死の間際による目覚め 「第69話」
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「はぁ…はぁ…」
「……」
詩織の息が荒くなり、傷付けられた所からは地面に向けて血が市垂れ落ちる。
もう詩織自身が限界に近い状態の中、青白い気を纏い槍を持って身構えるマリスには若干ながら余裕が見える。
「随分と息が荒くなっているようだな?」
「走ればこんなもんさ…」
「強がりがいつまで続くか…試してやる!」
マリスの目つきは獲物を狙う鷹のように鋭く、問いかけに対して苦笑いを浮かべる詩織の表情をしっかり捉えている。
強がりにしか見えないその言動にマリスは腹を立てると、地面を蹴り出して詩織に槍を突き立てながら向かって行く。
「っ!?」
先程は走る速度は見切れていたのだが、青白い気を纏い始めてから一変。
ほんの一瞬。 詩織が目を瞑った瞬間にマリスが目の前に迫り、槍を詩織の脇腹に突き刺した。
「がああああ!」
「これで終わりと思うなよ…」
槍を突き刺され、脇腹から溢れんばかりの血が流れ大きく悲鳴を上げる詩織。
マリスは一瞬ニヤリと笑うと、詩織の目の前にて衝撃波を放ち壁へと吹き飛ばした。
衝撃波による風圧により当然槍は体から抜かれる。 詩織は壁に叩きつけられた痛みより、槍を強引に抜かれた火傷のような激しい痛みに、耐えきれず苦痛の表情を浮かべた。
「があ…ああ…!」
「どうした…? もう終わりか?」
「まだ…まだ…!」
当然痛みはある。 油断すれば泣き出しそうなくらいだ。 ——だが詩織は歯を食いしばる事で気を引き締め悠然と構えるマリスを見やり立ち上がり壁を蹴って向かって行く。
「だあああ!」
「………」
雄叫びの割には弱々すぎるパンチ。 スピードは落ちてはいないものの、マリスにあっさりと拳を受け止められ、投げ返されると詩織は腹部にパンチを喰らいその場に膝をついてうずくまった。
「があ…ごふ…っ!」
「……」
言葉にならない声を発しつつ、息を整え必死に立ち上がろうとする詩織をマリスは頭を踏んづけ立ち上がれないようにする。 詩織の顔が地面に叩きつけられる中、マリスは容赦なく踏む力を強くし…
「いい気分だなジェノサイド。 当時は兄も苦戦して、さらには私も苦戦していた。 …お前をずっとこうしたかった!」
マリスはいい気分だと言う言葉を発したがその表情は憎しみから来る怒りそのもの。 詩織の頭から足を退けたと思えば踏みつけるの繰り返しで詩織が立ち上がれないようにしている。
「が…ああ…!」
「喋れないだろうな。 だが私もお前のような苦しみを味わっていた!」
兄を殺された鬱憤を晴らすかのように、何度も何度も詩織の頭を踏みつけるマリス。 言葉にならない声を発する詩織は今ある力の全てで、拳を握ると踏みつけている足を思い切り殴りつけた。
「っ! 貴様っ!」
「…!」
足を殴られたマリスは怯み下がると赤くなった太ももを見て、マリスの怒りがさらに込み上げ倒れている詩織に向かって走って行く。 だが詩織は今ある力を使い果たす形で、体全体から衝撃波を発してマリスを自らの前から吹き飛ばす。
「へ…ざまあ…みやが…れ」
「最後の抵抗という奴か…あまりに弱々しい」
マリスが吹き飛んだのを見た詩織はニヤリと笑い掠れた声で言い放つが、全く持ってマリスには届いておらず壁前からゆっくりと倒れている詩織の前に歩を進める。
「だが…」
マリスは閉まっていた槍を取り出すと、詩織を突き刺さんとばかりに矛先を地面に倒れている詩織の頭へと向ける。 全力で振り落とせば間違いなくあの世行きだろう。
深呼吸をし詩織の方を睨みつけるマリス。 そして目つきを鋭くすると…
「さよなら…だっ!」
思い切り叫び槍を詩織に向けて振り下ろした瞬間だった。 槍は確かに刺さったがそれは地面で、先程まで倒れていた詩織の姿が全くそこにはなく…
「何!? 一体どこに行った…!」
驚いた表情を浮かべたマリスは辺りを急いで見渡すと、自らの背後の方向にこちらを睨みつけて見つめていた詩織の姿があった。
「貴様…どうやってそこまで…!」
「良かったよ。 本当に」
「…なんだと?」
驚くマリスに対して詩織は静かに目を瞑り微笑むと密かに呟き、マリスに疑問を抱かせるとニヤリとした笑みで詩織はマリスを見つめ直す。
「お前なら…抑えなくていいんだからよ」
「…今度は私に向けられるという事か」
赤い目に狂気に満ちた笑み。 マリスの記憶にはしっかり刻まれており、平然と詩織を睨みつける裏で相当な寒気はしていた。
「どうしたよ…こねぇのか? だったらこちらから行かせて貰おうかっ!」
平然とした表情の裏で震える体、簡単に動けるはずもあるまい。 警戒するマリスをニヤリと狂気に満ちた笑みで笑った詩織は、体を倒しマリスに走り迫って行く。
「っ!?」
「鈍い鈍い!」
先程までだったら動きが直線的だった為に見抜くことは容易だった。 だが今度は速い上に残像が見える厄介な感じで、マリスは目の前に来るまで詩織の姿を追う事が全く出来なかった。
——その為詩織に体を引っ掻かれさらに、目にも止まらぬ速さで詩織はパンチを放ちマリスは壁へと叩きつけられる。
「が…(パワーもスピードも上がってる…!)」
「どうした? 加減してやるから…かかって来いよ?」
暴走しているような感じはない。 だが詩織から明らかに感じる恐怖は立ち上がり身構えたマリスを確かに包んでいた…
とにかく終わらせようと。 今はその信念の元この作品を書き進めております。




