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これが君とぼくの日常  作者: 霧間ななき
第二章 『学校の七不思議事件』
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第二十四話『中央小学校』

二四.

 中央小学校は葦原学園から数キロ離れた街中にある学校だった。

全校生徒四〇〇名ほどの、規模としては普通の小学校。

正式名称は平坂市立中津小学校。

 中津町にはもうひとつ中津南部小学校があるため区別として中央小学校や中央小などと称される。

人口一万四千名ほどの比較的大きな町で、町内には中学校も二つあった。


 葦原学園は中津町の隣、奥泉町の住宅街の中にある。

私立だが部活動に力を入れている学園なので中央小卒業生も結構在籍しているのだった。

 ちなみにハルとナツが中央小出身だ。

 ぼくやアヤは電車で通っていることからわかるように、市外から通っていた。閑話休題。



「しかしまさか本当にキサマの言った通り七不思議について調べることになってしまうとはな」

「すまん、ぼく自身もまさかこんな展開があるとは思っていなくてうかつだった」

「二人とも何言ってるにー?」

 ぼくらが話している間寝こけていたお姫様がとぼけた声を出す。

たまにわざとかと思うようなときもあるが、天然なんだろうなぁ。


 日が変わって十七日土曜日。

学校は休みだった。

今回は全員で行くことになり、二台の車に分散して乗っている。

 ハナとアキラを分けた方がいいだろうなと思ってぼくとアヤでこっちに乗ったのだが。

ちなみにうたかたもこっちに乗っているので後ろに三人でちょっと狭い。

 とは言え、うたかたは結構やせているし、アキラも体格はいいが華奢な方だ。

ぼくも特に大きい方ではない、と言うか自分では認めたくないが華奢な体格だったので三人並んでも少し余裕がある。


 それでもやっぱりセダンの後ろに三人乗るのは少し手狭な感じがするのは仕方のないことだろう。

五人乗りとか謳いつつ、実際はほとんど四人乗りにオマケでもう一人乗れるといった程度の広さしかない。

 アヤは真っ先に助手席に乗ってしまったので必然的にぼく、うたかた、アキラが並んで乗ることとなったのだった。

 うたかたは間に入ってくれている。ちょっとありがたかった。


 けどなんとなくこっちに寄ってきているのは気のせいだろうか。

気のせいじゃないと思う。

だってなんか、ぼくにぴったりくっつきすぎだ。

やっぱ知らない人は怖いんだろうか。


 しかし、やっぱり体温とかも感じるし、人間との差がわからないなぁ。

肌も触れているところがやわらかくてあったかくて。

女の子独特の甘いようなやわらかい香りもしていて、なんだか変な気分になる。


「んー、そういえばなんかうたかたってさ、確か鞠つき童子全体の総称とかじゃなかったっけ?」

「そうか、これは鞠つき童子だったか」

「これとか言うなっつってんだろ」

「先ほどの返答だが」

 無視かよ。

いやまぁ、そうだろうとは思ったけどさ。

もう慣れてきたよ。


「うたかたと言うのは鞠つき童子が実体化した状態の総称だな。そもそも鞠つき童子として存在している例自体が珍しいのであまり詳しいことはわかっていないが」

「あー、そう言えばアヤも珍しいとか言ってたよな」

「アヤちんも名前だけは伝承とかで知ってたけどにー」

「この地方で生まれたうたかただとすれば恐らく九音のうたかただろうな」

「ん、確かにうたかたはそう名乗ってたな」

「うたかたが実体化したという話は聞いていないがまぁ、あの辺りには霊視できるものがいないから仕方がないか」

 またぶつぶつと自分の世界に閉じこもってしまうアキラ。

こうなったら放っておくしかないか。

突っ込んでも仕方がないし。


「うーん、なんかやっぱこの子自身の名前ほしいな」

「そだにー。うたかたちゃんって呼びにくいしに」

「君は何か希望とかある?」

『き・ぼ・う』

 きょとんとした顔で首を傾げる。

やっぱりよくわかっていないようだった。

名前に対してあまり思い入れなどはないようだな。

 まぁそりゃそうか。

水子だし名前を付けられていないケースの方が多いだろうしな。


「じゃあぼくらでつけるしかないな」

「アヤちんがつけるよりこーがつけた方が喜ぶと思うにー」

「んー?そうか?」

 彼女はこくこくとうなずく。

ぼくからもらった名前の方がいい、ってことなのかな。

だとしたらうれしいけど、たぶん違うんだろうなぁ。

 懐いてくれてるみたいだから見知ったぼくからもらえる方がうれしい、ってとこかな。


「カナタ。君は九音 彼方って名前でどうかな?」

『か・な・た』

 指で宙をするするっと撫でていくとまたその軌道が光り、文字が浮かぶ。

これ?と彼女が首を傾げ、ぼくは笑顔でうなずいた。

 ぱぁっと顔を輝かせたカナタはうれしそうにぼくに抱きつく。

なんと言うか、めちゃくちゃうれしそうだった。

 とても幸せそうに満面の笑みを浮かべて、少しだけ頬を染めてぎゅーっと抱きついてくるカナタを見て、なんだか引き剥がすのもアレだな、なんて。

 こんなぼくでも彼女をこうやって笑わせてあげられるのなら、うれしいから。


「こー、浮気ー」

「浮気ってなんだよ!?」

「まぁ、でも、許してあげるに。かなちゃんかわいいし」

「何故ぼくが家族と仲良くするのにお前の許可をもらわないといけないんだよ」

「家族、かに?こーの顔、それだけじゃなさそうだけど」

「まだ慣れてないだけだぞ」

「ふーん?別にいいけどにー」

「なーんか引っかかるな、その言い方」

 そんなことを話しているうちに中央小学校に着いていた。

校門前には三人の小学生が立っている。

 うん?生徒だけしかないのか?


「おはようございます、PDCのみなさま」

 一番小さな女の子が丁寧に挨拶をしてくれた。

礼儀正しい子だな。

背が小さくて色素の薄い茶髪をサイドテールにしているのでなんと言うか、元気っ子と言うイメージを抱くのだがこうして挨拶を聞くとイメージががらりと変わる。

 生徒の代表とかなんだろうか。


「おはようございます」

「お、おはようございますー」

 六年生であろう、身長がもうすでにアヤと変わらないくらいの大きさになっている少年と、ちょっとおどおどした感じのメガネの女の子も挨拶してくれた。

こちらも挨拶を返して案内される。


「今回はお忙しい中お越しいただいて本当にありがとうございます。私は教頭の瀬戸川です。今回お越しいただいたのは、」 

「「いや、待て」」

 またもアキラと声が合ってしまってお互い目を合わせる。

まぁ、そんな細かいことはどうでもいいんだ。

 今聞き捨てならないと言うか、不可思議な言葉が聞こえた気がするのだが?


「あの、聞き間違えたのかもしれないんですが、今、教頭っておっしゃいました?」

「キサマが教頭だと?」

 間接的に聞いた人と真正面から言った人。

どちらにしろ、その質問はマジでひどかった。


「あ、あ、あなたたちは!私が!小さくて!小さくて!かわいらしくて!幼い!小学生にしか!見えないとでも!言うのですかー!?」

 そんなにはっきり言っておりませんが概ね正解です。

だって、どう見ても瀬戸川さんは小学三年生程度にしか見えませんよ?

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