90 ビイル・グレモリー 2
私は今お城から少し遠く離れた魔物のいる森に連れてこられた。なんでこんなところに居るかと言うと
「ほら、あなたも倒しなさいよ。ここら辺の魔物なんてレベル50くらいよ」
ドレス型の黒い戦闘服に身を包み込んだ女の子がそう言って、さっき戦っていて魔物の屍から剣を抜く。剣はドレスと同じように刀身が真っ黒で女の子と同じくらいの剣だ。私は半ばこの女の子に攫われるようにしてこの森に連れてこられた。
回想
お父様が帰ってくるのを廊下で待っていると、向こうから何かがすごい速さで走ってくるのが分かる。廊下の向こうから走ってくるのは、私と同じくらいの女の子だった、剣を片手に持ってこっちに走ってきた。
女の子は私を見ると足を止めた。
「あら?珍しいわね、こんな所に私以外の女の子がいるなんて」
そう言って女の子は私の顔をまじまじと見つめてくる。
「な、何ですか?」
私は戸惑って一歩後ろに下がって質問をした。
「あなた暇そうね、命令よ。あたしに付き合いなさい」
「へ?」
私はいつの間にその女の子に担がれて、窓から外に連れ出した。
「ちょっとまってください!!お父様を待たー」
「あたしは魔王の娘よ。その命令なんだから聞きなさい」
「そんな事言っても!!」
そんな事を言っている間にどんどんお城から遠ざかっていく。ああ、どうしよ。
そして今に至ります。女の子は私を連れて森に中に入ると、周りにいる魔物を片っ端から狩っていきます。剣を振り、魔法を放ち、私の短い青色の髪とは真逆な腰まである赤い髪を振りまき、魔物の死体の山を築き上げていきます。
すごい!!もしかしたらお父様ぐらい強い?
「ほら、あなたも倒しなさいよ。ここら辺の魔物なんてレベル50くらいよ」
レ、レベル50って……私じゃとてもじゃないけど、ここの魔物を倒せないです。
「無理です無理!!私のレベルはまだレベル10を超えた程度ですよ」
私は岩陰に隠れながらそう叫んだ。こんな所の魔物に目を付けられたら、私なんて瞬殺です瞬殺。
「レベル10?!」
彼女は手を止めて私の方に詰め寄って来ます。
「まさか、そんなにレベル低いの?」
「は、はい」
「そんなレベルでこんな所にいたら危ないわ、急いで帰るわよ」
「あなたが連れてきたのに今更そんなこと言うんですか!!」
私は頭に来て思いっきり怒鳴ってしまう。
仕方ないじゃ無いですか……。いきなり自分で連れてきてレベルが低いから危ないから、お城に帰りましょうって、この森に居続けるよりはマシですけどそれでも少しは謝ってほしいです。
「そんな怒鳴らなくても……お城に居るからレベルが高いのかと思ったのよ」
彼女はそう言ってそっぽを向く。
「なんでそんな結論に至ったんですか?私まだ十歳ですよ!!」
「あたしは十歳でレベル70代よ!!」
そう言って彼女は胸を張って威張る。そんな彼女にカチンと頭に来る。
これが他人を危険に晒している人の態度ですか!!
「その年でそのレベル人の方が希です!!もうちょっと頭を使って考えてください」
「何よ何も考えていないみたいに言って!!」
「何も考えてないからこんな状態に陥ってるんです!!」
「う、うるさいわよ!!そんなことより早くお城に帰るわよ。魔物の様子も変だし」
誤魔化された感がありましたけど私は、彼女の言う通り早くお城に帰りたかったのでここで言い合いをやめました。それより気になったことは……
「魔物の様子が変ってどういう事ですか?」
「何でか魔物の数が多いのよ。普段はもう少し少ないわ」
「そ、そうなんですか?」
私は嫌な予感がして仕方なくなりました。
「早く帰りましょ、嫌な予感がします!」
ドドドドドドドドドド!!
私の予感に肯定するかのように、背後からものすごい数の足音が迫ってくる。
「飛ぶよ」
「えっ?!」
いつの間に彼女は私の腰を持って木の上に飛び移る。
「ここでやり過ごすわ」
「は、はい」
私たちが登っている木の下では沢山の魔物が走っていく。どの魔物も私たちに気づいていないのか、私たちに目も呉れず走っている。私たちは魔物が行先を見つめていた。
「一体何だったのよあれは?」
「さあ?」
一通り魔物が走りあったと思った途端、さっきとは違い単独の足音が物凄い速さで近づいてくる。私達二人は動近づいてくる足音の正体が見えるまで動かなかった。
「何あれ……」
「知らないわ、あたしも」
近づいてきたのは私たちが乗っている木の半分ほどの大きさの毛玉みたいな魔物だった。よく見ると毛玉から二本の牙が生えていて、木をなぎ倒しながらこちらに迫ってくる。
「こんな所でボーッとしている場合じゃ無い、逃げるわよ!!」
「え?」
「このままじゃ私たちも潰されるわ!!」
そう叫んだ時に既にその魔物は目の前に迫ってきていた。彼女は私の腰を掴んで物凄い勢いで上空に跳ぶが、少し間に合わず跳んだ時に体勢を崩してしまう。
ドスン!!
私たちは魔物が過ぎ去った後に尻餅を付いて落ちる。
「イタタタ」
「お尻ぶつけたー」
彼女はお尻を撫でながら立ち上がってあの魔物が歩いて行った場所を見つめた。魔物が過ぎ去った後は木が倒れていて、馬車などでは通れない状態になっていた。
「魔物があんなに慌てていた理由が分かったね。あたし達に気付かなかったのは、あれから逃げていたのね」
私は彼女とは違う方向を見て首を横に振って、震えながら言葉を口にした。
「に、逃げなきゃ。ここから急いで。逃げなきゃ」
「何でよ、もうあいつは行ったでしょ。なんで逃げる必要があるのよ?」
私は上空を指差した。
「違う、あの魔物たちはあれから逃げてたんだよ!!」
「え?」
彼女はやっとこちら側を向いて私が指さした方向を目を向ける。
そこには手と翼が二の腕と腕の間に翼が付いているムササビのようなドラゴンだった。
ドスン!!
私たちの目の前にドラゴンが舞い降りた。
「間に合わなかった……」
「何を慌ててるの?あの程度魔物あたしが倒してあげるわよ」
「え?」
そう言って彼女は剣を構えて魔物と向かいあった。
「なんたって私はレベル70代よ、ここら辺にいる魔物はレベル50。それにね」
魔物に向かって物凄いスピードで突っ込んでいく。
「魔王の娘なのよ。こんな魔物に負けるわけ無いじゃ無い!!」
次回戦闘シーンです!!
猫「おい、俺の出番は?」
作「ごめん、もう少し待って」
猫「もう少しって、どれくらいだ?」
作「い、一万文字くらい?」
そっと遠ざかる作者
「一万文字……一話大体二千字と計算すると……」
作者の全力疾走
「俺の出番まであと五話もあるのか!!さっさと書き終えて俺を出せーーー!!ニャーオ!(猫の咆哮)」
50mを一瞬で飛ぶ猫の咆哮。そしてそれに当たり空を飛ぶ作者。
「ごめんんさい~!!」
皆さん猫が出るまで辛抱強く待っていてください




