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これが君とぼくの日常  作者: 霧間ななき
第二章 『学校の七不思議事件』
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第二十二話『再スタート』

二二.

 放課後になって研究棟の特別教室に向かう。

とりあえずPDCは部活と言うことになるらしく、ぼくは何故か文芸部からそっちへ完全に移籍すると言う形になってしまったようだった。

 両立は無理ってことなんだろうか。

せっかく憧れの文芸部だったのに、ひどくないか?


 ちなみにアヤは授業が終わったらいなくなっていた。

薄情なやつめ。

 その辺をふらふら見ていたうたかたを捕まえて研究棟の方へ向っていた。

 正直普段何をやるのかも想像できない。

やることなんてあるのか?


 そう言えば結局PDCのメンバーを見つけることはできなかった。

同じ学年じゃないのかもしれない。

 まぁ、聞いて回ったわけじゃなく昼休みに見て回っただけなのでわからないが。

少なくともあの三人は見当たらなかった。

 同じクラスにいないのは間違いないが他のクラスはどこかに出かけてたら見つからないし、彼らがどこのクラスなのかは本人に聞いたほうが良さそうだった。

教えてくれるかわからないが。



「ちっ」

「オイ!?入った途端に舌打ちとかどんだけ失礼なんだよテメェ!?」

「そう言えばキサマもPDCに入ってしまったのだったな。本当に憂鬱な話だ」

 凄まじいご挨拶だった。さすがにひどすぎじゃね?


「こっちのほうが憂鬱になるわ!」

「それよりそいつらはなんだ」

「あぁ?うちの家族だけど、なんだよ、文句でもあんのか?」

「キサマの家族はいったいどうなっているんだ。まともな人間は一人もいないのか」

「人間かどうかなんて別にどうでもいいだろ。家族は家族だ」

「何故連れてきた」

「悪いかよ」

「悪いな」

「うちの事情に口出すんじゃねぇよ」

「家の事情を学校に持ち込むな」

 ぐ、もっともだから言い返せない。

うたかたが申し訳なさそうに眉をハの字にしてしまう。


「あ、えっと、こ、コーヒーをお入れしましょうか!」

「ブラック」

「私もほしい」

「あ、ぼく手伝うよ」

「アヤちんはみるく八〇%にー」

「それはもはやコーヒーじゃねぇ」

 この教室の後ろには給湯設備が整っている。

おかげでお茶なども入れることができるのだった。


「手伝ってもらってしまってすみません」

「いや、ハナが一人でやらなきゃいけない理由なんてないだろ」

「ボクには、これくらいしかできませんから」

「はぁ」

 なんか、そこまで卑下されるとちょっとイラッと来ますよ。


「あのな、ハナ。昨日お前がハルを送ってくれなかったら、ぼくは何一つ出来なかったし、ハルも成仏できなかったかもしれない。ぼくはお前に感謝してるんだよ。だから、そんな風に言うな」

 こんな風にいろいろ気遣いできるだけで十分お前はすごいやつだよ。

だからそんな顔すんなよ。


「せっかくそんなにかわいく生まれたんだから、楽しそうに笑ってろよ。そのほうがずっといい」

「っ、あ、ありがとう、ございます」

 顔を真っ赤にしてハナは顔を伏せてしまう。

あまり人に褒められたことがないのかもしれないな。

褒められたとしても自分自身というよりは家柄とか、そういった力とかだったんだろう。

 それがきっと彼女にとってはコンプレックスだった。

認めてほしいんだろうなぁ。

 その気持ちはよくわかる気がした。

やっぱりハナとは一番気が合うと思う。


「ほい、アキラ」

「なんだ、キサマが入れたのか」

「悪いかよ。ハナに入れてもらいたかったのか?」

「アレの腕は確かだからな」

 なんだよ、褒めれるんじゃん。

本人に聞こえるように言ってやればいいのに。


「はーたんありがとにー」

「ありがとう」

「どういたしまして。まだ熱いので気を付けてくださいね」

 全員に配ってハナ自身も席に着いた。


 さて、何をしたものかと見回してみると正直まとまりがなさすぎて何をしていいのかまったくわからなかった。

決まりはないのかもしれない。

 アキラは一人一台ずつ用意されたパソコンで何か調べ物をしているようだったし、キリは本を机に広げて、ノートのようなものに何かを書き込んでいる。

 ハナはファッション雑誌のようなものを読んでいた。

 アヤにいたっては寝ている始末。

自由すぎるだろ。

いいのかこれで?


「ここは普段何をする部活なんだ?」

「心霊現象に対する対策と研究、考察などをしていくのが主な仕事」

「事件がなければすることもなさそうなんだが」

「私やアキは基本的に学者なので部活中も研究などをしている」

「あぁ、そっか」

 この二人は元々そういう人たちなんだっけ。


「あ、えっと、コウヤさん、ボクやアヤメさんのように能力を期待されているメンバーは普段することがないので雑談していたりこうやって自由時間を過ごしていたりします、よ」

「丁寧な説明をありがとう。マジでどうしたらいいのかわからなかったから助かったよ」

「よ、よろしければ、お話でも、します?」

「雑談するんだろ?そんなに身構えなくてもいいんじゃないか?」

「あ、はい、そうですね、えへへ」

 カリカリと頭をかいて苦笑いするハナはしぐさを含めて、本当に癒される。

本当に普通の子なんだろうなぁ。

 たまたま旧家に生まれてしまって変な力を持ってしまっただけで。


「な、何をお話しましょう?」

「だから別に身構えんなって。気楽に話せばいいだろ」

「あ、うん、ありがとう」

「あぁ、そうだ、ひとつ聞きたかったんだが」

「なんですか?PDCのことでもわかる範囲でお答えしますよっ」

「あー、うん、それなんだが。このメンバーってここにいるとき以外では会えないのか?学年とかクラスも知らないんだが」

「それでしたら別にそんな決まりとかもありませんので問題ないですよ。ボクは二年C組でキリちゃんと同じクラスです」

 同じ学年か。

てかキリちゃん、ってその呼び方なんかめちゃくちゃ違和感あるんだが。


「んー、ハナとキリは幼なじみとか?」

 それくらいしかちゃん付けで呼ぶ理由とか思い浮かばない。

「よくわかりましたね、ちなみにキリちゃんとは幼稚園の頃から一緒なんですよー」

「ほー、幼稚園からって結構長いな。アキラは同じ学年か?」

「二年A組だ。キサマのことはアヤと一緒にいるところを何度か見かけたが」

「ぼくはみんな見たことなかったな。やっぱ意識して見ないとわからないものか」

「アヤちんはB組にー」

「同じクラスだから知ってるっつの。しかし、集まってるのにみんなで話すわけでもないんだな」

「オレとキリは無駄なことをするために来ているわけではないからな」

「無駄とは限らないだろ」

「キサマと話してもただの時間の無駄だ」

 ホント苛立つなぁコイツ!

まともに会話が成り立ちやしない。


「どんな話してると思ってたんですか?」

「いや、わかんねぇけど、アレだ、七不思議調査とかやってるのかなーとか思ってた」

「七不思議ですかー、よくありますよねー」

「くだらん」

「お前は否定しないと話すこともできねぇのかよ!?」

「七不思議など結局のところ本物がほとんどない。どこの学校でも似たような内容であることからわかることだが、基本的に教師たちが作り出した戒めのためのうわさ話だ」

「あー、まぁ確かにそういう意味合い強いわな」

「夜の学校に来ないように、いたずらしないように、そういった理由で心霊現象を持ち出すのだ。不透明で存在が確認できないが子供はそういったものを信じやすいからな」

「だな」

「あ、でも知ってますか?この学校にも七不思議ってあるんですよー」

 ハナのそんな言葉に


「「いや、ないな」」


 アキラと声をそろえて否定してしまうほどにはもう、子供の頃のように純粋ではないのだろう。

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