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これが君とぼくの日常  作者: 九音さゆさ
第四章 『繋ぐ、手のひら』

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第四十七話『激烈苛烈かーさん』

47.

 いやまぁ、そういう人なんですよ。

なんと言うか、戸惑いすぎて何を考えているのか自分でもよくわかっていなかった。

 うーむ、晩ご飯とか豪勢にしたほうがいいのか?ではなく。

 えぇまぁ、絶賛混乱中の秋月 紅夜でございます。


 あれから一晩よくわからんままに過ぎて現在十九日朝になっていた。

学校に着くといつも通り眠っているアヤがいて、その頭をまたなんとなく撫でながら思考の渦へ。

 正直なところ両親がどんなことをやるために海外にまで行っているのか知らないからはっきりとは言えない。

 しかし現実問題、四年もかかるとか言ってた開発がほんの半年かそこらで終わるわけがない。

いくら優秀でもそこまで縮められるはずがないだろう。

 だとするとなんだ?

一旦帰ってくるだけ?

 いや、つーても長期連休のあるような仕事ではなかったと思うのだが。

長期連休どころかほとんど休みだったことなどないと思う。


 こっちにいた頃がそうだったのだから普通に考えれば向こうでもそうだろう。

よくわかんねぇなぁ。

 まぁ、昔から両親の行動、と言うか母さんの行動と言うのはマジでまったくもってわからないのだが。

 なんと言うか直結思考型と言うのか?思考直結?

 まぁどちらにせよ、考えたら即行動!な人である。


 おかげで家族は振り回されるわけだが。

 しかしまぁ、父さんと母さんはお似合いと言うか、それ以外にはありえないくらい相性のいい夫婦だと思う。

 んー、なんと言うか、ぼくとアヤのコンビのような。


「……いや、何考えてんだぼくは」

 だからぼくは別にアヤに対して恋愛感情なんて――

「にー」

「オイ、耳が赤いぞ」

「最近こーがやたら積極的だから照れてるにー……」

 起きていたらしい。

腕枕の中から口元だけ隠してぼくの方を見るアヤは戸惑っているようでも嬉しそうでもあると言う不思議な表情をしていた。


「いやな、お前の銀髪ってすごく綺麗だから触りたくなるんだよ」

「ふっふっふー、アヤちん結構お手入れしてるからこの髪は自慢だったりするんだに!」

 恥ずかしさをごまかすためか、立ち上がって腰に手を当てて笑い始める。

しかし長くはもたずにすぐにへたれた。


「うーぁー」

「無理すんなよ」

 低血圧でめまい持ちなアヤは寝起きそんなに激しく動けない。

だから急に立ち上がったせいで脳に血流が行かずに一気にめまいが来たのだろう。

 しんどそうな顔をして再び机に突っ伏したアヤの頭を苦笑いしながら撫でてやる。


「あのね、こー」

「んー?」

「こーはさ、やっぱりかなちんのことが好きなの?」

「あー、そうだよ。やっぱわかってたか」

「女の子は基本的に恋心に鋭いんだよー」

「そんなもんか」

「そんなもんに」

 なんでいきなりそんな話をしたのか、わからない。

あー、いや、うん。

嘘だ、わかってる。

 気付かない振りをしているだけだ。

やさしくされすぎて、勘違いしないように、確認するために。


 ホント、ぼくってひどいやつだよなぁ。

 そんなアヤの気持ちに気付きながらも態度を変えないで、こんなことしちまう。

たぶん、アヤに好きになってもらえるような人間ではないだろう。

そんな資格も、ぼくにはない。

 アヤには幸せになってもらいたかった。

けれど、それをぼくはあげることができない。

 なんだかなぁ。

世の中ってのはホント、うまく行かない。


 違うな、ぼくは答えを出してアヤがいなくなるのが嫌なだけなんだ。

今の関係性が一番心地よくて、気楽で安心できる。

 答えを出したら今までのようには行かなくなってしまうだろう。

友達のままでいられたとしても、やはり今までのままというのは難しい。

 無邪気には笑い合えなくなってしまうだろうから。


「大丈夫だよ」

「あ?」

「こーは悩まなくてよくなるよ。だから、大丈夫」

「なんのことだ?何を言っている?」

「こーはちゃんと、わかってくれるから。それでいいの」

 なんなんだ?

なんでこうもアヤはわかったようなことを言う?

 まさかまた何かこの先に起こることが見えているのか?

 この先、何が起きるって言うんだ?


「アヤ、まさかお前」

「おっはよんよん、ふったりっともーっ」

 ビシッと片手を上げてぼくらに突っ込んできたのはナツだった。


「あー、おはよ。朝からテンションたけーなぁ」

「おぁにー」

「アヤメちんは今日も眠そうだにゃー」

「そう言うなっちゃんは元気そうだにー」

「ふっ、これでも毎朝納豆とヨーグルトと海苔をご飯にかけて食べてるから元気モリモリを保っているわけなのだよ!」

「なんだその気持ち悪そうな朝ごはん……」

 なんでヨーグルト入れたし。

ご飯にかけるならヨーグルトは別にしろよ。


「それよりちょっと朝早く来てみた!褒めてもいいよ!」

「どんな態度だよ……。それにまったく褒められたもんじゃないな。ぼくらよか遅いぞ」

「コーヤたちが早すぎるだけだってば!」

 そもそも自己責任だからほめるとかけなすとかそういうもんじゃないだろ。

ナツが早く来てもぼくらには特に何の得もないし。

 むしろうるさいときもあるくらいである。

 いやまぁ、ハルがいなくなってからはやっぱりだいぶ大人しくなったけど。


「そう言えばコーヤたちってなんかあの天才君と修学旅行一緒なんだって?」

「あ?天才君?」

 そう言われて思い浮かんだのはアキラだった。

そんなあだ名で呼ばれているのかあいつ。

 いやまぁ、ふさわしいとも思う。


「あー、確かにうちらの班には天才がいるよ。あいつそんなに有名なの?」

「有名だよー。うちらの学年でテスト全教科満点取るのって2人しかいないし。ってか全教科満点ってありえないよね、フツー」

 2人ねぇ。

アキラとキリか。あの2人なら難なく満点取ってしまうんだろうなぁ。


 しかし、そんなこと知らなかったな。

定期テストの学年上位10名は名前を貼り出されるのだがぶっちゃけ自分にはまったく関係がないので見てない。

そんなに成績よくないからなぁ。

 だがぼくよりはるかに低いナツが知ってるってことは結構知名度は高いんだろうか。

ちょっと周り気にしなさ過ぎたかなぁ。

 今度からもうちょい気を付けてみるようにしよう。


「ぶっちゃけテストって満点なんてあるの?と思ってたよー」

「お前はもっと勉強しろよ……」

 課題もたまに、と言うか忘れてること多くて写させてーとか言ってくるようなやつなのである。

 ノートも前見たことがあるがすかすかで書いてある意味があるのかどうかすらわからないレベル。

そしてテストは赤点ギリギリ回避、たまに回避できてないときもあるくらいだ。

 満点とは言わずとも赤点ギリギリ回避、ってのは止めた方がいいと思うんだがな。

そのうち留年するぞ。


 ちなみにアヤはテストの点数は悪くなかったりする。

ただ、授業中に寝ちゃったりするので通知表はあまりよくない。

 しかし、それでもテストでできちゃうのがすごいところなんだけどな。

天才肌と言うかなんと言うか。

 やればめちゃくちゃよくできる、やらなくてもできるタイプ。

羨ましい限りである。



 カナタを資料室で見つけてアヤと一緒に3人で研究棟へ向かっていた。

時刻は放課後になっている。

 いつも通り部活動だ。

つってもほとんど何かすることがあるわけでもないんだけど。

 いつも通りわいわい雑談したり修学旅行についてちょこちょこ話して時間は過ぎていく。



 心配していた自宅の方へ到着したのは時計が大体六時半を指した頃だった。

玄関に入ると靴が普段より一組増えている。

一組?なんで?

 見た感じ母さんの靴っぽいが。

父さんの靴はどうした?


「ただいまー」

 返事もなかったのでそのまま居間に行くと――

 アズを思いっきり抱きしめたままいろんなとこ撫でたりもみまくってる変態女がいた。


「おーおー、ちょっと見ない内にマジで色々と育ってやがんなぁ、梓~。男子三日会わざればかつ目して見よ、って言うけど女の子もそうみたいだな、こりゃ」

「う、うにゅ~、変なとこまで触んないで~」

「うひゃひゃひゃひゃ、ここか~?ここがええのんか~?」

「オイ、ヤメレ変態」

 スパーン、と小気味いい音を立ててスリッパでその頭を引っぱたく。


「おぅおぅ、ご挨拶じゃねぇの?仮にも半年くらい会ってなかったお母さまの頭をスリッパで叩くたぁどーいうこった?あん?」

「いや、人間として当然のことをしたまでだ」

 つーことで、この少女嗜好な変態女がうちの母上さまなのであった――

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