ばあちゃん!?
中に入るにはかなり面倒臭い手続きが必要だった。
まさか中に入るのに指紋の登録が必要だとは思わなかった。
逃げ出したり侵入したりできないようになってるんですよ、とケントはぎこちない笑みを浮かべたが、なぜそこまで厳重なのかがよくわからなかった。
もしかして、自分はなにかやばいことに足を突っ込んでしまったのではないか?
そんな考えが頭をよぎったが、必死でふりはらった。
ケントに連れられて一通り施設の中を見て回ったあとに、ある部屋の前に連れてこられた。
「この部屋の中に担当してもらう『世捨て人』がいます。」
「『世捨て人』?」
初めて聞く言葉だった。
「ああ、まだ説明していませんでしたね。『世捨て人』というのは入居者の総称です。ここにいる人たちはは皆、誰かに捨てられてここにきたのです。産んだはいいけど育てられないとか、介護がめんどくさいとか。そういう勝手な理由でここにはした金とともに捨てられるんです。」
「えっ…それって。」
犯罪ではないのか?
むくむくと疑問が膨らんでいく。
だがそれを聞く勇気は守になかった。
「明日から毎日三食この人のところに食事を運んでください。今の所仕事はそれだけです。」
「う、うっす…。」
「部屋に入ってください。私はここにいますので。」
「うぃっす…。」
ガチャ。
おそるおそるドアノブを開ける。
テーブルとベッドしかない部屋が顔を覗かせた。
守の目の前に座っていたのは、
「…っ、」
「ば、ばあちゃん?」
まぎれもない美雪そのものだった。




