#12 布由希
情報員が崩れ落ちる。身体においても精神においても隙だらけの少女には、たかが一本の懐中電灯の光による不快眩耀だけでも、理性の許容を超えた情報の奔流だったのだろう。
主観の押し付け――まるで神話の盗賊の寝台だ。ちょっと意味は違うけれど、無理に押し付けて相手に苦痛を与えるという点では相違無い。
「――」
瞬きをする。瞼の裏で、強烈な白の円が映る。円の縁を緑色が描く。しだいに白は水色になり、やがて輪郭は緑や黄色、赤色を重ね合わせ、ブロッケン現象のような鮮やかな色彩に変化する。
そういえば、こんな色合いの熱水泉がアメリカにあったな――なんてことを思い出す。さすがは世界最古の国立公園といったところか。
裁定委員会の情報員から視線を外し、一人の少女へ移す。彼女は怯えるわけでもなければ、怒っているわけでもなく、真っ直ぐに布由希を見つめていた。
「――なにを、したんですか?」
まぁ、傍目から見ていたら、何が起こったかは分からないだろう。だが彼女に説明する義理も無いので、無視してこちらの都合を押し通す。
「蓮灘薫と連絡は取れる? 取れないなら仕方ないのだけれど」
少女は首を横に振る……どうやら、それほど仲が良いわけでも無いらしい。
ならば角川祐輔に連絡を入れ、蓮灘薫と渡りを付けてもらうしかない。しかしアテが外れてしまった。仲が良いなら別として、この程度の関係しか無い人間を人質にとったところで、どの程度効果があるのだろうか……?
とりあえずは、連絡を取らないことには始まらない。布由希は携帯電話をポケットから取り出した。




