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ばあちゃんの死。



気が狂いそうなほど白で覆われた病室に、守は立っていた。


壁が白い。天井も白い。花瓶も白いし、ささっている花も真っ白だ。


そしてーー大好きな祖母・美雪の顔も白かった。


まるで本当に雪になったかのように。


美雪は、部屋に置かれた唯一のベッドに横になっていた。


あたりには、引きちぎられた医療器具が散乱している。


彼女は、笑っていた。


そして、ゆっくりと守の頬に手を伸ばしーーー






ーーーーーーー






「うわあああああああああ!」


守は飛び上がった。心臓が騒いでいる。


肩で息をしながら、周りを見渡した。


古ぼけた小さなテーブル。見慣れた壁のシミ。灰色のデスクトップ。


間違いなくここは、自分の部屋だ。


大きく息を吐き出す。どうやらここは病院ではないらしい。


状況を確認したことで、ほんの少し冷静さを取り戻すことができた。


「…んだ、夢かよ。」


頭をぼりぼりとかく。現実を意識した途端に、悲しみと苛立ちが心の中を占領した。



俺のばあちゃんは…一週間前に死んだ。






ーーーーーーー






共働きで家にいなかった両親のかわりに守の世話をしてくれたのは美雪だった。


守はいつでも美雪と一緒に行動していた。


絵本を読んだり、料理の支度を手伝ってみたり。


守は美雪が大好きだった。


中学校に上がってからは友達への面子もあって昔ほどは一緒にいなかったが、それでもよく夜遅くまでくだらないことで話し込んだものだ。


何気ない毎日が、守の宝物だった。





美雪は声を荒げることは滅多にしない、優しい人だ。


守のことを溺愛しており、


「まもと一緒にいられればそれだけでいい。」


が口癖だった。


二人の間を引き裂くものなど何もないと、守は信じていた。



まさか、ありきたりの「がん」の二文字に最愛の祖母を奪われるなんて、誰が予想できたであろうか。






ーーーーーーー






守は大きく伸びをして、美雪のいないこれからのことを考えた。


そこそこのレベルの大学は出たものの、就職はせずバイトで食いつないでいた守を心配していた美雪の顔。


それが頭から離れない。




「就職したら、ばあちゃん喜んでくれっかな…。」




面接で面白いほど落ちまくった俺。


新卒であのありさまだったのに今更どこに雇ってもらえるんだ?



「でも、そんなこと言っててもしゃーねーよな。」



もう遅いかもしれねーけど、ばあちゃん孝行がしたい。


あの世で笑っててもらえるように。


俺の心配をもうしなくてもすむように。




正直まだ悲しい。気を抜いたら涙が出そうなぐらい。


でも、後ろばっか向いててもばあちゃんはきっと喜ばないから。


俺にできることをするしかない。



そこまで考えたところで、急激な眠気が襲ってきた。携帯をみるともう日付が変わる頃だった。


ふわあ、と大きなあくびが出る。


「とりあえずもっかいねよ…。」


守はもう一度布団に潜り込んだ。



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