#13 朱莉
#13 朱莉
午後の授業もホームルームも終わった教室で、朱莉は一人、自分の席でまどろんでいた。
部活にはは行ってないから、こうしていること自体は問題ではない。強いて問題があるとすれば、それは彼女の精神状態だ。
午後の授業も、掃除の時間も、呆然と過ごしていて記憶が曖昧だ。なにもかもが、あの御札が流行り始めた時期から変わりすぎている。
けれどこれが元通りになるとは考えにくい。なぜなら原因が原因だからだ。御札が流行り始めた、で大人が相手にするとは思えない。
もし相手にしたとして――どう対応するというのか。
「……はぁ」
ここにいたってなんにもならない、疲れてるな……軽い頭痛に呻きながら席を立つ。
教室から出て、廊下を進んで生徒用の昇降口へ。下駄箱から靴を取り出そうと手を伸ばして――ふと気付く。野崎洋子、彼女のローファーが、まだそのままなのだ。
一時間目の前に、彼女は保健室に行った筈だ。なのに靴だけ残っているなんておかしい。靴を忘れて帰るなんてありえないし、他の靴を履いている可能性も考えたが、同じく体育の授業で使うグラウンドシューズも入っているので、それもない。
「……洋子?」
まさかまだ保健室に? 笑えない冗談だ。だが保健室や職員室に行けば、何か分るかもしれない。
――まさか洋子の体調不良も、あの御札のせいじゃ……。
胸騒ぎがした。朱莉は上靴を履きもせず、ローファーを片手に校舎へと戻る。