96 大豆と米があれば
ま、間に合った(汗
バリっゴリゴリ ゴックン
「そうか、白猫くん改めアルビオンかのぉ~、猫にしては立派な名がついたかの……」
俺は尻尾を振りながら縁側から見える滝を見て長老と世間話をしていた。
現在はお昼を過ぎた頃で、長老は俺と一緒にに縁側に座りながら煎餅を食べている。まあ、お米があるんだから煎餅があっても不思議では無いな。
「まともな名前の案が無かったからな。自分で考えるしか無かったからな。自分の名前を自分で決めると言うのはなかなか贅沢だと思うんだがどうかな?長老。」
「そうだの、確かに名前とは付けて貰う物だからの。付ける方も大変だが付けられる方も変な名前を付けられたら、たまったもんじゃなかろう。そこを考えると自分で自分の名前を決めると言うのは中々贅沢じゃの」
長老はそう言うとボリッと煎餅を一口食べる。
「まあ、名前なんて記号だ。その物体を分かりやすく伝えるための人が発明した道具だ。それが物の本質を表すだけじゃない」
「ここだと人間だけで無く、言葉を喋れる種族全体じゃろうな」
そう言って木で作られた容器から何らかの液体を口に含む。正体は分からないが緑色で緑茶みたいだった。そう言えば何だろう、緑茶かと思ってたんだけど、お茶の葉が栽培されている所を見たことが無いな。
「そう言えば長老、あんたが口に含んでいる物って一体なんだ?」
「これか?これはのアサビ茶と言うものだ。名前の通りアサビをお茶にしたものじゃ」
あの辛い悪魔をお茶にだと?!とてもじゃ無いが飲んだとたん昇天してもおかしくない飲み物だな。毒物と言っても過言では無いな。
長老はコップを掲げてとんでもない事を言ってくる。
「飲んでみるか?」
「やめろ!!俺を殺す気か?!」
「何じゃアサビの正体を知っておったのか、つまらん」
長老は残念そうにそう言うと掲げたアサビ茶を自分の口に持って行く。
「おい、もし俺がそれを知らなくて飲むと言ったら飲ませたのか?!」
「当たり前じゃ、正体を知らないで飲んだ後のリアクションが楽しいからの。カッカッカッカッカッ」
この糞爺は良い性格してるぜ、全く。リリアナたちはエルフの味覚が変な事には気づいていなかったが、この爺さんは気づいていながら、こんなふざけたことをやろうとするなんて。
俺の尻尾が振るのが止まる。
「おい、爺」
「い、いきなり呼び方が乱暴になったの」
「次こんなふざけた事をやろうとしたら、この家を吹き飛ばすからな」
「アハハハ、冗談じゃろ、なあ冗談じゃろ。クハハハハ、面白い冗談じゃな」
自分に言い聞かせるように冗談と何度も繰り返す爺を俺は殺気を籠めた目で見つける。
「…………」
俺が無言で爺を見つめていると、爺は額から汗の玉がタラリと一滴垂れる。
「いや、わしはちょっとしたお茶目な悪戯を」
「そうかなら俺は、次の朝目が覚めたら寝室以外の部屋無くなっていると言うお茶目な悪戯をしよう」
俺の言葉に口の端をヒクヒクと動かして、無理に笑おうとする爺。
「いや、悪かったの。そう怒らないでくれ」
「爺、越えてはならない一線ってのがあるんだ。それを考えて行動してくれ、じゃないと……」
「ど、どうなのじゃ?」
「気づいたら爺の家は寝室だけの素敵な家になる」
「分かったのじゃ、次から気を付けるのじゃ」
「ああ、そういてくれ」
俺がそれと同時に睨むのをやめて、尻尾を振るのも再開した。
「全く、カッカしおって」
「あんな思いは二度としたくないからな」
俺はそう言うとその場から立ち上がった。
「何じゃもう帰るのか?」
「まあな、餅を作ってくれると言っているのでな、それを食べに行く」
「そうか、今日は乾かしてあったサリを回収する日であったな。わしの所にもいくらか届けると言っていたな」
「じゃあな」
俺は縁側から跳び立った。文字通りジャンプでその場から消えた。
「やっぱり、餅は醤油だな」
俺は人になって、出来立ての餅を家の食卓で貪っていた。
「あたしはきな粉よ」
「私も醤油かな」
「私と仕事に行っているカシム君の分も残しておくのですよ~」
日本と違い収穫してお米になるとご飯の前に餅を作って食べるのだ。だから十月後半ぐらいには餅を食べることが出来るのだ。
それともう一つ分かったことがある。きな粉の存在だ。味噌があって、醤油があるのだ。味噌、醤油があると言う事は大豆があるのだきな粉があってもおかしくない。俺はきな粉の存在を忘れていたけど。久しぶりの懐かしい故郷の味だ、思う存分堪能しよう。
そうだな、大豆があるんだ豆腐なんか作って味噌汁でも食べてみてみるかな。と言うか大豆があると分かってるんだ、色々な食べ物作れるんじゃないかな?枝豆だろ、もやし、納豆、油揚げ……。
待てよ、寿司は作れなくてもお稲荷さんなら作れるんじゃないか?油揚げとお米があるんだ!!作れないことも無いな。大豆があるだけで色々な物が作れるな。さすが外国人に『日本人は大豆だけ食べて生きている』と言わしめただけはあるな。
俺は期待で胸を膨らませながら餅で腹を一杯に膨らませた。
これが今年最後の更新です。
来年もよろしくお願いしますね




