守、動き出す。
いつの間にか目から涙がこぼれ落ちていた。
それを見て、にじんだ人物が俺を部屋まで引きずった。
部屋に放り投げられて、たった一言。
「もしあの人を助けるような真似をしたら、その時点であなたも晴れて『世捨て人』です。」
そういって帰っていった。
おかしいと思っていたんだ。
施設はやけに広いのにほかの『世捨て人』とほとんど出会わなかったり。
おばあちゃんの顔色が悪くなっていったり。
でも気づかないふりをしていたんだ。
俺は働いているんだという誇りをもちたかったから。
でも、こんなの違うよな、ばあちゃん。
どこで間違ったんだ?
普通に就職しようと思っただけなのに。
ばあちゃんの、ために。
それはちがうよ、守。
ばあちゃん?
真っ白な世界で、守と美雪だけがそこにいた。
不思議と怖くはなかった。
わたしのためじゃない。守自身が変わろうとしたことだろう?
でもばあちゃん…。
あんたは優しい子だ、自分がすべきことぐらいわかるはずだ。
…うん。
わたしはいつでも守を見守っているよ。さあ、おばあちゃんを助けておあげ。
ばあちゃんは俺の頬を両手でそっと包んだ。
その手は暖かかった。
わかったよ、ばあちゃん。ありがとう。
俺がそういうと、ばあちゃんは優しい光になって消えた。
目が覚めると、いつもの無機質な壁が俺を出迎えた。
ばあちゃんと会えたのは夢だったらしい。
じぶんの頬を触ってみる。
そこにはまだばあちゃんのぬくもりが残っているような気がした。
俺はぼろぼろ泣いた。年甲斐もなく、みっともなく。
「ばあちゃん、俺やるよ。」
俺がおばあちゃんを助けるんだ。
ばあちゃんを俺の手で救うことはできなかったけれど、おばあちゃんはまだ生きている。
おばあちゃんを助けることが、俺にできるばあちゃん孝行だ。
見守っていてくれよ、ばあちゃん。




