白い死神 2
貴族達を餅に変えた俺はジョッキに注がれていた緑茶をグビグビと飲み干すと再びティーナに差し出しおかわりを要求した。
「演出ということで目を瞑っていましたがもう終わったのですからちゃんとカップか『湯呑』でしたか? アレで飲んでください」
流石宮廷に仕える方の言い分は違うな、しかし質はさる事ながら量を摂取したいんだがな、俺達マナイーターにとって食魔法とは大事な栄養補給だ、俺だってこの屋敷に潜入する間色々と作ってティーナに施してやったのだから見返りとしてこのぐらいガバガバと飲ませて欲しいものだ……正直彼女の魔力の味は俺好みで甘美だった。それだけはあのお貴族様に感謝しなきゃならないが……この口うるささだけは頂けないな。
「分かった分かった、とりあえず茶は後でもいいや、こいつらを仕込むとしよう」
「仕込みですか? でもこれってもう完成なんですよね?」
「ある意味ではな、けどこのままじゃ少し味気ないから更に調理しようと思ってな、こいつらは更に化けるからな?」
白いだけで終わらない、粉をまぶしたり、汁につけたり、タレを塗ったりいくらでもやりようがあるのだ。
「それで仕込みですか……どうすればいいんでしょう?」
「手作業でもいいが食死霊なんだから調理呪文でも行けるぞ……『その白き身を千切り丸まり並べ』だ」
手本として魔力を込めず呪文だけ読み上げる、別に俺が一人でやってもいいがせっかくだからティーナにやらせることにした、これも修行。俺と一緒に組むのならばこのぐらいしてもらわなきゃな。
「分かりました、では……その白き身を千切れ丸まって整列せよ!」
呪文は個人差というか少しそいつの特徴が出るから俺が唱えたまんまにはならないが、千切れは俺より乱暴な感じがするのに丸まってでは少し微笑ましい感じで最後の整列せよだけビシっと決めるとか。
どうなるかといえばブチブチブチと乱雑に餅達が千切れたかと思えば、緩慢な動作で丸くなり、なんだかやる気無さそうに一列に並んだ……いやなんかもうちょい並び方があっただろうそこも創意工夫せねばならないな。
けど恐らく並ばせるのは俺も同じ結果になったであろうからそこまで強くは言わない。
「呪文の言葉はもう少し選べ、もしくは言い方で違いを出せ」
「は、はい! ……その白き身を一口大に切り分けられ丸め込まれて積み重なれ!」
ほう、今度は考えたな、ご丁寧に切り分けて……丸め込むってなんか違うと思うけど、ちゃんと丸くなってるしいいや。それに列ではダメだと思って段として重ねたか、綺麗にピラミッド状に積み重ねられている。
「重ねるのはいいが、そのままでは再びくっついてしまうのでは?」
「あっ……どうしたらいいんですか?」
「片栗粉って分かるか? アレをまぶしておくんだ、そうするとくっつくなくなる」
「となると呪文は『白き化粧を』とかでしょうか?」
化粧か、そういうとこは女性らしいというべきか、俺としては纏いてとか降りかけとかがいいんだが、そこで自由にさせていいだろう。
「好きにするといい」
「分かりました。……白きその身を一口大に切り分け丸めし者、白き化粧を施し山のごとく積み重なれ!」
今度はうまくいったな、けど食死霊だから重ねたりする意味はあまりないんだよな、しばらくすると勝手に動き出すし。
――――と行っているそばからお餅達は動き出し、それをなんとか止めようとあたふたしだすティーナを楽しみながらこいつらをどう料理するか考えることにした。