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食魔法使いの死霊術師  作者: 噛み付き熊さん
9/9

白い死神 3

ちょっと暴力的な表現? があります。



 餅達と格闘(おはなし)すること数分、ティーナはようやく彼らを制圧し(手懐け)たようだ、出したのは俺だからもちろん普通は俺の言うことしか聞かないが、真心込めて接すれば同じマナイーターにならば従順することもあるようだな。


「それで彼らをどうするか決めたのですか?」


 手についた粉を叩き落としながらティーナが尋ねてくる、それを今まさに悩んでいる最中だというのに……ん? 粉か、よし決めた。


「ああ、たった今決まったよ。まずは粉をまぶす」

「また粉ですか?」

「そうだ、砂糖も入るから甘くて美味しいぞ?」


 人間を食わせたアレを思うとついつい涎が垂れてしまう。


「そんなにですか……それではそれに合うお茶を用意しないといけませんね」

「緑茶でいいぞ、基本的に餅に合わせるなら出処の同じお茶がいい」

「おや、緑茶とお餅は同じ国のものだったのですか?」


 師匠からの教えてもらったから俺も行ったことはない国だが簡単に説明してやるか。


「ああ、ニッポンとかいうところらしい、なんでも食の戦闘民族だとかで食べるためならどんな苦労も厭わないらしくてな、通常の料理ですらこの餅ってのはのどに詰まって窒息死する可能性があるらしいんだが、それと何年も戦いながら食らってきた猛者……らしい、全部師匠から聞いた話だから本当かどうか分からないがな」


 ともかくその国はこの辺の国にはない独自の食文化があるらしい、俺も一度行ってみたいと師匠にせがんだ事があったが、なんでもすごく遠いところにあるから無理だと断られた。


「そうなのですね、いつか一緒に行ってみたいですね」

「そうだな……」


 いつになることやら、ともかく今は人間(ゴミ)掃除してマナイーターにとって安息の地を作り上げなければそんな旅とかいう余裕ぶったこと考えていられない。


「とりあえず調理を開始する――――まずは手懐けた餅を三つのグループに分けろ」

「三つですか?」

「ああ、三種類の料理にするこれだけの数だ、この街の人間を全て一掃するのは容易い」


 マナイーターにとって敵は貴族だけではない、民衆もその貴族達の思想に染まりマナイーターを人と思わず家畜のように扱っているところもある……この街のようにな。


「本当にやるんですか? 私は、その……反対です、何の罪もない人達まで殺すのは……」

「お前は本当に甘いな、ミルクティー、角砂糖十個か……」


 自分で言ったがよく意味がわからない、そもそも食魔法で出したミルクティーは程よい甘さになるので砂糖を後から加える必要がない。


「そんなに甘いですかね? 子供とかなら親がそういう扱いしているからとかで家畜のように扱っているかもしれませんがきちんと言い聞かせれば……」

「それが甘いって言うんだ、いいか? 俺達はどのみちその子供の親を殺さなきゃならない、そしたらその子供は孤児になるだろう? そうなればどのみち大人のいなくなったこの街で生きていけなくなるんだ、ここで殺したって構わしないんだよ。それに食死霊(ネクロフード)は無差別に人間のみを襲うからどうやっても皆殺しにしかならない」


 身も蓋もない話だが、理由はそれだけだ。人を襲わせる際にはどう命令したって無差別に捕食する、人間側が逃げ切らない限り襲われないなんてことはまずありえない。


「ですが……」

「わかったよ、それじゃあ実際に同胞たちがどういう風に扱われているか見に行くぞ」

「はい!」


 俺は餅達に後に続けと伝えてから、ティーナの手を引き貴族の屋敷を出た。

 屋敷を出ると、そこには白い餅が居た……恐らく門番とかを捕食したんだろうけど、ティーナのやつ何匹か取り逃がしてたな。

 この分だと既に街は襲われている可能性もあるが、この際問題はない遅かれ早かれ、街のやつらはひとり残らず食われるんだ。


 街にはまだ人が居た、どうやら餅はまだ現れていないようだ。

 人通りの少ない裏路地を進んでいくと丁度路地に面した窓のある建物があったのでこっそりと中の様子を覗いてみると――――当たりだった、マナイーターの部屋だ……しかも丁度食事の時間だったらしい。

 母親と思われる女性とその子供であろう五歳児ぐらいの男の子、それから鎖に繋がれ、真っ裸の女のマナイーターが居た。


「あんな状態だが、これでもまで反対か?」


 ティーナは繋がれている女を見て顔を赤くしたり青くしたりしている、同じ女だからかやはり自分がもし……なんて考えているのかね。けどアレはもうマナイーターとは言えないな、ただの家畜(死体)だ。


「見てみろ」


 顔を背けたティーナの頭を無理やり掴んで顔を向けさせる、丁度母親がマナイーターにムチを打つところだった。


『ほらっ、さっさと三人分のパンをお出し!』


 ムチと言ってもひも状の物ではなく馬になる時に使うようなやつだ、それでマナイーターの尻や顔などを思いっきり叩く。

 その横で息子の方も無邪気に……あくまで無邪気に、マナイーターに殴る蹴るの暴行を加える。


「これでも子供は悪くないというのか?」

「……いいえ、私が間違っていました」


 たった一例に過ぎないが他もこんなもんだろう、これ以上調べても無駄だ。


「では調理に取り掛かる、とりあえずこの家の連中を襲うか、ティーナはグループ外の餅が調理魔法陣に入らないように押さえとけ」


 魔法陣と言っても俺の調理可能範囲を可視化しただけで別に何か特別なことがあるわけではない、がそこへ一グループの餅を招き入れ呪文を唱える。



「大地の肉たる豆よ、その身を粉にし甘美なる砂と合わさりてひとつまみの塩を以て、白き死神よ、纏え『黄衣の死神(きなこもち)』」


 ――――餅はきな粉に包まれた。

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