自分の膝の上に倒れていたからだ。
制服を着ているところを見るに高校生くらいのようだ。髪は黒色でだいぶ長い。 「.........」
理解が追いつかない。いや、追いつけるはずがない。自分のことでも手一杯なのになんでこの子は俺の膝にいるんだろう、なんて考えていると少女がもぞもぞ動き出した。
「う、うーん」
少女は少しすると自分のいる状況に気づいたのか男の膝から飛び降りた。
「あなた、誰なの?」
「こっちが聞きたいんだけど。」
すると少女は怪訝そうな顔で「どういうこと?」と返す。
「いわゆる、記憶喪失ってやつになったみたいなんだよ。」
「嘘でしょ!?、噂に聞いたことはあったけど本当になった人を見るのは初めてだわ。」
男は呆れ半分でなぜか勝手に感動している少女に聞く。
「じゃあ、もう1回聞くけど名前は? 」
「私は寺坂灯。灯って呼んで。」
そう言うと灯は男の腕を自分の肩にかける。
「こんな、血だらけの体を触って大丈夫なの?」
「ああ、気にしないで。血には慣れてるから。」
そう告げると灯は近くに倒れていた自転車を無理やりおこした。どうやら灯が乗っていたものらしい。
「とりあえず、私の家に来ない?どうせ行くところないんでしょ?」
そこに男が躊躇する理由はなかった。
「はい、いかせていただきます。」
笑いながら少女は歩きだす。
「なんで急にそんな喋り方になってるのよ。なんか変だわ。」
「笑うなよ、助けてもらったんだから当然だろ。」
「仕方ないじゃない、こんなにボロボロな人をほっとけるわけないもの。」