ばあちゃん…。
雪のような白髪、年の割には少ない目元のしわ、そして暖かな笑顔。
いかつい鈍色の首輪をしている点を除けば、目の前にいるのは大好きな美雪に違いなかった。
「ばあちゃん…?」
嘘だ、ばあちゃんは死んだはずなのに。
俺がこの目で見届けたのに。
どうして、どうして?
守はがんと殴られたような衝撃を受けた。
頭が真っ白になる。
ふと、目の前の婦人が口を開いた。
「初めまして、道永玲子と申します。お世話になります。」
疲れを顔に滲ませながらも笑顔を絶やさない。
「れいこ、さん?」
「はい、そうです。」
俺は呆然と立ち尽くすしかなかった。
そこからどうやって出たのかは、覚えていない。
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少しかびくさい布団にくるまる。
ここは社員寮のようだ。
個室なので音さえ気をつけてもらえればあとは自由にどうぞ、とケントがいっていた気がする。
自室とあまり変わらない間取りに、守は少しほっとした。
小さな虫が一匹張っている天井を見上げる。
玲子の顔、美雪の顔が交互に浮かんでは消える。
玲子は美雪にそっくりだったが、声は違っていた。
そうでなければ守は彼女を美雪だと信じて疑うことはなかっただろう。
では、姉か妹?
(いや、ばあちゃんの兄弟は男だけだったはずだ。)
守が生まれたときには他界していたので顔を見ることはなかったが、姉妹がいるという話は聞いたことがない。
(ということは…他人の空似?)
そう思うほかない。
守は大きく寝返りをうつ。
(忘れよう。思い込みかもしれない。明日から仕事だから頑張らないと。)
布団を大きくかぶる。
疲れていたのか、守の意識はすぐに闇に溶けていった。




