Cフロア。
おばあちゃんの部屋を出て、俺は走った。
どこへだって?そんなこと決まってるじゃないか。
邪魔するなら砕け散れという勢いで扉を開ける。
そこには一人の男が座っていた。
「どういうことだ、ケント!」
そいつはわけがわからない、という顔をこちらに向ける。
「はて?何がでしょう?」
「おばあちゃんの食事に何を入れた!?」
こいつしかいない。
おばあちゃんを苦しめられるやつは!
そいつはおどけた様子で尋ね返してきた。
「どうして、私が何かを入れたと決めつけるのです?」
「食事の前後にいつもお前と会っていたからだよ!」
「…やれやれ、どうやら説明しないといけないようですね。」
面倒くさい、そういって立ち上がり、俺についてくるように促した。
「どこに、行こうってんだよ。」
「ついてくればわかります。」
俺に拒否するという選択肢はなかった。
ーーーーーーー
一言で言えば、地獄だった。
大量のベッドの上にはりつけられた人々。
そいつらを取り囲むように、白衣を着た連中は立っていた。
部屋中には無数の呻き声が響いている。
それもそのはず、見るも無残な姿になっている。生きているのが不思議なぐらいに。
「んだよ、これ………。」
「何って、人体実験ですよ。」
当然だ、と言うようにそいつはつぶやいた。
「なんで、こんなことするんだよ!」
「施設運営のためです。けっこう儲かるんですよ。入居金だけでやっていけるわけないでしょう?」
だからって、こんなことしていいのか?
金のためなら何してもいいのか?
「あいつらも、お前と同じ人間なんだぞ!?」
俺は思わず叫んだ。
こいつは、おかしい。
「さっきから口の聞き方がなってませんね。それに、ここにきた時点で人権など『世捨て人』にはあってないようなものです。」
俺たちは、凄惨な状況を一目で見られる監視室にいた。
ここは、Cフロア。
この施設でずっと謎だったところだ。
なぜこのフロアの説明がなかったか、合点はいった、が。
「ここと、おばあちゃんに何の関係があるんだよ…。」
「あの人には、劇薬実験をしています。」
「…は?」
「人体実験しようにも歳ですからね、うまくいかないと思ったんです。だから、投薬の限界を図る実験をしようと思いついた。いやあ、我ながらいい発想力ですね。」
にこにこといつも通りの笑みを浮かべるそいつとは対照的に、俺の顔は固まった。
「…うそだろ?」
うそだうそだうそだ。
「うそなわけないでしょう?あなたの持っていく食事にすべて混ぜていたんですよ。二週間ぐらいで致死量と仮定した量を超えるように。」
「俺があれを食べてぶっ倒れたのは…。」
「おや、食べてしまったのですか。毎日少しずつ量を増やしているので、急に食べたら危ないですよ?」
うそだ、そんな。
俺はおばあちゃんをずっと苦しめていたのか?
俺の、せいで?
ばあちゃんを失って、今度はおばあちゃんまで失うのか?
いやだ、ばあちゃん、助けて…。
俺はどうしていつもこうなんだ…?




