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これが君とぼくの日常  作者: 九音さゆさ
第四章 『繋ぐ、手のひら』

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45/61

第四十五話『紅夜の能力』

45.

「穂結温泉は元々自然に湧き出た温泉だったようだ。古くから湯治のために使用されている非火山性温泉で熱源は不明ということだ」

 六月十八日水曜日。

朝から空は雨模様。


 ぼくは傘だったつぼみがなくなったあとで買った和傘で登校していた。

思えば今の傘ももうかれこれ四年近く使っているのか。

 なかなかお気に入りだったつぼみを忘れられず、いい傘に出会えなかったのだがたまたま寄ったデパートでめぐり合った。

 碧の和傘でかなりのお気に入り。

つぼみのときの一目惚れとは少し違ったがやはり長く使えば使うほどなじむし、この傘も大切な傘だ。

 閑話休題。


 進学校と言うわけでもなく、結構就職率のいい学園なここでは行事にも結構力を入れているようで、これから週三時間ほど修学旅行準備に当てられることになるらしい。

 昨日が特殊ケース、ということで基本的に月水金の三時間目にホームルームを設けてそこで計画していく。

 とは言えぼくらはあんまり遊びに行くって感じではない気がするんだけどなぁ。

いやまぁ、修学、だし間違いではないと思うけどさ。



 そんなこんなでアキラが今から調べてきてくれた情報を話し始めたところだった。

「熱源不明って、そんなもんわからないもんなのか?」

「基本的には火山の下のマグマを熱源とする火山性温泉と非火山性温泉に分けられる。

 非火山性のものは地下深くになればなるほど温度が上がっていく地温勾配と呼ばれる現象に従って高温になった深層熱水のものがほとんどだ。

 後者のほとんどがボーリングによる掘り出しによって湧出、もしくは人工的にくみ上げたものになるな。

 しかし、非火山性温泉には地温勾配では説明しきれない高温のものがある。

 それが熱源不明、ということだ。

 仮説はあるがまだ証明はされていない」

「泉質とかが結構特殊だったりするんですよー」

「ほー、さすがに温泉好きだけあってよく知ってるな」

 珍しくハナが横槍を入れてくる。

普段あまり積極的に会話に入ってこないけどハナの方は話せばちゃんと話せるんだよな。

 キリは口数がめちゃくちゃ少ないが。


「その通りだ。火山性のものは火山ガス由来の成分を含んだ温泉になる。地温勾配の場合地下深いため海水由来の塩分や有機物が含まれることが多いな」

「なるほどな。昔は海の中だった部分が多いからか」

「そういうことになる」

「穂結温泉の泉質ってわかりました?」

「細かいことまではわからないが複数の温泉が沸く土地のようだな。旅館が八つほどあるのだがそれぞれ特徴のある泉質の温泉だそうだ」

「なんだか楽しそうですね!」

 お前はすごく楽しそうだよな。

しかしアキラとぼくは微妙にうんざり顔だった。

 いやはや、同意見とは思わなかったが。


 ぶっちゃけ、泉質とかどうでもいい。

 入れれば別にどんな温泉でも構わないのだ。

温泉自体が嫌いとか言うわけではないが泉質とか効能とか、そういうのは別に気にならない。

 結局適度な温度と景色、それだけあれば十分なのだ。

ま、女の子にとって見れば肌に効果があるとかそういうの、興味あるんだろうけどさ。


「今回六泊七日のため六つの旅館をめぐる形になる。だが、向こうの温泉協会の好意で八つの旅館の温泉をめぐることができるパスポートのようなものを発行してくれることになった」

「おー、昨日の今日ですごいな」

「いささか怪しい感はあるのだがな。PDCと名乗ったら即パスポートの件を持ち出してきた」

「PDCってそんなに有名なのか?」

「葦原学園のPDCは卒業者が全員神明会でかなりの活躍を見せているからな。恩を売っておくのは損にならないといったところか」

 なんと言うか、現金な話だった。

そんなに期待されてもアキラやキリはともかく、ぼくなんかはそうそう活躍できないと思うけどなぁ。

 ハナとかアヤは固有スキルがかなり特殊だし結構役には立ちそうだけど。

ぼくのも特殊には特殊だけど正直なところあまり事件解決とかに役に立つ力ではないしなぁ。

 下手をすると味方の足を引っ張る羽目になりかねないという諸刃の剣だ。


「なんつーか、もうちょいマシな力はなかったもんかね……」

「何を言っている?」

「あーいや、ぼくの力ってあんまし役に立たない力だしもうちょいマシな力はなかったもんかと」

「オレから見ればお前の力はのどから手が出るほどほしい力だがな。霊体を可視化できる、そして妖怪を使役しているお前と言う存在。非常に使い勝手のいい力ではないか」

「使役じゃねぇよ……」

 家族だから手伝ってもらってるだけだっつの。

しかし、少し興奮した様子のアキラには悪いがぼくの力はそんなにすごいもんでもないんだけどな。


「お前でもやっぱ気付いてねぇのか。まぁ、よっぽど特殊な力ではあるんだろうが」

「気付いて、ない?」

「え?コウヤさんの力ってそういうものではなかったんですか?」

「違った?」

 アヤ以外は全員驚いていた。

 つーか、アヤは聞いてないだけのような気もするが。

 アイツ、座ったまま寝てないだろうか。

頭がふらふらしてるぞ。


「まー、隠すようなもんでもないし言っておくよ。ぼくの力は『相手を自分と同じ性質にする』っつーだけの力だよ」

 ただ、それだけなのである。

 そう、最初の島谷のときからおかしかった。

 アイツは鬼化していた腕でぼくに殴りかかってきていたはず。

なのに、手首辺りまで人間の手に戻ってしまっていた。


 それで、彼は混乱したのだ。

鬼化した腕で殴ったはずなのにぼくは無傷。

 そして自分の方が謎の被害を受けて鬼化が解除された。

あの時はわからなかったけれど。

 くー子に触れて西島に見せて驚かせる作戦のあと、気付いた。

鬼は人間に戻ったけど、くー子は霊視のできない人にも見えるようになっただけ。

 つまり、自分と同じ能力にする、みたいな力とかではない。


 もちろん幽霊を見えるようにする、なんて力でもない。

自分と『性質』を同じにする力なのだ。

 つまり、ぼくが霊視をできるから相手も自分と同じ性質にして、鬼化できる性質、ではなく霊視ができるだけのぼくと同じようになった、島谷。

 くー子はたぶんあの時空狐としての力は使えなくなっていたのではないだろうか。

 そして、ほぼ確信できたのは西島の頭を捕まえて奈落を見せたとき。

たぶんそうだろうなという仮説のもと、あんなことをしてみたが成功した。

 学校の七不思議事件でも鏡の少女、人体模型の男に同じことが起きている。


 つまりぼくの力はほぼ間違いなく、『相手を自分と同じ性質にする』と言う力なのだ。

 まぁ、それが正しいとしたら正直戦闘時なんかに一緒にいたら困ったことになるけどな。

 たとえばハナなら口寄せが使えなくなってしまうんだろうし。

アキラなら霊体感応の力がぼく並に弱くなってしまうわけか。

 完全に諸刃の剣だ。

 敵も味方も関係なく影響を及ぼす。



「なるほどな。確かにそれでほとんどのことは説明が付くわけか」

「アキラが気付いてなかったのは意外だったけどな」

「違う仮説を立てていたのでな。とりあえず理論を立てることができたら説明することにしよう」

「その意見も聞いてみたいな。正直自分の力がこれってのはちょっと残念すぎるし」

「そんなことはないだろう。それに、力がすべてではない。歩む気持ちこそが様々なものをつかみ取るための力になるのだからな」

「そっか、そうだな。サンキュ」

 ホント、アキラってずいぶん丸くなった気がするなぁ。

最初のツンツン具合とはずいぶん違う。

 ただ、言っていることはずっと変わらず、正しいことだった。


 そうなんだよな。

 いくら優れた力があろうとも、歩む気持ちと、その力を使う意志がなければ何もつかみ取れないのだ。

 ぼくは、何をつかみ取れるだろうか。

大切なものを守れるだけの力を、手に入れられるんだろうか。


 わからないけれど、諦めない心さえあれば、いつか必ず、ほんの少しでも前へ進めるから――

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