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これが君とぼくの日常  作者: 霧間ななき
第二章 『学校の七不思議事件』
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第二十三話『フラグ』

二三.

「ホントなんですってばー!」

 ハナが話してくれた七不思議を聞いてぼくは笑いが止まらなくなり、アキラは呆れたようにパソコンの方に戻ってしまっていた。


「いや、話してくれてありがとう。けど、全部心霊現象ではないって証明されてる七不思議だよ」

「え?そうなんですか?」

 あまりに典型的すぎる七不思議だったのだ。

アキラの言う通り学校の七不思議って基本そういうものが多いからなぁ。


「まぁまず、トイレの花子さん、有名すぎ。もうみんな知ってて面白がってどこにでも存在しちゃってるじゃん」

「補足すると花子さんは実在していない。トイレでも油断するなというただそれだけの話だな」

「で、でも、見たって言う人もいましたよ?」

「面白がってるだけだよ」

「少なくともこの学校にはいないな。そもそもよく語られているノックの回数や出現の条件のようなもので突然現れることなど霊には不可能だ」

「う、うぅ」

「次、音楽室の肖像画の表情が変わると言うのはあれ実は絵が立体的に作られていて、光の加減とか向きとかで表情が変わるようにできてるんだよ。まぁ、全部が全部じゃないけどな」

「えぇええ!?そうだったんですかっ!?」

「あと場所によっては目が光るやつもあるらしいけど、それはいたずらだよ」

 教師がした戒めのための仕掛けでそんなことがまことしやかに語られることもある。

夜の学校に忍び込むなんて危険なことだし、仕方がないだろう。


「じゃあじゃあ、モナリザの目は?」

「目だけ立体にできてんだよ。さっきのと同じ。ただの遊び心だな」

「なんて言うか、しょっぱいですね~」

「そんなもんだよ」

「それじゃ家庭科室の包丁は?」

「危ないだろ、そんなもん」

「そりゃ危ないですよ!だから解決しないと!」

「だから、危ないんだよ。放課後とか暗いときにそんなところを歩いてて転んだりして棚にぶつかったりしたら危険だから、そんな怪談ができたんだ」

「な、なんてやさしい理由!」

「先生たちが考えたんだろうからな」

「えっと、えっと、赤い紙、青い紙は?」

「問題に答えられないことへの恐れから生まれた幻想、って聞いたけどな。それはどうなんだ?」

「オレに聞いているのか。まぁ、お前の説明で正しいだろう。答えることへの恐れ、間違うことへの恐れから来た怪異だな。とは言えただの都市伝説であり、実在はしない」

「やっぱお前は博識だな」

「この程度ならな。専門外はめっきりだが」

 おや、珍しいな。

自分にもわからないことがあると認めたぞ。

 つってもこんだけ知ってれば十分だと思うけどな。

まぁ、あとは態度次第ってところか。

それが一番問題だけどなー。


「それと夜中校庭に墓地が出現する、というのは元々墓地だった土地が地方の発展などに伴い埋め立てて安く売られ、その上に学校が建ったことが多かったためそうやってうわさされるようになったものだな。基本的にすでに死んだ肉体に魂など宿ることはない。よって、そこから罰など当たるわけもないし、呪われることもない。つまり墓地など出現しない」

「へぇ~、本当にいろいろと知ってますねぇ」

「むしろキサマのようにこちら側の世界にずっといながら知らないほうがオレからしたらあり得んな。不勉強すぎるだろう」

「うぐ」

「ハナをいじめるなよ」

「本当のことを言ったまでだ」

「言い方ってものがあるだろう。それに誰でも全部知ってるわけじゃねぇし」

「甘やかしてもそいつのためになどならん」

 なんだかなぁ。ホントこいつ惜しいヤツだ。

もっと性格が良ければ間違いなくモテただろうに。

 顔もかなりかっこいい方だし博識、つまり頭がいいわけだ。

あの戦闘能力から言って運動神経も抜群。

 もう、完璧すぎるスペック。

いやはや、神様は一人に対して与えすぎですよ。


 とは言え、一番重要かもしれない対人スキルがないのは正直どうしようもないレベルだしな。

 人は誰しも欠点がある、ということか。

マジで残念すぎる欠点を持っているってことだな。


「んじゃまぁ、他のも解説していくと、階段にまつわる怪談二種。四階建て校舎のはずなのに五階に通じる階段が存在していて、そこに昇ると帰って来れなくなる。はてさて、それではそれを誰が見つけたんだい?」

「え?あ、あぁー!」

「そ。行ってしまったら戻って来れなくなるならその事実もなくなって行方不明者が出るだけ。誰かがこんな話あったら面白いなって感じだろうよ」

「複数で行っていたらどうなる。残っていたものが待っていても戻ってこなかったからそんな話が出たのかもしれないぞ?」

「お前、どっちの味方だよ?」

 まぁ、実際見つけて戻って来れなくなった人がいるのだとしたらもっと大事になってるはずだ。

人が目の前でいなくなった、なんて現代では信じられないしな。

 捜索されるに決まってる。

そこまでの話ならもっと有名になっているだろう。


「まぁ次の一三階段だけどさ。それも結構有名な話だよな。屋上に通じる階段だけ一二段あって、夕方とか夜に数えると一三段になることがある。そうなると冥界に連れて行かれてしまうとか、首吊り自殺してしまうとか。アレは勘違いで起きることなんだよ」

 どこを一と置くのか、で変わってくるだけの話だったのだ。

一三になる場合は上から下に数えたときだったのだろう。

 そして、一回そうなるとわけがわからなくなってそうだと思い込んでしまう。

そうなったときに一三段と言ったら絞首刑の階段が一三段なことを連想してそういった怪談が出来上がった、と言うわけである。


「てか、ひとつ気になってたんだけどさ。七不思議なのに大体どこでも七じゃないんだよな」

「え?七じゃなかったですか?花子さん、音楽室の肖像、モナリザ、包丁、赤青紙、深夜の墓地、異界に通じる階段、一三階段、って、あれ?ホントだ!?八個あります!」

「うわさだからな。七にしようといろいろな人間が怪談を流布するのだが流しすぎてしまうのだろう。淘汰されていくと七になったりもするがあまり七つで終わるところはないのではないか?」

「まぁ、そんなもんか」

 結局のところ七不思議とか言う、面白そうな話のネタっていうだけで話されるものだ。

基本的に本当に七つの不思議な怪奇現象が起きている、だなんてところはほとんどないだろう。

 今の話でもわかる通り、実際どこにでもある似たような噂話、なのである。

戒めとか注意を促したり、ただ面白がって出た話。

それが学校の七不思議と言うやつなのだ。

 実につまらない、人間の性ってヤツの集大成みたいな問題だったなぁ。



 しかし、なんと言うか何気ない会話が伏線になっちゃう、なんてことが現実にもあったわけで。

「え?」

「なん、だと」

「えぇえええ!?」

「聞こえなかったのかい?君たちに次の依頼だよ。中津中央小学校の七不思議について調べてきてほしいんだ」

 そんな展開、アリなのかよ。

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