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これが君とぼくの日常  作者: 九音さゆさ
第四章 『繋ぐ、手のひら』

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第四十八話『家族水入らず(父不在)』

48.

「オイ紅夜、お前あたしの注いだ酒が飲めねぇってのかい?」

「ぼくは未成年だ、アホ。ついでに言うとそれは酒じゃねぇ。だから飲まないとは言ってない」

「じゃあ飲めよ。ほれ、乾杯すんぞ」

「だから、まず状況を説明してからにしろと言ってんだよ!」

 スリッパで突っ込んだ直後ぼくの後ろに隠れていたカナタが見つかり、とんでもなく誤解されて、いやそりゃ当然だとは思うのだが、おめでたパーティーとか言う凄まじく勘弁願いたい宴を開くと言い出してくれやがった母上さまでしたとさ。


 未だにこっちの説明も向こうの説明も一切なし。

なんでいるのかもわからないし誤解だと言っているのだが聞きやしないしでもう散々だ。

 家に帰ってきたテンションからなのかテーブルの上にはやたらと豪勢な晩ご飯が用意されている。

 うちの両親の料理は正直言ってとてもうまい。

いやまぁ、子供の頃から食べてきた味だからやっぱ口に合うって言うのもあるんだろうが。


 しかし、味はともかく量がいつも凄まじいのだ。

直径40センチくらいの大皿に山盛りの料理を八品。

 三品くらいで十分だと思うのだがいつも量がすごい。

そして、全部平らげてしまうのが彼らの特徴である。

 要するにものすごい大食い夫婦なのだった。

 けどぼくもアズも普通の食事量だ。

2人みたいな大食いはできません。

 父さんもいないのにこんなに作って食い切れるのか?


 結局乾杯させられ、食事は始まった。

ほとんど話聞いてくれないからなぁ。

「んで、紅夜。誤解だって言うならその子なんなのよ。誘拐でもしてきたのかい?」

「人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇよ。まぁ、うまくは言えんけど、いつものだよ」

「何、アンタ人まで助けるようになったのか?そろそろ加減ってのを覚えないとさすがのあたしも怒るよ」

「あー、いや、この子は人間じゃないよ。鞠つき童子って言う精霊みたいなもの」

「鞠つきっつーと、あぁ、アレね。因果なことだわ。よりにもよって鞠つき童子連れてきたの、アンタ」

「因果なこと?なんかあるのか?」

「なんかある、なんかあるねぇ。まぁ、あると言えばある。ないと言えばない。事実かどうかはよくわからん真偽不明の言い伝えみたいなのはあるって感じね」

 いつも結構ふざけた感じの母さんにしては割りと真面目そうな感じで思案しているようだった。


「うちの家系をさかのぼっていくと鞠つき童子と結婚して子供生んでるのがいる」

 鞠つき童子と結婚して子供を?

「どういうこと、それ。子供生まれるの?」

「だから知らないっつーの。そういう言い伝えがあるってだけよ」

「んじゃもしかしてそれでこの家って栄えてたりする、とか?」

「いや、鞠つき童子は個人に憑くんじゃなかったっけか?家には憑かないんじゃないの?」

「あー、そっか。んー、じゃあ幽霊とかが見えやすい家系だったりとか?」

「そりゃアンタが特別なだけじゃねーの?あたしも父さんも家の外で見たことない」

 じゃあランの情報は間違いなく事実かぁ。

いや、疑ってたわけではないんだけどな。


 んー、しかし、人間じゃないものと交わって産まれた子供はいったい、なんなのだろうか? もしかしたらぼくらの一族はすでに人間ではないものになってしまっているのではないだろうか。

いやまぁ、ばかばかしい話だけれど。

 しかし、そのことがあったからぼくにこんな特殊な力が備わったのかもしれない。

いいものなんだか悪いものなんだかわからないけれど。


「そりゃアンタにしか助けらんないかも知んないけどね。けど、全部背負うことはできないんだよ。そろそろ諦めなよ。いつまでもあたしたちはアンタをかばってやれないよ」

「……わかってるよ、そんなのわかってる」

「しかし、拾ってくるにしてもアンタが拾ってくる子は大体厄介ごとを引っ張り込んでくるだろ。もう十分痛い目見てるだろうになんで懲りねぇのよ」

「厄介なんかじゃ、ないから」

「ふーん。ま、いいけどさ。いいんだよ。だってアンタは結局なんだかんだでちゃんと考えれる子だ。折り合いがつけれるようになるまでせいぜいわがまま押し通してあたしたちに迷惑押し付けて来いよ。それくらい受け止めてやるからさ」

「んぁー、ったく。うちの母上さまはマジでかっこよすぎるっつーの」

「惚れるなよー?」

「調子にのんなよロリコンが」

「ショタもいける!」

「ぼくはショタじゃねぇよ!?」

「いや、小っこいし父さんに似てかわいー顔してっからじゅーぶんショタだわ」

「うっせ!黙れ!」

 こうやってバカな話をしたり心配してくれたり。

なかなか素直に甘えたりとかはできないのだけど、やっぱ母さんも父さんも大好きだった。

 ちゃんと、ぼくのことをわかっていてくれる。

それがどれだけ救いになっているか。

 家族やアヤたちがいてくれるからこそ、ぼくはぼくらしくいられる。

 何が欠けてもやっぱり、ぼくはぼくでなくなってしまう気がするのだ。


「んで、母さんは今回なんで帰ってきたんだよ。四年とか言ってなかったっけ?」

「あぁ、日本と向こうで一緒にやらなきゃいけないことがあってな。七月半ばまでこっちにいる」

「え、マジで?あー、だから父さんは向こうにいるのか」

「そーゆーこと。相変わらず紅夜は理解が早くて助かるわ」

「なんつーか、タイミングいいなぁ。ぼく二十六日から六泊七日で修学旅行なんだよ」

「何、その間家にいないの、アンタ?」

「うん。だから、食事とかお願いします」

「あー、えー?梓、アンタまだ料理できないのー?そんなんじゃ嫁行き遅れるっつーの」

「えぅ、だって両手同時に動かせないんだもん……」

「あはははは、アンタはいつまで経っても子供だなー、安心したわー」

「あ~ぅ~あ~ぃ~」

 もみくちゃにされるがままになるアズ。

 しかしまぁ、久々の母さんだしなんだかんだでやっぱアズもすごく嬉しそうだった。

お母さん子だしなぁ、アズは。


「修学旅行かー。どこ行くん?」

「あぁ、温泉だよ、温泉」

「おんせん、ってあの温泉?風呂の?うひゃひゃひゃひゃ、学生の行くとこじゃねーよ!」

「ったく、マジでなんの冗談だよって感じだよなー。しかも温泉旅館に六泊とかありえん」

「地味すぎるな。まぁ、温泉は好きだけど修学旅行はもっと派手に行きたいとこだなー。私立だし、ハワイとか」

「ハワイに行くやつらもいたなぁ。あ、ナツは確か北海道だよ」

「いいねぇ、涼しいだろうし」

「いや、日本だし暑いには暑いだろ……」

「細かいこと気にすんな。フィンランドとかすっげぇさみぃんだよ。長袖着用だぞ、長袖。でも向こうの人間半袖のやつもいんの。環境の違いだよなー。あいつら日本じゃ暮らせねぇぞ、絶対」

「日本は湿気が多いとか言うよな」

「そ。マジあっちぃよ、日本。むわっとすんだよな、空港に着いた瞬間に。不快指数どんだけよって話」

「まだ六月なんだけどなー。雨降ってるけどやっぱもう暑くなってきてる」

「梅雨明けたら本格的な夏だよなぁ。たぶんその頃まではいるだろうけど、そのあとは当分極寒だからな。それを考えるとどっちがいいのか選びがたいとこだわ」

「ま、せいぜい日本の気候を楽しんでいきなよ。あと、暇な土日とかみんなでちょっとだけでも出かけよう」

「そだな。2人が暇なときに遊びに行くか。あたしはどうせ基本家でやってるから前もって決めとけば別に一日くらいなら空けれるし」

「んじゃ予定確かめとくよ」

「アズも確かめておくー」

「よっし、んじゃメシも喰い終わったし、風呂入るか!」

「なんだと!?もう食い終わってやがる!?」

 ガチでめっちゃ驚いた。

ぼくもチョコチョコつまんでたしアズもつまんでいたのだが。

 母さんはいつ食べていたのかまったく気付かないうちに完全に平らげられている。

 あの量があの細身のいったいどこに消えたんだ?

全部栄養分になってるんだろうなぁ。


 なんであんなにまだまだ背が伸びてんだろうこの人。

現在180後半。

そのうち190行く気がする。

 まだ身長が伸びているらしいのだ。

長身ですらりとした体型。

 なんと言うかスマート、スレンダーと言う言葉がぴったり合うような人なのである。

マジでかっこいい。

 外見も性格も、変態であることを除けばだが、すごくかっこいい人なのだ。

 憧れだったりする。

しかし、背は残念ながらぼくら兄妹には遺伝しなかったようだった。


「梓、紅夜、一緒に入るぞ!」

「入らねぇよ!?」

「ケチなこと言うなよ。だいじょーぶだって、別に紅夜のが小さくてもなんにも気にしやしねぇよ、あたしはお前の母さんなんだからな」

「そういう問題じゃねぇよ!誰が母親に大きさを誇示したいと思うんだよ!どうでもいいよ!」

「だったら一緒に入ろうぜ」

「だが断る!」

「しょうがないな。それじゃアズは抜きで2人で入ろうじゃねぇか」

「どうしてそうなった!?むしろもっと嫌だわ!」

「んー?わがままだな紅夜は。仕方ない、んじゃアズと2人で入ってきていいぞ。待っててやる」

「どうしてぼくが誰かと入ることが決定している!?」

「面白そうだから!」

「いい笑顔で親指突き立ててんじゃねぇよ!?へし折るぞ!?」

「ふ、なら仕方ない。そんなにカナタと2人で入りたいならあたしは邪魔しないでおいてやろう」

「ちょ、ま」

 カナタとぼくをつまんでそのまま風呂場へ連れて行かれ、ぽい、と脱衣所の中へ放り込まれる。


「いや、待て待て待て、これはさすがにまずいって!?」

「大丈夫だ、問題ない」

「いや、問題しかねぇよ!?ってかあんたさっきからやたらと変なネタはさんでくんじゃねぇよ!それ死亡フラグだ!」

「さすがあたしの子だ。よくわかってるじゃねぇの」

 けらけらと笑った母さんはそのままがっちりと扉を押さえ込んでしまっていた。

開けようと試みたが力では完全に母さんに敵いそうもない。

 いやはや、どうしたものか。


「母さん、あんたマジでいったい何がしたいんだ」

「ノリ!」

「ノリかよ!?ノリだけでここまでするなよ!」

「いやー、だって久々の紅夜だしこれくらいやっときてーじゃん」

「ここまでひどい悪乗りは初めてだー!」

「大人の階段、昇って来いっ」

「黙れボケが!?マジで開けろ!?」

 まぁ、そんなこんなで、騒がしくも楽しい母さんのいる生活はドタバタと始まったのだった。

 疲れてぐったりするぼくを見てカナタはなんだか嬉しそうに笑っていて。

 その笑顔に、まぁ、なんでもいっか、なんて思っちゃったりして。

ちょっとだけ、またカナタとの距離が縮まったような気がした一日だった。

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