表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人形の夏祭り~目無し様~

作者: 幽魔ましろ

2015ホラー提出に1分遅れて間に合いませんでしたので普通の短編小説としてあげます。

よんでいただければ幸いです。


「うぅ、まっくらだよぅ……」


突然ですが、夜の小学校の暗い廊下からこんにti……あ、こんばんは!僕は(たき) 優真(ゆうま)です。

なぜ僕が夜の小学校にいるかというと、話は昨日のお昼休みにさかのぼります。


あ、お昼休みの話の前に僕らの小学校をご紹介しますね!

僕の通う小学校は昔から続いてきた歴史ある学校です。

……って先生が言ってました!


僕の小学校には、他の小学校にはない『かんしょう室』っていう教室があります。

僕らは『人形部屋(にんぎょうべや)』って呼んでるんだけど、人形部屋には立派な日本人形が沢山飾られてるんです!

この町は日本人形作りが盛んなことで有名で、一家に一体は日本人形があるくらいなんです!


勿論僕の家にもあります。

黒い花の柄が入った着物の日本人形。

僕のお部屋にいるんです。

ご飯のときも寝るときも一緒なんです!

日本人形は怖いって言う人がいるらしいけど何が怖いんだろう?

僕はお人形全然怖くないですよ、綺麗だもん!

だからね、ちゃんと名前もあるんです!

僕がつけたの!

黒華(くろか)』ていうの!

漢字がカッコイイでしょ!


あっと、話がそれましたごめんなさいっ!

それでですね、僕らの小学校では夏休みに入る少し前に夏祭りがあるんです。

お婆ちゃんが生まれるよりずっと前からあるお祭りで、僕らの小学校で続いてきた伝統的な町のお祭りなんだそうです。

このお祭りについて昨日のお昼休み話しをしていたんです。


「知ってる?」


「なぁに?」


給食の後片付けをしている時に未来(みく)ちゃんが話しかけてきました。

未来(みく)ちゃんは幼稚園の時から一緒にいる幼なじみです。


「うちの小学校で夏祭りがあるでしょ?」


「うん」


次に言った未来(みく)ちゃんの言葉は、人形好きの僕の心を掴みました。


「夏祭りをやっている間、人形部屋の人形達も夏祭りをやっているんだって!」


「ええぇっ!!」


もっていた食器入れを落としそうになってしまいました。

お人形がお祭りをやるって!?


「夏祭り中は人形部屋に入っちゃいけないって、先生達が言うのはそういうことなんだってさ。」


「どうして入っちゃいけないの?お人形さんと一緒にお祭りしたほうが楽しくない?」


僕が給食室に食器入れを戻しながらそういうと、廊下で待ってる未来(みく)ちゃんは嫌そうな顔をして言いました。


「人形とお祭り?やだよ、気持ち悪い。」


そうだった。

未来(みく)ちゃんは日本人形が嫌いなんです。


「とにかく、人形部屋に入っちゃだめなの。

噂だとね、もし人形のお祭りを見ちゃったら……。」


言葉を切ると、こいこいと未来(みく)ちゃんが手招きする。

僕が廊下にでて未来ちゃんに近寄ると、未来(みく)ちゃんがひそひそ話の時みたいに、僕の耳元に手を当てて囁いた。


「【目無し様】に連れてかれちゃうんだって……。」


【目無し様】という言葉に僕はドキッとして、ゾクッと鳥肌が立った。


「【目無し様】って、あの【目無し様】?」


「そうだよ。おじいちゃん、おばあちゃん達がよく言ってるあの【目無し様】」


それじゃ、見ちゃいけないわけです。


あ、【目無し様】を知らないですか?

【目無し様】はこの町で昔から言い伝えられている神様です。


昔々のお話です。

【目無し様】というのは元々有名な人形職人さんが作った美しい日本人形で、益々の人形作りの発展を願い、神社に奉納したものだったそうです。

奉納されて何十年かが経ったある日、子供が神社の境内に忍び込み、人形をバラバラに壊してしまいました。

その子は日本人形が嫌いで、たまたま境内で見つけた人形を壊したらしいのです。

大人の人達はバラバラになった日本人形の体を集めて、職人さんになおしてもらいました。


ですが、神社に返ってきた日本人形はなぜか目の所が真っ黒でした。


職人さんが言うには何度綺麗にしても目だけが黒くなるのだといいます。

神主さんは言いました。


『人形に宿った神がお怒りになったんだ』


そして人形が神社に返ってきたその日。

人形を壊した子供が行方不明になりました。

探せど探せど見つかりません。

人々は囁きました。


『連れていかれたんだ……。』


人々は人形の怒りを鎮めるため人形は『人形社(にんぎょうやしろ)』と名付けられた社に人形を祀りました。

祀られた人形は、目が黒くて目がないように見えるからか、いつしか【目無し様】と呼ばれるようになりました。


これが【目無し様】の言い伝えです。

もう社は取り壊されてしまったんですが。

実はその社があった場所は……


「そんでさ、【目無し様】がいたっていう社あるじゃない?

それって今『人形部屋』のあるところらしいじゃん?

だから余計に中を見ちゃだめなんだよ。」


そう、人形社があった場所は今は僕らの小学校の『かんしょう室』になっているんです。


それは僕も知ってましたがまさか、そこで人形の夏祭りが行われてるなんて!

そして夏祭りをみたら【目無し様】が現れるなんて!

感激です!!

人形の夏祭りに参加したい!!

【目無し様】に会ってみたい!!

会って家に無事帰れるなら会ってみたい!!


その時の僕の心の中は絶賛人形お祭りフィーバーでした。


……だから次に未来(みく)ちゃんの言い出した事は、その時の僕には受け入れがたかったんです。


「まぁ、私は信じないけど!」


「どうして?」


笑って信じないと言う。

人形が夏祭りをする。

そんな素敵なことを無いなんて言わないで欲しくて…。


「だぁれも見た人いないもん」


「誰も見てないんだから本当の事は分からないんでしょ?動くかもしれないよ?」


その時の僕は少しムキになっていて……。


「迷信だってば」


「違うよぅ…」


いつもみたいに折れれば良かったのに。


「……」


そうすれば未来ちゃんが


「じゃぁさ……」


あんなこと言い出すことも無かったのに。


「確かめてあげるよ。今日の夏祭り。」




「て、言うことになっちゃったんだぁ。」


家に帰った僕はそうそうに宿題を終わらせて、黒華に今日あったことを、未来(みく)ちゃんとのことを話した。


未来(みく)ちゃんがね、お祭り中でもトイレの貸し出しで、学校の入り口は開いてるから。

簡単に中に入れるって言うの。

見てきて迷信だって証明するんだって。」


黒華は黙って聞いてくれる。

整った日本人形のきれいな顔。


「……人形達がこっそり夏祭りをやりたいなら、そっとしておいた方がいいと思うけどなぁ……。

見たくないの?って言われたら、そりゃ見たいけど……。」


こんな綺麗な日本人形達が夏祭りをしていたらきっと楽しい。


「黒華も夏祭りしたい?」


もう少し早めに人形の夏祭りのこと知っていたら、黒華を人形部屋においてきたのに。

そしたら黒華も夏祭り出来たのになぁ……。


その時、ドーン!と花火が鳴りました。

ハッと時計をみると時間は6時。


夏祭りの始まりでした。





「うぅ、まっくらだよぅ……。」


そして今に至ります。


真っ暗な学校の廊下をペンライトで照らしながら進んでいます。

お母さんが帰り道が危ないからと持たせてくれたものです。

今時間は8時です。


どうして小学校の中に入ってるかというと……


優真(ゆうま)君、未来(みく)がどこに行ったか知らないかい?」


そうお祭りの会長さんに聞かれたんです。

あ、会長さんは未来(みく)ちゃんのお父さんなんです。


6時過ぎにお祭り会場の校庭について、未来(みく)ちゃんとしばらくお祭りを楽しんだんですが。

7時頃に未来(みく)ちゃんは確かめてくるわ!と小学校に入っていって僕と別れたんです。

僕はやめときなよって止めたんですけど……。

確かめるとはもちろん人形部屋のことです。


その後は(けん)君とか(ひろ)君とか男友達とお祭りを満喫していたんですが……。

その最中に会長さんから声がかけられたんです。

その時初めて気づきました。




一時間を過ぎても、未来(みく)ちゃんが帰ってきていないことに。



なんだか胸騒ぎがして、心配になって小学校にはいったんです。


トイレ貸し出し用に開いているドアから入っていって、しばらく廊下を歩くと突き当たりに人形部屋があります。

未来(みく)ちゃんが居るとしたら人形部屋です。

外のお祭りの音楽と人の話し声が遠くなっていくのを聞きながら、中を歩きます。

夜の学校は昼間とは違い不気味な雰囲気を醸し出しています。

早く未来(みく)ちゃんを見つけて出よう。


急ぎ足で向かいます。

突き当たりに近くなってきて人形部屋の入り口が見えました。

ペンライトの光を向けると、戸は閉まっているようです。

そして入り口に上履きが揃えて脱いであるのも見えました。

入り口まで向かい上履きを照らすとかかとの所に、未来(みく)とマーカーで描かれていました。

未来(みく)ちゃんの上履きです。


「…未来(みく)ちゃん?」


人形部屋にそう聞いてみました。

けれど返事はありません。


「居ないの?未来(みく)ちゃん?」


静まり返った校舎に僕の声だけが響きます。

未来(みく)ちゃんの声は全く聞こえません。


未来(みく)ちゃん!」


少し大きな声で呼びました。

また沈黙。


「……あけて」


すると小さな声が中から聞こえました。

未来(みく)ちゃん?


未来(みく)ちゃんなの?」


「……あけて、戸がキツくてあかないの。」


なんだか未来(みく)ちゃんの声とは違う気がするけれど。

戸越しだからかもしれない。

でも……


「人形部屋は開けちゃいけないって……」


【目無し様】に連れて行かれるって……


「…あけてお願い。このままじゃ出られない……。」


【目無し様】に連れついかれるのは嫌だけど……。

明日まで人形部屋に未来(みく)ちゃんを居させるわけにはいかない。


意を決して戸に手をかける。


「早く、早く。」


急かしてくる未来(みく)ちゃん。

僕は勢いよく戸を開けた

ペンライトの光を向けてガラッと戸を開けると、中はいつも通り。

ではありませんでした。。


日本人形が飾ってあるガラスケースは空っぽで、どこにも未来(みく)ちゃんは居ません。

人形がない?

それに未来(みく)ちゃんは?


その時後ろでカタンと物音がしました。


未来(みく)ちゃん?」


振り返りましたが誰も居ません。

と、ペンライトが照らす床に何かが見え床に視線を落としました。


「人形…?」


そこには一体の日本人形がありました。

どうして廊下に……

しゃがんで日本人形をよくみてみました。

ですが、その日本人形の顔を見て僕は鳥肌が立ち、すぐに立ち上がってさがりました。




その日本人形は目の所が黒かったのです。




「【目無し様】!」




【目無し様】だ!

そう分かった瞬間僕は走り出しました。


【目無し様】につれていかれる!

言いようのない恐怖が体中をおそい僕は逃げました。

それはもう必死にそして僕は必死のあまり……


「あっ!」


気づいた時にはもう遅く、目の前には大きな扉。

そう昇降口に逃げてしまったんです。

昇降口が開いているはずもありません。


引き返そうと後ろを向いた時、そこには【目無し様】と沢山の日本人形達が居ました。

左右には下駄箱、もう逃げ道はありません。

人形達が僕にジリジリと迫ってきます。


「もうだめっ」


小さく、悲鳴のようにそうこぼし、涙目をギュッと瞑りました。

と、その時。


「目無し様、目無し様、御目をお閉じ下さい。」


透き通ったそんなこえが響きました。

誰だろう……。


「目無し様、目無し様、御目をお閉じ下さい。」


それは知っているようで知らない声。

その言葉が響き終わった後、人形達はピタリと止まり、霧のように溶けていなくなってしまいました。

あとには誰もいない廊下があるのみで、僕はしばらく放心していましたが祭り会場に戻り、今起きたことを話しました。


そのあと、未来(みく)ちゃんの捜索が行われましたが上履き以外は見つからず、行方不明のままです。

未来(みく)ちゃんはどこにいってしまったのか。

あの時の声は誰だったのでしょうか。


でも、あの時の声、僕しってるんです。

聞いたことはないけれど、笑わないでくださいね?

何だか黒華の声だったような気がするんです。

秘密ですけどね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ