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これが君とぼくの日常  作者: 霧間ななき
第四章 『繋ぐ、手のひら』
46/61

第四十六話『両親』

46.

「ただいまー」

「あ、おかえりー、お兄ちゃん」

 家に帰るとちょうどアズがマグカップを片手に二階から降りてきたところだった。

なんか前にもこんなことがあった気がするな。

 いや、よくあることか。

 割と自室で過ごすことが多いぼくら兄妹だが何故か部屋を出たときにばったりと出会ったりとか今みたいなことがよくある。

ランは全部ぼくのせいだとか言ってたけど。

 意味がわからない。


 どういうことだよぼくのせいって。

 アズもぼくも特に意識せずに行動してるだけだっつの。

 ただの偶然だし。

アズなんかは運命で結ばれてるね!

とか嬉しそうにしていた。

 まぁなんと言うか、家の外でも偶然会うこととかたまにあるくらいだ。

家族ってのは結構そういう縁があるのかもしれないな。


「コーヒー飲む?」

「あぁ、頼む」

「りょーかーい♪」

 鼻歌交じりで足取り軽く台所へ入っていくアズを微笑ましく思いながら二階の自室に戻って着替えを置いてから台所へ。

 うちは結構広い家なので一階が六部屋と台所、食事室、居間が別々に結構大きなスペースで取られていた。

二階は別の間取りで十部屋ある。


 お客さんが来てもまったく困らないようにできているわけだ。

 とは言えぶっちゃけ維持するだけでも結構大変なのだが。

 使ってない部屋が多すぎる。

やはり生活空間ではない部屋と言うのは空気の動きがないのでほこりや悪い空気が溜まりやすい。

 そのため毎週日曜日は掃除で結構時間が潰れるのだ。

用事があるときはやらないこともあるが。


 うちの家族たちは結構いっぱいいるのだが大体アズの部屋かぼくの部屋で寝てるし。

寂しがり、と言うのもあるだろうし、アズに懐いている、と言うのも大きいのだろう。

 アズも寂しがりだし、みんなに囲まれて寝るのは安心できるようだった。

 ぼくの部屋ではランやくー子にあるは、豆狸の「くくり」、六つ又尻尾の猫又の「ゆーり」、尻尾のない白猫妖怪の月猫ルイの「きらは」なんかが一緒に寝ている。

 アズの方はもはやどれだけ一緒に寝ているのかわからないレベルだ。

一部屋一部屋も結構大きいのでそれだけ一緒に寝ていても特に狭いと言うことはなかった。

 閑話休題。



「あ、お兄ちゃん、できたよ」

「おー、サンキュ」

「えへへー、ハグしてもいいんだよー」

「よしよし、ハグしてやろう、ぎゅー」

「きゅー」

「またヤってんのカヨ。ホントナカいーな、オマエら」

 父さんの書斎の方から流れてきたランが手に持った本から目も逸らさないままにぼやいている。

いちいちトゲがあるんだよなぁ。


「仲いいから羨ましいのか?」

「んなワケあっカヨ。つーかオレ、そんなにナカいーキョーダイみたコトネーんダヨ」

「今まで憑いた家でっつーこと?」

「そーゆーコト。イセイのキョーダイとかまずほとんどハナシもしネーナ、フツー」

「そんなもんかね」

「イシキしハジメたコロからヨソヨソしくなんダヨ」

 あー、まぁなんとなくフィクションとかでもそんな感じのあるし、そういう兄妹もリアルにある気がする。

 しかし、姉が上だと結構弟に構う姉弟見る気がするな。

兄弟だとまちまちか。

姉妹は結構どこも仲がいいイメージだ。

 やっぱ性別って難しい問題なのかもなぁ。


「まぁ、よそはよそ、うちはうちだよ」

「オメーはそーいうツゴーのいいことだけはポジティブだヨナ」

「それが人間ってヤツだろ」

「ゴウのフカイこった。まぁ、ちげーねーケドナ」

「細かいことばっか気にして大切なもんなくすよか、気にしないでこうやって愛し合えるほうが素敵なことだと思うんだよ」

「カジョーすぎんのもモンダイだとおもうゼー。ま、どーでもいーケドヨ」

 カジョー、過剰か。

ま、ちょっとスキンシップ激しいとハルたちに言われたこともあったけど。


 その辺はたぶん育った環境のせいだよなぁ。

あんな両親に育てられたらこうなりますよ。

どうぞお試しください。

オススメはいたしませんが。

 といった感じだった。


 スキンシップがめちゃくちゃ激しい親なのだ。

めっちゃ楽しいし、大好きなのではあるがおかげでぼくもアズもスキンシップに対して抵抗がほとんどなくて学校で微妙な反応をされがちだった。

 ハグとか好意をはっきり口にしたりとか、そういう素直さってあまり現代日本では受け入れがたいものらしいからなぁ。

 ちなみに両親共に結構海外に行っているからあぁもスキンシップが激しいのだと思っている。

 欧米では結構あぁいうの普通みたいだし。

まぁつまり、欧米式だと思ってもらえればいい。


 ちなみに意識していないのだが結構ぼくは身振り手振りが激しい方らしい。

ツッコミとか全身で動いていたりするので笑われることもあって結構ショックを受けた。

 普通ではないらしい。

普通だと思ってたんだよ。


「そういや修学旅行中の食事どうする?ぼくが七日間いないわけだが」

「あー、そういやオマエコンドシューガクリョコーだっけ。メンドクセーナ」

「うー、アズに任せて、って言えればよかったんだけどー」

 アズはあんまし料理がうまくない。

できないわけではないがレパートリーが少ないし。


「んー、まぁいざとなったらアヤんちに頼むか。もっと甘えていいって言ってくれてたしな」

 知っての通りアヤとぼくらは家が隣同士で幼なじみである。

 とは言えうちの敷地がバカにでかいので隣とは言え結構離れてはいるのだが。

だが子供の頃から一緒に遊んでいたし、アヤの家に遊びに行ったりもしていた。

 逆にアヤがうちに来たりもしていたのだ。

家族同士の仲も特別いいと言うほどではないが会えば話すくらいにはいい。


 で、なんかよくわからないが割りとおばさんにアズは気に入ってもらえているようで、もっと甘えてきてもいいのよ、なんて言われていたりした。

 あんまり他人に甘えるのは良くないと思うのだが。

しかし毎日何かを買って食べたり注文したりするのもなんだしな。


「うー、できるだけがんばってみるよー……」

「ははは、まぁ、無理すんなよ」

 アズの方はおばさんが苦手なようだった。

いやまぁ、気持ちはわからんでもない。

 アズはかなりかわいい部類に入る上、最近結構スタイルが良くなってきた。

アヤがアレなので、どうも着せたい服が似合わなくて困っていたところにちょうどよくいい着せ替え相手ができてしまうわけだ。

 かわいがられているのがわかるのであまり無碍に扱うこともできず、いつも着せ替えられまくっているアズだった。


「母さんたちがいたら問題なかったんだけどな」

「ないものねだりだよ~。確かあと最低でも四年は戻ってこないんでしょー?」

「あの両親が何をやっているのか未だにぼくにはわからないんだけどな……。まぁ、確かあと四年で一段落着くからそこで帰ってくるって言ってたよな」

 現在海外出張中なうちの両親。

確か今は北欧の方に行っているはずだ。


 フィンランドだっけ?

 詳しくは知らないんだけど何かの開発とかの仕事、だった気がする。

あんま教えてくれないんだよなぁ。

結構機密性の高い会社らしかった。

 今年の一月の中旬から行ってしまっている。

 四年ほど開発のために北欧行ってくるから待ってろ、とかなんとか。

いきなり宣言して次の日に飛び立って行ったという。

もっと前に説明しろよ。

 普通だいぶ前にわかってんだろうが、と思わないでもなかった。

つーかめっちゃ思ったし。

 だって飛行機とか住所とかいろいろ手続きも必要だろうし準備も必要だったはずだ。

なのに前日に言っていきなりとか。


 いやまぁ、そういう人なんだけどなー。

 ぼくは少しだけため息を吐きつつ完成した晩ご飯をテーブルに運ぶ。

今日はナスの味噌煮込みとぶりの照り焼きとポテトサラダ。

 ナスの味噌煮込みがいつもよりうまくいった気がしていた。

ちょっと自信作。

 アズもぼくも煮物が結構好きなのでうちの食事は結構煮物中心である。


 ポテトサラダを皿に盛っていると家の電話の着信音が鳴り響いた。

「あー、アズ、出てー」

「うんー。はいはい、今出ますよ~っ」

 聞こえるわけもないのに何故か電話に出る前って微妙に言葉が出ちゃったりするんだよな。

 そんなアズにちょっと笑いながらポテトサラダもテーブルに運んでいく。

 しかし、家に電話とか珍しいな。

友達とかなら携帯にかかってくるし、最近勧誘とかも厳しくなったんだかなんなんだか、ずいぶん減ったから家の電話とかほとんどかかってこない。


「あ、お母さん。ひさしぶり~。どしたの?」

 母さんか。

なるほどねー。

タイミングいいなぁ。

 うちの家族ってホントこういうタイミングあんまり外さないんだよなー。

運命で繋がっているというかなんと言うか。

 まぁ、あんま運命とか信じていない性質なんだけどな、ぼくって。


「うんうん、大丈夫だよ。お兄ちゃんいるしー。あはは、ならよかったー。そうなの?すごいねぇ。えー?いいじゃんかー」

 様子見みたいな感じか。

今まであんまりかかってきたことがなかったけどなんだかんだで心配してくれてんのかな。

 女同士の会話と言うのは結構長くなりがちだし、どうすっかな。

晩ご飯冷めちゃうかもしれない。


「へ?え?どういうこと?えぇ!?」

 と思ったら、なんだかアズの様子がおかしい。

驚きのあまりぼくの方をめちゃくちゃ見てる。

 いや、なんだよ?

首を傾げるとアズも首をかしげた。


「どうしたんだよ?」

「あ、うん。わかった、けど」

 まだ話中か。

しかしアズはこっちに目をやったまま眉をハの字にして困った顔をしている。

 ぼくに関係のある話なのか?


「うん、じゃあ気を付けてね。うん、またねー」

 こくこくとうなずいて、アズは受話器を下ろした。

「母さんどうかしたのか?」

「あー、えーっと、ね?たぶん、なんだけど」

「うん?」

「お母さん、明日の夜、うちに着くって」

 は?なんだそれ?

え、どういうことなんだよ?

帰ってくるってこと?

四年かかるんじゃなかったのかよ?


 と言うことで、よくわからないがうちの母は明日の夜、うちに帰ってくるらしい。

 いや、マジでわからなさ過ぎるっつの――

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